>>>犬の瓜実条虫症について
瓜実条虫(Dipylidium caninum)は成虫の長さが数cm〜50cmにも及ぶ消化管内寄生虫で犬や猫によくみられます。
瓜実条虫をはじめとする条虫類は片節という「内部に寄生虫卵を大量に含む袋状構造」が連結した集合体がひとつの寄生虫体を形成するという独特の形態をしています。
つまり、条虫の頭部が小腸粘膜に付着して寄生し、その頭部から片節が次々と形成され、数珠繋ぎに下方へ伸びていくように虫体を成長させていきます。
瓜実条虫はをはじめとする条虫類は線虫類と並んで、世界的にもよくみられる代表的な消化管内寄生虫のひとつです。当院のある千葉県船橋市周辺でもよく見られる消化管内寄生虫です。感染経路は犬や猫へ感染できる状態へと成長した瓜実条虫を持ったノミなどの昆虫類を食べることにより経口感染します。
>>>犬の条虫症の症状は?
瓜実条虫は少数の寄生ではほとんど症状を示しません。なんらかの理由で多数の瓜実条虫が寄生すると元気がなくなったり、食欲が落ちる、軟便や下痢をする、痩せてくる、嘔吐するといった他の病気との区別が難しい症状を発症します。
また、瓜実条虫に感染した犬では寄生虫の片節が肛門周囲に付着するために、お尻(肛門周囲)を舐める、地面にこすりつけるといった行動がよくみられます。
>>>犬の条虫症の診断は?
瓜実条虫は糞便検査で偶然に寄生虫卵が見つかることもありますが、通常は糞便検査を瓜実条虫を見つけるために行うことはありません。便中にはたくさんの寄生虫卵を含む寄生虫の片節として直腸から排泄され、それが肛門周囲に付着するため、ほとんどがこの特徴的な形状と動きを持つ片節を見つけることで診断されます。
>>>犬の条虫症の治療と予防は?
犬猫では条虫の駆除にはプラジクアンテル製剤(下写真)を使用します。商品名ドロンシット錠やプラジクアンテル・パモ酸ピランテル・フェンバンテル合剤のドロンタールプラス錠、薬を飲ませることが難しい犬にはプラジクアンテル、エモデプシド合剤のプロフェンダースポット(いずれもバイエル薬品)、その他フェンベンダゾール(Panacur、日本未発売)の投与により治療・予防します。
瓜実条虫の成長にはノミなどの中間宿主の存在が不可欠です。瓜実条虫の感染を起こしている猫の体表面にはほぼノミが寄生しておりますので、この寄生虫の予防には条虫駆虫と同時にノミを駆除・予防し、清潔な環境を整えることも重要です。
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文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍