金環食(金環日食)

あいむ動物病院のブログへようこそ!
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ホームページのリニューアルに伴い、新しいスタッフの紹介や、病院設備、その他日常の徒然なるできごとをざっくばらんに取り上げ、「あいむ動物病院ブログ」を不定期に書いていこうかと思います。

なお、病院長はじめ獣医師による「診療コラム」も、不定期に更新してまいりますので興味のある方は是非ご覧になってください。こちらは病気や診療にまつわるテーマを中心に取り上げていたいと思っております。

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記念すべき第一回は訳あって、大変申し訳ございませんが。。。まったく動物病院とは関係のない話題です。
これはタイミングよく、ホームページのリニューアルとこのブログの体裁をデザインしてもらっている最中でしたが、ある一大自然現象が起きたためです。

日本全国で金環食(金環日食、annular eclipse)が太平洋側を中心に全国で見られたというニュースを覚えていらっしゃるでしょうか?
そうです。第一回目のブログはその「金環食」についてです。嗚呼、なんという無関係なテーマでしょう。

ほとんどの方にとっては、「まあそんなこともあったよね。」というところでしょうが、実際に見たよ、という方も1割くらい?はいらっしゃるかもしれません。

天文現象というのはおしなべて地味でマイナーな現象です。世の中の人々はそれが起きた後にニュースなどで、”へぇーっ”とさらっと流す程度ではないでしょうか。
実生活には何の関係もありませんから、そんなことにいちいち興味を持っている方が少数派で、そんなこととは無関係に日本経済は動きます。

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余談ですが、私はこういった天文現象がとても好きなのです。いてもたってもいられません。
きっかけは小学生の時に太陽が6割ほど欠ける大きな「部分日食」を父親が買ってくれた望遠鏡で見たことでした。
普段眩しくてまん丸な太陽が刻々と欠けるという現象が目に焼き付いて、子供心ながら人生観が変わるほどの衝撃を受けました。(まだろくに人生を歩んでいませんでしたが。。。)

実は今回の金環日食は小学生のころから、35年後の大人になったら絶対に見てやると楽しみに待ち続けていたものです。

私は幼少のころには天文台に勤めるというのが将来の夢でした。

進路選択の紆余曲折で今は獣医などという仕事をやっておりますので、天文学を生業にするというのはかないませんでしたが、「金環食を見る」という子供のころに立てた些細な目標がかなったという、まあそんな達成感がこのブログを書くきっかけになりました。

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2012年5月21日に全国的に金環日食が観察されました。

日食自体は地球規模では数年に一度の頻度で起こっており、それほど珍しいものではありません。ところが、国内での金環日食というくくりで見てみると、前回の沖縄で見られて以来の25年ぶりのできことです。

さらに、地域を関東地方に限定すると173年ぶり、さらに日本総人口に匹敵する人数の住む生活圏内で「金環日食」がこれほどまでに広範囲で見られるのは西暦1080年の「平安時代」以来、なんと932年ぶりの稀有な出来事だそうです。

今回の中心食帯は日本列島を鹿児島県~福島県まで縦断しますから、3大都市圏を含み日本経済を支えてきた「太平洋ベルト地帯」に一致します。凄い偶然ですね。

ご参考までに今回の金環食の概要や日食の詳しい仕組みなどは下記の国立天文台のサイトをご覧なってください。
>>>国立天文台の外部リンクへ

金環日食の見られた地域は下図の通りです。斜めに横切っている灰色の帯が「中心食帯」という金環食を見ることができるエリアです。また、中央の赤いラインが「中心食線」といい、その上では食の最大で、真円の美しい太陽のリングを観察することができます。

当院は千葉県船橋市、まさにこの中心食線上ですので期待は限りなく膨らみます。なんという幸運、おまけに私の週一回の貴重な月曜休みに合わせて起こるというおまけ付き。後はお天気の神様次第というところでしょうか。。。

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5月21日月曜日、当日は心配になって丑三つ時、朝2時?過ぎに起きました。まだ薄暮前の夜空は曇って星が見えていない。。。どうやらお天気の神様にはそっぽを向かれてしまったようです。

前日の天気予報では千葉県北西部は午前中は曇り時々晴れということで心配はしていましたが、 厚い雲が垂れ込めているのを目の当たりにすると。うーん、困りました。数時間以内にどうするか決めなければいけません。

当日の局地天気予報では千葉県はどうもダメなようです。急いで晴れ間の可能性のある地域を探します。どうも埼玉から北関東にかけて可能性がありそうです。善は急げと自宅での観察の予定を急きょ変更して車に機材を詰め込みました。

とにかく北西に行ってみよう。。。

空を気にしながら、外環道を関越道方面へ走ります。途中、三郷JCTを過ぎたあたりで明るくなりましたがまだ太陽は出てきません。自宅を出てから1時間ほど運転して、荒川を超えて和光市に入ったあたりで雲が切れ始め、日の出を迎えました。
低いところには厚い雲がかかっていますがその上に朝日が垣間見えます。自宅のある千葉県方面は残念ですがその厚い雲の下のようですから、曇り空からの脱出には成功したようでした。

外環道を降りて利根川沿いにさいたま市方面へ走り、富士見市あたり?の荒川河川敷の南東方向が開けている場所を見つけ、そこで金環食を待つことになりました。
移動距離はおよそ50km少々です。夜明け前から慌てて移動しましたから、ちょっとした眠気が襲ってきます。。。

空には時折厚い雲が流れてきますが、太陽の見える方向には大きく晴れ間がのぞいています。このまま晴れればいいんですが。。。

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ここで少々横道に逸れますが、太陽を直接見るという行為は目にとってかなりの危険を伴います。虫眼鏡のレンズで紙に太陽の光を集めれば炎が上がりますから当然のことですので、適切なフィルターで減光をしないと網膜に重大な損傷を引き起こす恐れがあります。

網膜は成人でわずか0.25mm前後の薄さですし、その損傷は修復がききませんのでくれぐれもご注意ください。

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安全な減光には下写真のような「NDフィルター」というものを用います。下写真のフィルターはND100000ですから、1/100000まで減光できるものです。殆ど黒いガラスで透かしても何も見えません。そんなレベルです。

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日食の始まりというのは特に周囲には何の変化もありません。実に淡々と進みます。注意深く気にしていなければ、太陽が半分以上欠けても、明るさの変化に気づく人はほとんどいないのではないでしょうか。
河川を渡る電車や車、人々、遠方にはいつもと同じ、慌ただしそうな朝の風景がありました。(実に勿体無い。。。)

下の写真はだいたい10分単位の日食の変化です。おそらく想像するより早い変化ではないでしょうか。太陽が欠け始めて観測用のフィルター越しでは次第に太陽がまぶしい三日月のように細くなってゆきます。

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河川敷は平日の朝ということもあり、周囲には全く人影がありません。賑やかな鳥の鳴き声や虫の音だけが心地よく響いていました。

だいたい8割くらい太陽が欠けてくると、周囲がちょっと暗くなるというか、明るいのですが景色が色を失っていくように見え始め、なにやら不思議な感じです。心なしか風も冷たく感じるようになりました。

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太陽の弧は三日月よりもずっと細くなって、”見たこともないような形”になりました。

気づくと、周りには次第にある変化が起こりはじめました。「太陽は頭上にあり空は青いのですが暗い」、夕焼けなく日が暮れるような感じで何か不思議で異様な雰囲気です。

ふと、足元に目をやると自分のものだけでなく、落とした影の輪郭が何重にもブレて見えます。これもまた不思議な光景です。
やがて賑やかだった周囲の鳥や虫の音が消えて、静まり返っているのに気付きました。生き物たちも異変を察知しているようです。

下の写真は食の最大の前後、月の外側と太陽の内側が重なって月が太陽の中にすっぽり入っていきます。下の写真は金環食が始まり(第2接触)、終わる瞬間(第3接触)までの5分少々の中でのクライマックスの3枚です。黒い月が右上から左下へ移動していくのが分かります。

さいたま市は中心食線からややずれておりますが、金環食は月が太陽の中心を通り、食の最大ではまさにその名の通り、まさに「黄金のリング」のようにキラキラと輝いていました。カメラのファインダー越しのあまりに素晴らしい光景に言葉を失います。

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いかがでしたでしょうか。わずかでもダイナミックで美しい瞬間を共有していただければ幸いです。

この後、太陽は時計を逆に進めるように元の明るさ徐々に取り戻し、平凡な日常の風景が戻ってきました。5月の日差しは重い機材を抱えていると、河川敷では汗ばむほどです。

終わってみるとあっという間の半日でしたが、寝不足と朝から走り続けてきた疲れがなぜかとても心地よい気分にさせてくれています。一時ですが、小学生の懐かしい自分に帰った気がしました。

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文責:あいむ動物病院西船橋
   病院長 井田 龍

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