犬が銀杏を食べてしまったら

>秋の散歩で気をつけたい”銀杏”

 秋が深まるにつれて、イチョウの木の下にはたくさんの銀杏が落ちてきます。
銀杏の”落果”は関東地方では概ね9月末~11月頃まで、イチョウの葉が黄色味を帯びる10月過ぎにピークを迎えます。

多くの方にとってはその不快な臭気のイメージから、人よりもはるかに嗅覚の鋭い犬ならば、”落ちている銀杏なんてまさか食べないだろう”、という思いが意外に強いのではないでしょうか?

ところが、実際にはむしろその強烈な臭いに刺激を受けたり、そもそも探索心旺盛な犬では、つい拾って口にしたり、落ちているたくさんの実を食べ続けてしまうことが、時々あるようです。

”銀杏の誤食”で注意したいのは、単に「銀杏には毒がある」という事実だけではありません。
犬への危険性として知っておくべき点は、以下の3つに切り分けて理解しておく必要があります。

 ①殻の中身(仁)が持つ神経機能への毒性
 ②黄色い果肉状の部分に含まれる刺激性物質
 ③殻による腸などでの異物障害(閉塞)

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>誤食の際の安全基準はありません

犬では中毒に対して、また特有な異物障害発生の目安としても…

「体重○kgなら○個まで安全」

という危険性や安全性の目安ははっきりとはしていません。(※)

犬の銀杏中毒では…
”銀杏の大きさ”、”成熟度”、”生”か”加熱済み”か、”殻が割れていたか?”、”犬がどの程度噛んだか?”
様々な要因で中毒物質の実際の摂取量は変わるだけでなく、殻ごと飲み込んだ場合の異物性障害の可能性も加えて考えなければなりません。

そのため、銀杏の誤食に際して
人間の銀杏中毒での「何個食べたか」のような単純な目安はもちろんなく…

 ◆犬の体重は?
 ◆食べてからの時間? 
 ◆食べた個数は?
 ◆黄色い”果肉”だけか?
 ◆殻ごと丸呑みしたか?
 ◆殻が割れていたか?
 ◆中身を噛んでいたか?

といったいくつもの情報を評価することが重要です。

※ご参考までに…
人間の銀杏中毒はよく知られていますが、実際には人間でも中毒量の基準はなく、子供で5-7粒(5歳以下は避ける)、大人で40粒以上の食べ過ぎは要注意という経験則的なものがあるようです。

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>「殻の中身」は中毒成分を含みます

強烈な臭いを放つ黄色い外種皮の内側には硬い殻を持つ種子があり、その殻の中に私たちが食用にしている、馴染み深い銀杏の仁(じん)があります。この仁に含まれる代表的な中毒成分が…

メチルピリドキシン(MPN)、別名ギンコトキシン(ginkgotoxin)と呼ばれる物質であり、これが銀杏中毒の主役となります。(以下MPNとします)

なお、”黄色い果肉状の外種皮”に含まれる毒性物質であるギンコール酸(ginkgolic acids)は名前こそ似ていますが、MPNとは別の物質で、”起きる障害”も”毒性の強さ”も異なります。

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>「MPN」が神経への毒性を持つ理由

銀杏の殻の中に存在するMPNは、体内で需要な働きを持つビタミンB6(ピリドキシン)の役割を妨げる”アンチビタミン作用”としての毒性を発揮します。
ビタミンB6は脳・神経が正常に働くために必須な物質で、その働きが妨げられることで”脳の興奮”を抑える仕組みがうまく働かなくなってしまいます。

その結果、人間での”銀杏中毒”と似たような、下記の症状がみられることがあります。

  • 嘔吐・嘔気
  • 落ち着きがなくなる
  • 震える・ふらつく・立てない
  • 強い眠気、反応が鈍くなる
  • けいれん発作などの神経症状

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>外側の「果肉」部分にも注意!

銀杏の”黄色く柔らかく強い臭気を放つ部分”は、一般には”腐った果肉”のように見えますが、正確には果実ではなく、種を覆っている外種皮(がいしゅひ)という部分です。
この外種皮には、”刺激物質”とされるギンコール酸類やフェノール類が多く含まれています。

そのため、犬が外種皮を噛みつぶしたり、食べたりすると口の中や消化管の粘膜への障害が生じて…

  • よだれが増える
  • 口を気にする
  • 吐き気・嘔吐
  • 軟便・下痢
  • 腹部の不快感

などの消化器症状や中毒を起こす可能性があります。

人では”銀杏収穫”の際にこの外種皮によるかぶれや皮膚炎が起こることがよく知られており、犬でも”口の周囲”や足先などの皮膚にも同様の症状を生じる可能性があります。

もし、付着していた場合は素手では扱わずに、流水などでやさしく洗い流してください。

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>「殻の外」と「中身」の毒性の違い

銀杏では、食べた部分によって注意する点が異なります。
毒物としては下記のように…

①黄色い果肉状の外種皮
→ ギンコール酸などによる口の中・胃腸・皮膚への毒性
②殻の中にある銀杏の仁
→ MPN(ギンコトキシン)による
神経機能への毒性

と考えると分かりやすいでしょう。つまり…

「”殻の外側”のみを食べた場合」
「殻が割れた中身や、噛んで中身を食べた場合」
「①・②の割合、食べてしまった総量」

以上の条件によって症状の現れ方や危険性が異なります。

ただ、実際には散歩中にどの部分をどれだけ食べたのかは咄嗟に判断することが難しいかもしれません…

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 >殻ごとなら「異物障害」にも注意

銀杏の誤食に際して、中毒以外にもう一つ大きな問題があります。

”硬い殻”ごと飲み込んだ場合…

中毒とは別な問題として腸などでの異物障害(閉塞含む)の危険性が高まります。
特に体重の少ない”小型犬”、”噛まずに複数個を飲み込んだ場合”には要注意です。

下記のような症状がある場合…

  • 何度も吐く
  • お腹を痛がる
  • お腹が張ってきた
  • 苦悶している
  • 元気・食欲がなくなる

こうした場合には胃や腸内に閉塞などの異物障害があるかどうか?
慎重な判断が求められます。

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 >誤食した際の症状を含む注意点

 次のような場合には、できるだけ早く動物病院へご相談ください。

 ◆震え・ふらつき・意識の変化などがある
  神経中毒を疑う緊急性の高い重要な症状です
 ◆何度も吐いている・苦悶などの消化器症状
  銀杏の外種皮による中毒、異物障害の可能性
 ◆殻が割れていたり、殻の内部を食べた場合
  銀杏の”仁”が露出しており、MPNによる神経中毒の危険
 ◆銀杏の実を丸ごと何個も食べた場合
  ・MPNの摂取量自体が高まる可能性
  ・”外種皮による刺激による皮膚・粘膜障害(嘔吐・下痢含む)
  ・”殻による異物障害”の可能性

 ◆食べた数が分からない
  上記全てのリスクを判断することが困難

>最後に〜
 銀杏の誤食を防ぐために

秋の散歩道ではイチョウの木の下に要注意です!
もちろん、”パッと見て銀杏が多く落ちている場所”では言うまでもありません…

ところで、ここでちょっと常識の再確認をしてみたいと思います。

「イチョウの葉が黄色になる」→「銀杏が落ちてくる」
と思っていませんか?

実はイチョウの葉の色の変化と銀杏の”結実”にはあまり関係性はありません。
銀杏はイチョウの葉が黄色くなる前に、既に大量に落ちている可能性がありますので注意が必要です。
※冒頭の銀杏写真の撮影時(9/17)にはイチョウの葉はまだ青々としており、黄色い葉は皆無でした。

最後に…
大事なことは普段から散歩での拾い食いをさせない習慣です。
日頃から「拾い食いを防ぐためのトレーニング」を心がけましょう!

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文責:あいむ動物病院 西船橋
   代表獣医師 井田 龍

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