>>>ハムスターのウェットテイルとは?
ハムスターのウェットテイルとは、水様性の下痢によってお尻の肛門あたりが常に濡れている状態になることをさします。下痢便や腸からの分泌物よって濡れた(ウェット)、尻尾(テイル)になるためにこのように呼ばれます。ハムスターでよくみられる異常であり重篤化して衰弱しやすく、生命に関わることもある消化器病です。正式な名称は、増殖性回腸炎または伝染性回腸炎といいます。
ウェットテイルはカンピロバクターなどの腸内細菌、酵母などの真菌、ウィルス、トリコモナス、ジアルジアなど原虫感染をはじめとする寄生虫感染、不適切な食事、ストレスなどの原因が様々に関わって発症すると考えられています。
ハムスターに最適な温度管理がなされていない場合にも発症し易いため、ハムスターが生活するのに適した 温度(18~26度)を常に保つように心がけるとよいでしょう。
複数の腸管内の感染が重なって起こった場合、症状がより重くなるケースが少なくありません。寄生虫などの感染の場合、感染していても症状が出ていないような不顕性感染も多く、体調不良、ストレスによる体力低下や腸内細菌のバランスの崩れをきっかけとして、軟便や下痢などの症状が発生します。
>>>ハムスターのウェットテイル症の症状は?
尾部、臀部(尻)・尻尾周辺が水溶性下痢で濡れている状態になります。ひどい場合は下半身がずぶ濡れに見えるようになることもあります、黄色下痢や水様性下痢が続いて脱水症状を示していることがしばしばです。食欲不振からの栄養不良が長引くと体重減少、削痩(やせ)を呈し、次第に衰弱していきます。下痢による激しい「しぶり」は腸閉塞や直腸脱などの生命に関わる重大な合併症を引き起こすこともあります。
>>>ハムスターのウェットテイル症の検査は?
身体検査でお尻周りの汚れがないかを確認します。食欲不振を訴えて来院したハムスターのお尻周りが下痢便によって汚れていることが診察室で発見されることもよくあります。下痢の量が少ない場合には飼い主さんがこういった変化に気づくのは難しいこともしばしばです。
診断は外見のウェットテイルの状態があり、糞便検査でジアルジアやトリコモナス原虫などの寄生虫の異常な増加や増殖して運動性を増した腸内細菌を確認します。多くの場合、典型的な症状に加えて糞便検査で細菌や寄生虫感染が疑われるものが該当します。
>>>ハムスターのウェットテイル症の治療は?
治療は、糞便検査で確認された原因によって抗生剤や抗菌剤、駆虫薬の投与を行ったり、下痢による脱水を予防ないし改善させるための皮下輸液などの支持療法や、下痢による脱水を予防して環境への汚染を少なくするために下痢止めの処方が必要になります。
———————————————-
文責:あいむ動物病院西船橋 獣医師 中山 光弘