今回は、とても動物病院のブログとは思えない内容で行きたいと思います。当院ブログには時々こんな脱線がありますがどうぞお許しください。。。
お暇な方、空を見るのが好きな方にお読みいただければ幸いです。。。
秋口あたりからでしょうか、東から南の夜空に連れ添うように見えていた二つの明るい星に気付いていた方は如何程でしょうか?
12月に入り、実はこの二つの星が次第に近づいて最も近くなったところで(会合;conjunctionと言います)、それがなんと「数百年」ぶりのレアな天文現象となりました。
夜空を見て、なんだかいつもの星空と違うなあ、と感じていた方も少なからずいらっしゃるのでは?
当院のある船橋市は街明かりと空気の澱みのために、パッと見てわかる星座はオリオンや北斗七星くらいでしょうか。
なんとなく目に入ってくるのは最低でも1等星レベルですから、本来なら燦然と輝いているはずの明るい星がポツポツ見えるだけで、星座はどこなの?というありさまです。
2020年もあとわずかの師走の候、こんな船橋でもかなり目立つ「天文現象」になりました。ニュースなどで報道されていましたので、ご存知の方も多いかと思います。
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それは、夜空で”最も明るいレベル”、のマイナス2〜3等星の「木星」と”結構明るい”、約0等星の「土星」が見分けることが難しいくらい接近するという”極めて稀”な現象です。
まず、”どのくらいの接近”かというと最接近の21(〜22)日にかけて双方の間隔(視野角とか離角といいます)が"0.1度"となり、肉眼では満月のだいたい1/5くらいの距離でくっつく程の大接近、いや超接近とも言える状況になりました。
詳しくお知りになりたい方は下記の外部リンクをご覧ください。
>アストロアーツ(木星と土星の超大接近)
実は、今回の大接近の4日前、太陽の沈んだ南西の空に月、木星、土星が夕闇の中で集合するという天体現象が”前座”として見られました。(下写真)
月齢2.7の三日月、右上が土星、その下の星が木星です。
この頃にはまだ、木星と土星がある程度間隔を保っていたため、日没後に月、木星、土星が三つ巴で作り出す華やかな情景に、予期せず思わず見入った方も多いかと思います。
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では実際に、今回の会合では木星と土星がどのくらい近づいたのでしょうか。。。
下の写真は最接近直後、12月22日の日没後の写真です。写真上の方に夕闇でほぼ水平に寄り添うキラキラと輝く点々が素敵でした。
見た目と異なり望遠レンズ越しの写真では地味な点々が二つ、明るい左の星が木星、ちょっと暗くみえる右の星が土星です。視力が少なくとも1.0以上であればなんとか2つの星に見える程度の近さです。。。
写真だとなかなか実感が伝わらないかもしれません。
さらに拡大すると(↓)2つの惑星がキレイに並んでいるのが判ります。
右の土星は輪っかの輪郭がわずかに感じられます。また写真をクリックすると木星の4時方向にくっつくように小さい光の点が見えるのですが、これが太陽系最大の衛星、ガニメデです。(火星より大きい)
ちなみに、今回の接近(会合)がどのくらいスゴイことなのか、その答えは上写真の円が満月の大凡の大きさと言えば分かりやすいでしょうか。。。
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ご参考までに、NASAの発表では実際の木星ってこんな感じです。直径は地球の11.2倍と実に巨大です。
同じく、NASAによると土星はこんな感じです。木星よりやや小さいとは言え、こちらも巨大で派手なガス惑星です。
こんなデカくて明るい惑星が接近して見えるのですから、当然目立たないわけがありませんね。
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さらにこの現象が、”どのくらい稀か”というと。。。
報道では約400年ぶり(江戸初期とかガリレオの時代)というものが多かったのですが、実際には前回の接近は太陽に邪魔されて地球上では赤道付近でしか観察できなかったらしく、観測条件を加味すると約800年前(なんと鎌倉時代!)まで遡らなければならないほどだそうです。
つまり、木星と土星を望遠鏡で同時に観測するのは今回が人類史上初めてと言ってもいいのかもしれません。
日常生活に翻弄される我々にはビックリするような時間間隔ですが、こうした現象に接するにつけ、人間の考える尺度なんていうものが如何に狭いものか、と痛感させられます。
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木星、土星ともにあまりにも近いので、”お蔵入り”の望遠鏡を引っ張り出して両方の同時撮影にチャレンジしてみることにしました。。。
木星、土星ともに巨大惑星ではありますが、極めて遠方のため通常の数百ミリ程度の望遠レンズ、プラス一眼レフの撮影ではほとんど点々にしか見えません。
望遠鏡であれば望遠レンズの5-10倍くらい?にはなるはずです。
下の写真が日本での最接近となる12月21日17時過ぎの画像です。思っていた以上にくっきりキレイに見えました。
右上の楕円が土星、下の明るい●が木星、周囲には木星を挟んで、有名な4つのガリレオ衛星(上からカリスト、ガニメデ、イオ、エウロパ、いずれも月〜火星ほどの大きさ)が整然と並んでいるのが分かります。
パッと見、へえぇーという写真かもしれませんが、この超狭い視野の中に木星と土星、両方の衛星が収まっているということ自体が通常は考えられないのです。天体望遠鏡を触ったことがあれば尚更感慨深いと思います。
この視野を分かりやすく説明すると数百メートル先のマンションの部屋を覗いている感じでしょうか。(極めて表現が悪いですが。。。)
たくさんの失敗写真の中から、たまたま土星本体とその”輪っか”がきれいに写り込んだものがありましたので拡大して載せておきたいと思います。
説明のいらない奥深さを感じる写真だと思うのですが。。。いかがでしょうか。
最後に・・・
次回の大接近は”今回の待ち時間”の数百年と比べて”かなり短い”、約60年後の2080年だそうです。
まあ、短いと言っても、私(51歳)も含めて今見ている人類の多くは恐らくもうこれっきりでしょう。
悠久の時間の中で、我々は人知を超えるものに取り囲まれているということ、加えてその存在の小ささやいかに視野が狭いものかということ、こうした現象はそうしたことを気づかせてくれます。
現在、世界中に大きな影響を及ぼしている感染症にしても然り、大騒ぎする人間社会を横目に、天体の運行と同じように自然界はその摂理に従って物事を変化させるのみです。我々はそのありさまを傍観するしか術がありません。
まあ、何かにつけてあれやこれやと不安渦巻く、制限だらけの息苦しい世の中となってしまいましたが、そんな閉塞感に悶々とする時には、思い切り窓を開けてぜひキレイな夜空を見上げてみてください。
”何か”、きっといいことがあると思いますよ。。。