老犬介護コラム担当の小泉です。今回のテーマは、前回で少し触れた、「夜鳴きと体内時計」の関係についてのお話をしたいと思います。
私共、老犬介護スタッフは飼い主様から様々なご相談を受けますが、その中で夜鳴きに困っていらっしゃる方のご相談の件数はとても多いものです。
夜中~朝方にかけての一番眠い時間帯に、「わん!わん!わん!・・・わん!」
一日だけなら我慢できても、これが毎日となると、大事なワンちゃんとは思いつつも、肉体的にも精神的にもとても辛いものになってしまいがちです。結果的にワンちゃんとの絆に関わる問題が起こるばかりでなく、騒音問題としてご近所の方とのトラブルが起こる可能性があり、かなり深刻に悩まれている方が多くみられます。
私も以前に愛犬を介護の経験がありますが、朝4時に鳴かれた時は、どうしようもなくなって布団をかぶって鳴き止むのをひたすら待ったこともありました・・・。
動物病院に相談に行くと、「痴呆ですね。」と言われ、睡眠導入剤などが処方される。。。
でも、ちょっと待ってください。本当にワンちゃんはボケちゃったのでしょうか? どうして夜鳴きが起こるのか。 全ての原因がそうではありませんが、問題の根本に体内時計(サーカディアンリズム)が狂ってしまった可能性があることをまず。考えなければいけません。もしかして。。。
もしかしたらワンちゃん、昼間に熟睡してませんか・・・?
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体内時計が狂いやすい生活パターンとは?
朝方、飼い主さんと一緒にワンちゃんも起きます。
朝ご飯を食べ、排泄も済ませます。 飼い主さんたちは出掛け、ワンちゃんはお留守番。(飼い主さんはもうワンちゃんが老犬だからともう散歩をやめてしまっています。)
夜になって飼い主さんが帰宅し、ワンちゃんもまた起きます。 晩ご飯、排泄を済ませる。
このパターンに当てはまっていませんでしょうか?お留守番は半日以上も独りぼっちなどということも多いものです。 これはご家庭の事情で止むを得ないことも多いかと思います。 しかし、そういった場合でもできることはあります。
まずは、問題の発端は多くの方が、ワンちゃんが老犬で足腰が弱ってきたから、寝たきりだからと、お外に出すことをやめてしまうことです。 さらに、家に人が誰もいなくなるから、ワンちゃんは寝てるからと、電気を消して部屋の中を真っ暗にしてしまいます。
暗くなったことで、ワンちゃんにとってはこの時間帯は夜と認識され、熟睡モードに入ります。 そして家人が帰宅した時に電気をパッと点けられ、ワンちゃんの頭の中では朝と勘違いします。 それからは飼い主さんも家にいるので、一緒に遊んだり、身体を撫でたりするかもしれませんが、飼い主さんはあと3〜4時間で就寝に入りますので、そこまで多くのコミュニケーションは取れません。
せっかく飼い主さんが側にいるのに、ワンちゃんはまた寝るモードに入らなければなりません。 昼間にあんなに寝たのに、また寝なければならないのです。 まだまだ飼い主さんと触れ合いたいし、まだ歩ける子なら、お外が好きだった子ならお散歩に行きたいのは当然です。
そこで要求吠えになります。
「わん!わん!わん!(お散歩行きたいよ〜!)」
「わん!わん!わん!(もっと撫でてよ〜!)」
飼い主さんはどうにか鳴きやんでもらうために、抱っこしたり、おやつをあげてみたり、終いには夜中のお散歩に行くことになります。
ワンちゃんにとっては大きな収穫を得ました。大成功ですね。 つまり、「要求吠え」をしたら、飼い主さんがそれに応えてくれたのです。
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もし、ワンちゃんの要求に従って仕方なく夜中の散歩に行くならば、いつもより30分早く起きてみて、朝の散歩に切り替えてみられたらいかがでしょう。 朝の散歩の狙いは「朝日を浴びること」にあります。 散歩は難しいという方には、朝日が当たる場所にワンちゃんの寝床を移してあげるもいいでしょう。その際、 夏は気温が上がりやすいため、熱中症になる危険がありますからその点は気をつけてくださいね。
朝日を浴びるメリットとその理由をちょっとお話しさせてください。ワンちゃんも、もちろん人も朝日を浴びることにより、体内時計をリセットすることができます。すると何が起こるでしょうか。。。
●朝日を浴びてから、15〜16時間後に脳内でメラトニン(松果体ホルモン)が作られます。
※メラトニンとは、脳内物質(誘眠作用がある)のひとつで時差ボケを解消して、一日の体のリズムを調整する働きをします。朝日を浴びることで、分泌が抑制され脳が覚醒し、その15〜16時間後に分泌が始まり、寝る準備へと導かれます。
●脳内のセロトニン(脳内の神経伝達物質)の分泌を促します。
※セロトニンとは、脳内で様々な神経伝達を行う物質ですが、このホルモンは喜びや不安などの感情をコントロールする作用があり、別名、「幸せホルモン」とも言われています。
今回のトピックは」夜鳴きの原因として体内時計のズレに焦点を当てましたが、
「純粋な要求吠え」、「認知の問題」 、「痛みや排泄など、不快感がある」
なども考えられますので注意が必要なのは言うまでもありません。
老犬介護というのは、近年の犬の高齢化に伴ってメディア等でも取り上げられるようになってきた古くて新しいテーマです。今までは動物病院やトレーナーが担ってきた分野ではありますが、現在、老犬介護を目的とする民間施設の数も増えつつあり、老犬介護の分野に関して精通した専門スタッフとの住み分けの時代が来ているのではないでしょうか。
飼い主さんが倒れてしまっては、元も子もありません。 飼い主さんあってのワンちゃんなのですから、ぜひご自身を労わり、最後までやってよかったと思える老犬との生活をお送りいただければこれに越したことはありません。 老犬介護でお困りの場合、介護が破たんする前に適切に私たちのような老犬介護施設のスタッフがお力添えできることもあろうかと思います。
老犬介護施設がどういったところかについての各論は、まだ先になりそうですが、いずれどこかの回のコラムでご紹介させて頂こうと思っています。
それでは、また次回に☆
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小泉ひさの
トリマー、動物看護師