「顔から何か棒みたいなものが出ているんですけど。。。」
という訴えで、若いハムスターさんが来院いたしました。
診察室内では、随分痩せて脱水しているように見えたハムスターさんでしたが、元気に動き回っています。確かに、飼い主さんがおっしゃるように一見すると棒のようなものが鼻の左側(オレンジ矢印)から出ています。しかし、動きが激しくてよく見えません。
なんですかね。これは。。。?
そこで、しっかりと押さえて診てみると。。。どうも前歯のように見えます。
さて口を開けて中を見てみると。。。えっ!?
どうやら、上あごの門歯が伸びすぎて口の中で一周して、そのまま口の粘膜と皮膚を貫通して先端が鼻の左から飛び出しているようです。。。
上の拡大写真のように、ハムスターの門歯は真っ直ぐに伸びていくのではなく、コイルのようにグルグル回りながら伸びてしまうのがお分かりになるかと思います。
このため、このケースでは外からは口はしっかり閉じられており、一見して歯が異常に伸びているようには見えませんでした。飼い主さんの観察では、なんとなく噛みにくく、食欲がないくらいの印象だったようです。
ハムスターさんはこうなると食事をうまく食べられないばかりか、さらには必要な水分さえ採れなくなってしまい、衰弱していきます。こういった原因での食欲低下は意外に多いのですが、外から見て門歯の伸び過ぎが分からないことが多く、病院に来て初めて指摘されるケースが多く見受けられます。
当日は歯をカットして、抗生物質の投与と点滴を行い、お帰り頂きましたが、その後数日で元気、食欲ともに元通りになったそうです。今回は門歯が皮膚から飛び出なければさらに発見は遅れたと思われますが、とりあえず一件落着です。
上記の例はやや極端なものでしたので、下の写真に通常みられる過長歯の写真をご覧になっていただければ身近な問題としてご覧いただけるのではないかと思います。
ご自宅のハムスターが食欲を失ったら、まず口を開けて歯のチェックをしてみてください。もしかしたらご自宅でも異常が見つかるかもしれません。。。
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文責:あいむ動物病院西船橋
病院長 井田 龍