>秋のお散歩で気をつけたい”銀杏”
秋になると、イチョウの木の下にはたくさんの銀杏が落ちています。
多くの方にとって、その不快な臭気のイメージから、人よりも嗅覚の鋭い犬はおそらく銀杏なんて食べないだろう、という思い込みは強いかもしれません。
ところが、実際にはむしろその臭いに刺激を受けたり、そもそも探索心旺盛な犬では、つい拾って口にしたり、落ちているたくさんの実を食べ続けてしまうことがあります。
”銀杏の誤食”で注意したいのは、単に「銀杏には強い毒がある」という事実だけではありません。
犬への危険性として知っておくべき点は以下の3つを理解しておく必要があります。
①銀杏の殻の中身が持つ強い神経毒性
②黄色い果肉状の部分に含まれる刺激性物質
③銀杏の殻による腸などの異物閉塞の危険
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>「何個までなら」という基準はありません
また、それぞれの中毒や異物障害発生の目安として
「体重○kgなら○個まで安全」
という危険性や安全量の目安は、はっきりとはしていません。
つまり”銀杏の大きさ”、”成熟度”、”生”か”加熱済み”か、”殻が割れていたか?”、”犬がどの程度噛んだか?”様々な要因で中毒物質の実際の摂取量は変わるだけではなく、殻ごと飲み込んだ場合の異物性障害のリスクも重なります。
そのため、銀杏の誤食では「何個食べたか」だけでなく…
◆犬の体重
◆食べた時刻
◆およその個数
◆黄色い果肉だけか
◆殻ごとか
◆殻が割れていたか
◆中身を噛んだか
といった情報を総合的に評価することが重要です。
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>銀杏の「中身」は強い中毒成分を含みます
強烈な臭いを放つ黄色い外種皮の内側には硬い殻があり、その中に私たちが食用にしている銀杏の仁(じん)があります。この仁に含まれる代表的な中毒成分が…
MPN(メチルピリドキシン)、別名ginkgotoxin(ギンコトキシン)と呼ばれる物質であり銀杏中毒の主役となります。(以下MPNとします)
なお、”黄色い果肉状の外種皮”に含まれる毒性物質であるギンコール酸は名前こそ似ていますが、MPNとは別の物質で、”起きる障害”も”毒性の強さ”も異なります。
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>MPNはビタミンB6の働きを妨げます
銀杏の殻の中に存在するMPNは、体内でのビタミンB6(ピリドキシン)の働きを妨げる”アンチビタミン作用”としての毒性を発揮します。
ビタミンB6は脳・神経が正常に働くために必要な物質で、その働きが妨げられることで”脳の興奮”を抑える仕組みがうまく働かなくなってしまいます。その結果…
- 嘔吐
- 落ち着きがなくなる
- ふらつく
- 体や足が震える
- 強い眠気、反応が鈍くなる
- 立てなくなる
- けいれん
のような神経症状が現れることがあります。
実際に、人間で銀杏を食べ過ぎた場合に生じる”銀杏中毒”と同様に、犬でも銀杏を食べた後に嘔吐、四肢の震え、強い眠気、起立不能を起こした報告例がみられています。
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>黄色い「果肉」のような部分も注意!
銀杏の”黄色く柔らかく強い臭気を放つ部分”は、一般には腐った”果肉”のように見えますが、正確には果実ではなく、種を覆っている外種皮(がいしゅひ)という部分です。
この果肉状の外種皮には、刺激物質とされるギンコール酸類(ginkgolic acids)やフェノール類が含まれています。
そのため、犬がこの部分を食べたり”、”噛みつぶしたり”すれば周囲の皮膚や口の中、消化管の粘膜に対して障害を起こし…
- よだれが増える
- 口を気にする
- 吐き気・嘔吐
- 軟便・下痢
- 腹部の不快感
などの消化器症状を起こす可能性があります。
なお、人ではこの外種皮に触れることで皮膚炎を起こすことが知られています。
犬でも、”口の周囲”や口の内、皮膚に付着した場合には、粘膜や皮膚に強い刺激を生じる可能性がありますので、付着している場合は素手で強くこすらず、流水などでやさしく洗い流してください。
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>「果肉」と「殻の中身」の毒性の違い
銀杏では、食べた部分によって注意する問題が異なります。
◆黄色い果肉状の外種皮
→ ギンコール酸などによる口腔・胃腸・皮膚への刺激
◆殻の中にある銀杏の仁
→ MPN(ギンコトキシン)による神経中毒
と考えると分かりやすいでしょう。
果肉状の部分だけを口にした場合と、殻が割れて中の銀杏を何個も食べた場合とでは、心配する症状や危険性が大きく異なります。
ただし、散歩中に落ちている銀杏を実際にどの部分をどれだけ食べたのか、咄嗟に判断することはなかなか難しいのが実際です…
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>殻ごと飲み込んだ場合は「異物」にも注意”
銀杏の誤食に際して、実は中毒以外にもう一つ大きな問題があります。
”硬い殻”ごと銀杏をそのまま飲み込むと、中毒性とは別な問題として腸などでの異物閉塞の危険性が高まります。特に小型犬や複数個を丸飲みした、ほとんど噛まずに飲み込んだ場合には注意が必要です。
中毒症状がなくても、下記のように…
- 何度も吐く
- お腹を痛がる
- 苦悶している
- お腹が張ってきた
- 元気がなくなる
- 食欲がなくなる
などがみられた場合には、胃や腸内に閉塞などの異物障害があるか?
慎重な判断が求められます。
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>誤食した際の症状を含む注意点
次のような場合には、できるだけ早く動物病院へご相談ください。
◆震え・ふらつき・意識の変化などがある
神経中毒を疑う緊急性の高い重要な症状です
◆何度も吐いている・苦悶などの消化器症状
銀杏の外種皮による中毒、異物障害の可能性
◆殻が割れていたり、殻の内部を食べた場合
銀杏の”仁”が露出しているため、MPNによる神経中毒の危険
◆銀杏の実を丸ごと何個も食べた場合
・MPNの摂取量自体が高まる可能性
・”外種皮による刺激による皮膚・粘膜障害”
・”殻による異物障害”の可能性
◆食べた数が分からない
上記全てのリスクを判断することが困難なため
>最後に〜
銀杏の誤食を防ぐために
秋の散歩道ではイチョウの木の下に要注意です!
もちろん、パッと見て銀杏が多く落ちている場所では言うまでもありません…
ただ、ちょっと常識の再確認をしてみたいと思います。
「イチョウの葉が黄色になる」=「銀杏が結実して落ちてくる」
と思っていませんか?
実はイチョウの葉の色と銀杏の結実にはあまり関係性はありません。
銀杏の実はイチョウの葉が青々と茂っていたとしても、既に大量に落ちている可能性がありますので注意が必要です。
最後に…
大事なことは普段から散歩での拾い食いをさせない習慣が大事です。
日頃から「拾い食いを防ぐためのトレーニング」を!
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文責:あいむ動物病院 西船橋
獣医師 井田 龍