自動分包機というものをご存知の方はいらっしゃいますでしょうか?
自動分包機とはざっくりいうと、錠剤や粉薬などを服薬のパターンに沿って自動的に薬袋に袋詰めしてくれる装置のことを指します。調剤薬局などの施設には必須な装置であり、院内調剤を行う動物病院でもそれは同様です。
病院でもらった処方箋をもって街の調剤薬局を訪れると、カウンターの向こう側で、下の写真のような装置で薬剤師さんが薬を調剤しているところを見かけることも多いかもしれません。
動物病院で使われるような「自動分包機」は正しくは、そのほとんどが自動分割分包機といわれる機器のことで、小規模な薬局などを対象とするエントリークラスの製品です。
例えば、おびただしい件数の調剤を行うような病院や規模の大きな調剤薬局では、複雑な作業が自動化されたロボットのような自動分包機も使用されています。
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ところで、動物病院では人間の医療機関でおなじみとなっている医薬分業は行われておりません。薬は院内で調剤されて患者さんに受け渡されるため、その比率では人の診療所を大きく上回る自動分包機が稼働しているのと思われます。
人間の医療機関、特に街の診療所では今や調剤を行わず、処方箋をもらって調剤薬局へというやり方がほとんどなのとは対照的です。
余談ですが、世の中は医薬分業なのになぜ動物病院は院外処方しないの?と、患者さんとしていらした薬剤師さんなどから聞かれることがあります。
実は法律の上では獣医師は調剤薬局の薬剤師に処方箋(せん)を書くことができるのですが、それに対応するコストと手間の問題により動物病院からのオーダーを受け付けていないというのが実際のようです。
ここで、自動分包機が扱う内服薬にはどういった種類があるのかをまとめてみましょう。
一般的にクスリと聞くと、飲み薬をイメージする方が圧倒的と思われますが、飲み薬、すなわち「内服薬」はその”かたち”から錠剤、カプセル剤、散剤・顆粒剤、内服液剤・シロップ剤などに分類されます。
内服薬の剤型によるそれぞれの特徴は以下の通りです。(ご参考までに。。。)
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〇錠剤:クスリの成分を錠剤の形に加工して固めた薬です。
そのまま固めた「素錠」の飲み難さや薬の吸収の改善を目的として、表面をさまざまな成分で覆った錠剤を「コーティング錠」といいます。糖分でコーティングした「糖衣錠」、薄い膜でコートした「フィルムコーティング錠」、この中には胃で溶けないで腸で吸収される腸溶剤などが含まれます。
また、最近では唾液で溶けるように作られた「口腔内崩壊錠(OD錠)」が普及してきました。
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〇カプセル錠:消化管内で溶けるゼラチンなどで作ったカプセルの中に薬剤がはいっている薬です。カプセルに入れることで飲みやすくしたり、薬を吸収させたい場所まで効率よく運ぶことができます。
カプセルの中身は顆粒や散薬(粉薬)だけではなく、液体が入っていることもあります。
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〇散剤・顆粒剤:散剤は”粉末状”、顆粒剤は”小さな粒状”の薬です。
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〇内服液剤・シロップ剤:内服液剤は薬の成分を水などの液体に溶かして作られた薬です。
シロップ剤はそれに甘みを加えて飲みやすくしたものです。顆粒剤に似ていますが、飲む前に水に溶かして服用するドライシロップ剤があります。
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一般的な自動分包機が扱うことのできる薬剤は錠剤、カプセル剤、散剤・顆粒剤・ドライシロップ剤などです。
実は、こうした多種多様な薬や組み合わせを、様々な”飲み方”や”飲む日数”で正確に分けて、それを一つ一つ袋詰めにするという手作業にはかなりの労力と時間が必要なのです。加えて、ミスも発生しやすい。
例えば、”3グラムの粉薬を一日2回の服用で二週間分に分ける場合”はどうでしょう?
3グラムの薬をきっちり14分割(1個当たり0.214グラム)して、それぞれ14枚の”分包紙”に入れて折り紙のようにひとつずつ折込む作業です。
このような手作業を様々な服薬のパターンで、正確に幾度なく行うことを想像できますでしょうか。。。
数十年前の自動分包機がまだ普及する以前は、手作業で調剤を行っていた薬剤師さんたちには多くの苦労があったようです。
このように、自動分包機の大きな役割は薬を一袋ずつ均等に分けるという手作業による調剤で発生する問題をなくして、大幅な省力化に貢献してくれることです。
つまり、調剤業務の縁の下の力持ちであり、人の薬局は言うに及ばず動物病院でも今やなくてはならない機器なのです。
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当院には現在、既に2台の自動分包機が稼働していますが、薬を受け取るまでの待ち時間の短縮と、調剤のために駆り出される獣医師などの作業量軽減ために、さらに3台目となる自動分包機を導入致しました。
今回、新規に導入した機器は湯山製作所の YS-Mini-R45 という機種です。(下写真)
この自動分包機の最大といえる特長は、従来の均等に薬剤を袋詰めにする機能に加えて散薬(粉薬)を機械に投入するだけで”分割と分包”を同時に行える全自動散薬分包機であることです。
お読みの方には、それって何の違いがあるの???と思われるかもしれません。
実は動物病院では”人間用の錠剤を砕いた粉薬”、としたもの、体が小さいための”とても少ない粉薬”、飲ませ易くするために”何種類も混合した粉薬”などのために薬の本来のパッケージを崩して、割ったり、粉にして調剤するパターンがとても多いのです。
動物病院で行われる調剤の特徴は、あえて言うならば人間の小児科に比較的近いかもしれません。ただし、動物医療の特徴から調剤のパターンはより複雑になります。
その理由とは、”より多種多様な薬”を使用すること、”より少ない調剤の難しい量”であること、小さいながら数倍~20倍以上の”患者さん毎の体重差があることです。
特に問題となるのは以下の点です。
つまり、従来の自動分包機(自動分割分包機)では調剤することの多い粉薬を自動的に分けることができないということです。
このため、あらかじめ粉薬を機械が均一に分割できるように装置の”Vマス”という粉薬を投入する”溝”に沿って丁寧に粉薬を均す作業が必要になるのですが、これが手作業なのです。
つまり、極めて少なかったり、体重ごとの様々な薬の量や粉薬ごとの性質の違い、またその混合物の扱いを熟練スタッフの”技と勘”に頼るような、いわば”半自動分包機”と言わんばかりの手間がかかります。
かといって、動物医療に従事する専業の薬剤師さんはまずお目にかかりませんし、調剤薬局へ院外処方するわけにもいきませんから、少しでも労力を軽くというのが動物病院共通の課題なのです。
以上が、動物病院でなぜ粉薬を自動的に分割できる装置が必要とされているのか、ということの答えでしょうか。
ところが、こうした機能を持つ自動分包機は今までは大型でコストの高い装置でしかありませんでしたが、製品の改良による小型化が進んだ結果、ようやく動物病院が導入できるようレベルになって参りました。
こうしたメーカーの開発力と技術力に感謝したいと思います。