船橋、西船橋にある動物病院です   診療内容 犬、猫、フェレット、ウサギ、ハムスター。その他の動物についてはご相談ください

あいむ動物病院 西橋 あいむ動物病院 西橋 あいむ動物病院 西橋

Medical treatment Column診療Column

耳の痛い話 ~ 犬の耳血腫

今回のコラムの話題は、「とても痛い耳血腫」のお話しです。

耳血腫は動物病院では比較的ありふれた、おもに犬の病気ですが、猫でもわずかにみられます。犬ではビーグルや、ゴールデンレトリーバーなどの比較的大きな垂れ耳を持ち、よく外耳炎に悩まされるような犬に生じやすい傾向があります。
この耳血腫、日常生活では人で同様な異常が起こることはあまりないため、特にひどい急性の耳血腫が起きた場合、飼い主さんはいったい何が起きているのか想像できず、その様子にびっくりして来院されることが多いものです。

余談ですが、耳血腫(耳介血腫)は人では柔道などの格闘技や、ラグビーなどの頭部に激しい刺激を繰り返し起こすスポーツによって生じる「スポーツ外傷」としてよく知られていますので、こういったスポーツをされる方にとっては身近なものかもしれません。

----------------------------------------------

犬の耳介は「自由に動かせる集音装置」であり「コミュニケーションの道具」、「車のラジエーターのような放熱作用」や「耳道鼓膜を保護する働き」など、人よりも多彩 な機能を持っていて、その機能を担うためか、耳介軟骨の周囲はたくさんの管が存在します。

この豊富な血管がなんらかの外部の刺激により破たんして、耳介軟骨皮膚の隙間をじわじわと押し広げながら溜まった血液耳血腫の正体なのです
ご参考までに、下記に耳血腫の仕組み下図に示します。

s0011_01[1].jpg

【耳血腫の模式図】(アニコム損害保険、どうぶつ親子手帳、「耳血腫」から引用)
ー> ワンちゃんの病気、耳血腫
 

耳血腫の原因は耳介への反復する激しい刺激なのですが、ワンちゃんの場合はもちろんスポーツなどではなく、その原因は後ろ足によって激しく掻く、もしくは頭部を激しく擦りつけたり、振ってバタバタさせることによる耳介への打撃によって生じます。

急性耳血腫の中身は出血したばかりの血液血餅です。血腫が小さければ自然に吸収することもありますが、ワンちゃんは我慢できず自ら悪化させてしまうため、いったん耳血腫を生じるとそのままでは元通りになるような自然治癒はほぼ見込めません。

耳介に反復する激しい刺激が起こる原因としては外耳炎、中耳炎などの耳の病気や耳介やそれに近い部位の皮膚病外傷腫瘤外部寄生虫など多岐にわたりますが、よく見られるのは強い痒みの刺激を伴う外耳炎を原因とする耳血腫です。

以下、耳血腫のワンちゃんを3例、ご紹介したいと思います。いずれも耳介の先端から根元まで至る大きな耳血腫を生じています。
写真で耳介がぶ厚く膨らんで、パンパンに腫れているのをご覧になれるかと思いますが、こういった状態になると、痛みが強くなり、不快度がとても高くなります。さらに、耳血腫によって重たくなった耳介は頭部や周辺に鞭のように勢いを増して打ちつけられるようになり、痛みや損傷などがさらにひどくなります。

下の写真は外耳炎での来院が数回ある程度の老齢のパグです。耳を掻き始めてから数日でこのようになってしまいました。耳垢には大量のマラセチアがみられました。

DSC_4593.JPG DSC_4590.JPG

----------------------------------------------

次の写真は慢性外耳炎、中耳炎をもつ、中年齢の雑種犬です。アトピーに関連すると思われる長期の外耳炎(中耳炎)耳介その他の部位にも脂漏症による皮膚炎を日常的に起こしています。耳垢には大量のマラセチアブドウ球菌が見られました。

DSC_1989.JPG DSC_1990.jpg

----------------------------------------------

次の写真は高齢のフラットコーテッドレトリーバーです。過去にも耳血腫を繰り返し起こしています。耳の汚れが常にみられるために外耳炎を発症し易く、耳垢からは常に大量のマラセチアが検出されています。

DSC_5871.JPG DSC_5868.JPG

----------------------------------------------

ところで、上記の耳血腫はいずれもマラセチアが関与する外耳炎に続発したものでした。マラセチア感染はワンちゃんの耳に強い痒みを引き起こす外耳炎の原因として最も頻度が高いもので、耳血腫の発生にも大きな影響を与えます。

原因となっているこのマラセチア(Malassezia pachydermatis酵母様真菌というカビの一種です。同じカビではありますが、人で強い痒みを起こす水虫のカビ(糸状菌)とは違うグループに属します。下の顕微鏡写真で「紫色のピーナッツ」のように見えるのがマラセチア酵母です。

IMG_1760.JPG

マラセチアは実は健康な外耳道皮膚には常在菌として少数存在して、通常は問題を引き起こすことはありません。ところが、マラセチアが好む湿度温度、栄養とする脂分が多い環境では異常に増殖して、正常な皮膚の環境を壊してしまうのです。
この条件がそろいやすいのが耳道、耳介皮膚であり、さらにアトピーであったり脂漏症などの皮膚バリア機能が低下した条件ではより拍車がかかります。

マラセチアが引き起こす痒みが強いのはなぜでしょうか。これには2つの理由があります。
まず、マラセチアは酵母の一種ですから、皮脂発酵させていろんな代謝産物(ゴミ)を排泄します。これが皮膚に対して強い刺激となること、またマラセチアの菌体そのものが強いアレルギーを引き起こすために、そこに生じる皮膚炎もまた強い痒みの原因となります。

耳血腫の治療はどうする? ----------------------------------------------

さて、貯まってしまった血腫はどうしたらよいでしょう?
耳血腫の大きさにもよりますが、まず行われるのが、血腫に針を刺して注射器で抜くことでしょうか。この方法はワンちゃんが協力的であれば容易ですので、最初に行われることが多いと思います。ちょっと太い針を刺しますので我慢は必要ですが、パンパンに張った血腫を抜くだけでワンちゃんはかなり楽になります。

が、しかし、その効果も数日で元通り、耳を”ぶんぶん”振って再来院ということが多いものです。このため、血腫を抜いた後に耳介周囲に圧迫包帯を巻いたりするのですが、血腫体液の出る圧力というのはとても強いもので、生半可な圧迫耳介軟骨皮膚がくっつこうとする働きを上回ることが多く、しばしば再発します。。。その場合は。

下の写真は鎮静処置を行った後に血腫に沿って縦に切開を加え、血腫内容を除去したものです。広い切開によって血腫内容が常に排泄され、耳血腫内の圧力を減らし続けることができますので包帯を週に数回交換しながら、耳介軟骨皮下組織の接着を待つことができます。

DSC_5874.JPG

上記の処置でもなお、出血体液をコントロールできずに再発を繰り返す場合があります。その場合には全身麻酔下での手術となります。手術によって、血腫内容のさらなる排出と血腫内のデブリードマンdebridement: 治癒を邪魔している不要な壊死繊維化した組織などを除去して、患部を清浄化すること、ドイツ語に由来)耳介軟骨皮下組織皮膚のより強い接着を目的に縫合を行います。。

外耳炎などによる耳の痒みは動物医療において、どんなワンちゃんにも起こりうるごくありふれた病気です。しかしながら、それが時に耳血腫の引き金となって、場合によっては外科手術を要するような予想外の一大事を引き起こす可能性があるのです。

ワンちゃんがしきりに耳を掻いているのを見つけたら、もしかしたら耳血腫の前触れかも?と、耳の中をちょっと観察してあげてください。。。耳が汚れている場合にはさらに次の段階へ悪化する前に、お近くの動物病院へぜひ相談してください。

----------------------------------------------

文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍

歯の伸び過ぎご注意~ハムスター編

「顔から何か棒みたいなものが出ているんですけど。。。」

という訴えで、若いハムスターさんが来院いたしました。

診察室内では、随分痩せて脱水しているように見えたハムスターさんでしたが、元気に動き回っています。確かに、飼い主さんがおっしゃるように一見すると棒のようなものが鼻の左側(オレンジ矢印)から出ています。しかし、動きが激しくてよく見えません。

なんですかね。これは。。。?

そこで、しっかりと押さえて診てみると。。。どうも門歯のようですが。

DSC_5771.JPG

さて口を開けて中を見てみると。。。えっ!?

DSC_5775.JPG

どうやら、上あごの門歯が伸びすぎて口の中で一周して、そのまま口の粘膜と皮膚を貫通して先端が鼻の左から飛び出しているようです。。。

DSC_5779.JPG

上の拡大写真のように、ハムスターの門歯は真っ直ぐに伸びていくのではなく、コイルのようにグルグル回りながら伸びてしまうのがお分かりになるかと思います。

このため、このケースでは外からは口はしっかり閉じられており、一見して歯が異常に伸びているようには見えませんでした。飼い主さんの観察では、なんとなく噛みにくく、食欲がないくらいの印象だったようです。

ハムスターさんはこうなると食事をうまく食べられないばかりか、さらには必要な水分さえ採れなくなってしまい、衰弱していきます。こういった原因での食欲低下は意外に多いのですが、外から見て門歯の伸び過ぎが分からないことが多く、病院に来て初めて指摘されるケースが多く見受けられます。

当日は歯をカットして、抗生物質の投与と点滴を行い、お帰り頂きましたが、その後数日で元気、食欲ともに元通りになったそうです。今回は門歯が皮膚から飛び出なければさらに発見は遅れたと思われますが、とりあえず一件落着です。

DSC_5781.JPG

上記の例はやや極端なものでしたので、下の写真に通常みられる過長歯の写真をご覧になっていただければ身近な問題としてご覧いただけるのではないかと思います。

DSC_7826.JPG

ご自宅のハムスターが食欲を失ったら、まず口を開けて歯のチェックをしてみてください。もしかしたらご自宅でも異常が見つかるかもしれません。。。

---------------------------------------------

文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍

爪下(爪床)の悪性メラノーマ

今回のテーマは「皮膚がんとしてのメラノーマ」に関して、以前に当院のコラムで取り上げたものの続編になるものです。以下のリンクをクリックしてご参照ください。

>>>「皮膚がんとしてのメラノーマ」

以前のテーマのをお読みでない方はそのまま下記をご参照ください。冒頭文章には重複している文章がございます。

----------------------------------------------
はじめに。。。

悪性黒色腫(メラノーマ、malignant melanomaはヒトでの苛烈な悪性腫瘍としてのイメージから、急性白血病と並びドラマ的な題材とされることの多い代表的腫瘍であり、誰しも一度は小説やメディアなどでその名前を聞いたことがあるのではないかと思います。

この腫瘍は人間だけではなく、もちろん犬にも存在します。診断上は悪性腫瘍の扱いを受けますが、その悪性度のパターンはヒトのものとはやや様相が異なります。

人間のそれでは、突然できた、もしくは大きくなってきた黒子(ホクロ)というものが悪性黒色腫を連想させますが、犬でも人と同様に皮膚、爪周囲、眼、口腔内(口の中)と発生する場所は多岐にわたり、いろいろなタイプの腫瘤を形成します。また、その悪性度は発生部位により大きく変化します。

では一般的に、「口腔内メラノーマは悪性」とか、「皮膚メラノーマは悪性の可能性はむしろ低い」というパターン認識が獣医師の間では比較的共有されています。ワンちゃんの皮膚メラノーマにおいては常に悪性ではなく、良性のことが多いということに驚かれる方も多いのではないでしょうか。

意外なことに犬では毛の生えている皮膚に発生するメラノーマの85%は良性であるとされています。人間のメラノーマのように悪性の挙動を示すようなものは急速に大きくなったり、腫瘤の表面が自壊して潰瘍となることも多く、大きさが直径2cmを超えることもあります。
----------------------------------------------

このような大きな腫瘤を形成した、皮膚がんとしてのメラノーマの1例が次の写真です。大きく隆起して大豆程度の腫瘤が5-6個くっついたようなカタマリを形成しており、長い方の直径は約4cmにもなっています。
皮膚メラノーマ良性のものが多いのですが、その中にはこういった極端に悪性度の高いものも含まるため、特にその診断治療には細心の注意が必要です。

DSC_8265.JPG

ところで、通常は良性のものが想定される皮膚メラノーマですが、そのパターンの当てはまらない例外の場所があります。そのひとつが爪下(爪床)から発生するメラノーマです。

爪下(爪床)のメラノーマは頻度こそ少ないものの、高頻度に悪性で、口の中にできる口腔内メラノーマ、皮膚がんとしての悪性皮膚メラノーマと並び、注意を要する悪性メラノーマのひとつです。

今回はその「爪下のメラノーマ」についての話題です。

----------------------------------------------

「前足のツメが折れて、指先が腫れて痛そうだ」、という訴えのお年寄りの小型犬が来院いたしました。

診察室では活発なワンちゃんでしたので、”痛そうだし、爪は折れているみたいだな”、という印象でしたが、なにやら患部の色調が変です。それに全く出血していません。。。
普通、「爪が根元から折れた」という訴えのわんちゃんには強い痛みと、なかなか止まらない出血を伴って来院することが多いものです。

よく見ると、爪は変形して周りの黒っぽいカタマリに囲まれてよく見えませんので、一見して折れてしまったように見えたのでしょう。爪ごと指をどこかに挟んで、内出血して腫れているのかなとも思いましたが、どうもケガの類とは違うようです。

DSC_3512.JPG

飼い主さんは、詳しい経過が分からないということでしたので、嫌がるワンちゃんには我慢していただき、針生検による細胞診を行いました。細胞診とは注射針で目的の組織をわずかに採取して行う簡便な検査法です。

細胞診の結果はメラニン顆粒を含む悪性度の高い腫瘍細胞が多数採取され、発生部位爪下であることから、この腫瘍が注意を要する悪性「爪下のメラノーマ」であると判断しました。同時に依頼した病理医による診断結果も同様の診断となりました。

悪性メラノーマは高い確率で周辺リンパ節をはじめとする他の臓器遠隔転移を生じやすく、発見時にはすでに肺転移していたということも充分にあり得る話です。手術は早期に腫瘍を体から隔離しなければなりませんが、こうした末端部の悪性腫瘍に対してはその手段として断脚術断指手術を選択します。
飼い主さんや、当事者のわんちゃんにとってはまさに「身を切らせて骨を断つ」、という選択となってしまいますが、脚の末端に発生した悪性腫瘍に対しては根治のためにこうした手術の提案が行われることはよくあることです。

手術腫瘍がある指の3関節目まで切断する断指手術を実施いたしました。爪下メラノーマに対しては断指手術は最低限必要です。断脚手術と比べると断指術は外観の違いは最小限ですし、患肢温存されますので、手術後にも以前と変わらない生活を送ることができるでしょう。

下の写真が、指の先から3関節目(末節骨、中節骨、基節骨)までを切除する、断指手術によって切除された病変部です。右上にの周囲を覆い隠すように黒い腫瘤が見えると思います。(画像処理はしていませんので、注意してご覧ください。)

DSC_3514.JPG

----------------------------------------------

手術後の経過は順調で、患者さんは翌々日に退院することができました。その後は元通りの生活に戻ることができています。断脚手術ではこのような短期間の回復というわけにはいきません。元気なワンちゃんの姿を見ながら、できるだけ長期間無事に過ごしてくれることを祈るばかりです。

メラノーマ摘出後化学療法(抗がん剤治療)を行うことに関しては、人医療の分野も含めて不確実なところもあるのですが、今回は断指手術という手術方法なども考えて、抗がん剤カルボプラチンの投与を実施いたしました。また、長期間のメラノーマ再発抑制を期待して、メラノーマに対する効果の報告があがっている分子標的薬トセラニブ投薬を開始いたしました。

トセラニブに関しては次のリンクをご覧ください。>>>「分子標的薬について」

爪下悪性メラノーマ遠隔転移による腫瘍死の可能性はおよそ半数近くに及びますが、このわんちゃんは手術後6か月を過ぎた時点で、幸いなことに再発もなく、肺をはじめとするその他臓器への転移は認められず、元気に生活してくれています。

----------------------------------------------

文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍

受付時間

受付時間

年中無休
平日は朝8時から診療します
※年末年始・お盆は診療時間が短縮になります。
※水曜日、13時以降は手術・処置のため休診です。

047-402-3700(予約制)

※ご来院前にご予約をお願いしております。
※緊急の場合でもご来院前にご連絡ださい。

>メールでのご予約、お問い合わせについて

千葉県船橋市西船1-19-28 朝日ビル1階
無料駐車場14台
駐輪場9台併設
病院前に6台と隣接する8台の駐車スペースがあります

駐車場

あいむ動物病院 西船橋スタッフ