>お散歩中に見かける「大きな白いキノコ」に注意!
〜オオシロカラカサタケと犬の中毒について 〜
当院の周囲、西船橋界隈では一昨年くらい前からでしょうか?
夏の終わりから秋にかけてワンちゃんのお散歩コースの公園や空き地、芝生、道路脇、庭などに、上の写真のような、大きな白いキノコが生えているのを見かけることがありませんか?
写真は9月に「千葉県船橋市」の住宅地の一角にの空き地に突然現れたキノコを撮影したものです。
この一見してインパクトのある人目を惹くキノコは、近年千葉県内でも目にする機会が増えている
「オオシロカラカサタケ」という中型~大型キノコの一種です。
白~灰白色の大きな傘をもち、中央付近が茶色く、成長すると傘が大きく平らに開きます。傘は5~30cmと幅がありますが、かなりの大きさ(20cm以上)にもなることも珍しくありません。
芝生や草地に単独、または群生したように一気にまとまって生えることも多く、犬のお散歩コースに突然現れることがあり、驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。
遠目に見る限り、その白さと佇まいは美しいのですが、オオシロカラカサタケは「毒キノコ」です。
人間では強い下痢や嘔吐などの消化器症状を起こすとされており、犬が食べた場合にも同様に中毒を起こすことが知られています。
>「オオシロカラカサタケ」とは?
オオシロカラカサタケ(Chlorophyllum molybdites)は、熱帯〜亜熱帯地域にみられる大型のキノコです。
以前は沖縄などの暖かい地域を中心に知られていましたが、近年は温暖化により関東地方でも見られるようになり、さらに急速に分布が北へ広がりつつあります。
※本年度2026年9月に森林総合研究所から「日本での分布域を広げる熱帯性毒キノコ」として
オオシロカラカサタケが取り上げられており、農林水産省からも同様に報告が出ています。
このキノコは
・芝生
・公園
・庭
・道路沿いの草地、空き地
・刈草や腐葉土などの多い場所
などに発生しやすく、気温が高く、雨が続いた後などに突然まとまって出てくることがあります。
千葉県内でも近年、公共施設や公園などで発生が多数確認されており、直近では2026年8月に浦安市のドッグランでの発生により住民及びペットに対しての注意喚起、千葉市や安孫子市でも公園での発生例に同様の対応が行なわれています。
>犬が食べるとどうなるのでしょうか?
オオシロカラカサタケによる犬の中毒は、まとまった報告としては2000年にジャーマン・シェパード4頭の中毒例が報告されており、その後も世界的に散発的な発生報告があるようですが、国内での調査や統計はないようです。
食べた後、比較的早い時間帯、一般には数十分~数時間程度で消化器症状を発症して
- (激しい)嘔吐
- 下痢〜出血性下痢
- よだれ
- 腹痛
- 元気消失
- 食欲低下
などがみられることがあります。
摂取量が多い場合には、激しい嘔吐や下痢によって脱水が進んだり、時には症状の重度の血便を伴うこともあります。
多くの場合は適切な治療によって回復しますが、小型犬、幼齢犬、高齢犬、持病のある犬では、嘔吐や下痢による脱水や電解質異常が大きな負担になることがあります。
ただ、どのような症状かは分かってはいるものの、「原因となる中毒の成分」や「どのくらい食べると中毒になるのか」という犬での明確な安全量は分かっていません。そのため、
「一口だけだから大丈夫」
「少し舐めただけだから問題ない」
とは言い切れないところがあります。。。
>触っただけでも危険なのでしょうか?
オオシロカラカサタケは触っただけで中毒を起こすタイプのキノコではありません。
犬が横を通ったり、体が少し触れたりしただけで中毒になる可能性は低いと考えられます。
問題になるのは”摂食性の中毒であり””キノコそのものを口にすること”で生じます。
オオシロカラカサタケは大きく成長すると非常にもろく、踏まれたり蹴られたりすると簡単に崩れて周囲に散らばります。そのため、散歩中には、
- 落ちている破片を拾い食いする
- 崩れたキノコを舐める
- 足裏についた大きな破片を帰宅後に舐める
といった状況には注意が必要です。
>犬がキノコを踏んでしまった場合
足裏にキノコの破片が目立って付着している場合には、皮膚への毒性はなく中毒物質の吸収も起きません。水で洗い流すか、濡らしたタオルなどでよく拭いておけば十分です。
特に、帰宅すると足をよく舐める犬では、念のため足裏を確認するとよいでしょう。
>ご自宅の庭や散歩コースに生えていたら?
犬が通る場所にオオシロカラカサタケと思われるキノコが生えていた場合は、傘が大きく開く前に取り除くことをおすすめします。手袋をして、できるだけ柄の根元から回収してください。
崩れてしまった場合には、目に見える破片も一緒に拾い、袋に入れて処分します。
特に避けたいのが、キノコが生えたまま”芝刈り機や草刈り機で細かく砕いてしまうこと”です。
細かな破片が広い範囲に飛び散り、犬が拾い食いする可能性がかえって高くなります。
まずキノコを回収してから草刈りを行う方が安全です。
>キノコが崩れた後の「土」も危険なの?
「キノコを踏みつぶしてしまった場所は、土まで毒になるのでしょうか?」
という心配もあるかと思います。
現時点では、オオシロカラカサタケの毒が土壌に長期間蓄積し、その土を踏んだだけで犬が中毒するという性質は知られていません。
注意するべきなのは、土そのものよりも、土の上に残っているキノコの傘・ヒダ・柄などの破片ですので、目に見えるキノコの破片を取り除けば、土を大きく掘り返したり、入れ替えたりする必要はありません。
>キノコは取り除いても
くり返し生えることもあります
地上に見えているキノコは、菌そのものの一部分です。
土の中には「菌糸」と呼ばれる部分が広がっているため、地上のキノコを抜いただけでは完全になくなるわけではありません。特に、オオシロカラカサタケでは
- 気温が高い
- 雨が続く
- 土が湿っている
- 枯草や落ち葉が多い
- 腐った木や木の根が地中に残っている
といった場所では再び生えてくることがあります。
そのため、犬がよく通る場所では、雨が続いた後などに定期的に地面を確認して、出てきたら早めに回収することが現実的な対策です。
土を交換したり、庭全体に消毒薬や殺菌剤をまく必要は通常ありません。
>お散歩中は「白く大きなキノコ」に注意を!
オオシロカラカサタケは、以前は国内では”比較的珍しいキノコ”という印象がありましたが、近年では関東地方でも見かける機会がかなり増えています。
犬にとっては、
◆芝生や道路脇など”鼻を近づけやすい高さに突然現れるため誤食の可能性が高いこと
◆犬は”人間よりも体重が小さく”体重当たりの摂取量が大きくなりがちなこと”
◆”生のキノコをそのまま食べてしまうこと”
などから危険性が高いとされています。
>もし犬が食べてしまったら
オオシロカラカサタケ、あるいは種類の分からないキノコを犬が口にした場合には、症状が出るまで待たず、できるだけ早く動物病院へご相談ください。
その際にはスマートフォンで下記の部位を撮影しておくと、キノコの種類を推定する手掛かりになります。
- キノコ全体の写真
- 傘の”表側と裏側”
- ”柄”の部分
- 生えていた場所や生え方
もし、安全に持参できる場合には、残っているキノコを袋などに入れて持参することも診断の参考になります。※種類が不明な場合には必ず手袋を使用してください。
一方、家庭で無理に吐かせることはおすすめできません。塩やオキシドールなどを使った自己流の催吐処置は、別の中毒や消化管障害を起こす危険があります。
すでに嘔吐、下痢、よだれ、元気消失などがみられる場合は、食べた量が少なそうに見えても受診をご検討ください。
文責:あいむ動物病院 西船橋
井田 龍