しっぽ

待合室の水槽

当院の待合室に”新しい仲間”を加えるべく、2018年7月からおおよそ1ヶ月間かけて水槽を立ち上げてみました。

アクアリウム愛好家の間では水槽を準備して飼育を開始することを”立ち上げる”、という表現をするらしいので、早速使ってみました。。。何か新しいことを始めるぞーという、なにやらワクワク感のあるいい響きがします。

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今回、トライしてみたのは下の写真のように水槽の中で生き物を飼育して同時に植物を育てるという、いかにも”ロハス”的な雰囲気のある水槽の設置です。
用語的にはこうしたビオトープをかたちづくる水槽をハイドロポニックスもしくはアクアポニックス水槽などと呼ぶようです。

ところで、どんな仲間が加わったの?!、ということにご興味がある方はぜひ最後まで読み進んでみていただければと思います。。。

ビオトープ1.JPG
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さて、水槽の上になにやらたくさんの観葉植物やら水草が生い茂っているので、むしろ植物の栽培でもしているようにも見えますね。実際、水槽の目的は植物育成のこともありますが、今回の主役は水中に棲んでいる生き物たちの方です。

おそらく「ハイドロポニックス」という用語を聞いたことがあるという方はあまり多くはないのではないかと思います。
私もこのような水槽を設置をするまでは知りませんでしたが、つまりは植物を育てるために土壌を使わない栽培方法の「ハイドロカルチャー」とか「水耕栽培」のことを指すそうです。
最近では最新の植物工場などで水耕栽培されたレタスとか、ベビーリーフなどの葉物野菜が食卓に上がることも多くなりましたので、こうした植物の栽培方法は身近に感じられるのではないかと思います。

ハイドロポニックスでは植物を育てるために必須な”土壌”と”肥料”と””のうち、土壌の代わりに多孔質の特徴を持つゼオライト(沸石)や人工のセラミックを球状や礫状に加工したものなどが用いられます。
もちろん土壌のいらない水耕栽培とはいっても、水とそれに加える肥料を与え続ける必要があります。

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そこで、肥料をやる手間をなくせないか?ということで考案されたものが水耕栽培の発展系ともいえる「アクアポニックス」といわれるしくみです。

これは食用魚の養殖(アクアカルチャー)と野菜の水耕栽培ハイドロポニックス)を無駄なく、つまり”魚×野菜”を効率よく同時に育てようという目的のために考案された方法で、アクアポニックスとはそれら2つを掛け合わせた造語です。

こうした仕組みを観賞魚用の家庭用水槽に応用したものが、いくつか市販されています。今回はアクアリウム関連で有名な寿工芸の「レグラス」という製品を使ってこうした環境を作ってみることにいたしました。
アクアポニックス水槽内の水の循環のイメージは下図の通りです。

アクアポニックス.png
図は寿工芸株式会社のHPより転載いたしました。
>詳しくはこちらまで

アクアポニックス植物が育つための肥料の元になるのは、アンモニアやそれが水中に棲むバクテリアなどによって分解された硝酸塩などの窒素化合物です。

こうした物質は水槽内の魚などが排せつした糞尿や、食べ残したエサなどの腐敗したゴミの中にたくさん含まれており、水替えをしないで過度に蓄積してしまうとあらゆる水棲生物は生きていくことができません。(オシッコの中で泳ぎまわるイメージです。)

アクアポニックスとは魚などの飼育に伴う排泄物やゴミから出来る有害物質を水槽内の細菌などの微生物の力で、植物が利用できる肥料に変えてしまおうという都合のいい仕組みです

つまり、自然界の動物と植物の間で微生物の仲立ちによって行われている”窒素循環”を水槽内でやってしまおう、という小さなエコシステムと言えます。

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ところで、少々ご紹介が遅れました。。。

今回、新しい水槽の中で当院の仲間となったのは生後4か月のアルビノウーパールーパーが3匹です。
ウーパールーパーは魚ではなく、カエルなどと同じ両生類サンショウウオの仲間です。正式にはメキシコサラマンダーという強面な名前を持つのですが、ペットとして流通させるための商品名としてウーパールーパーという愛らしい通称がつけられたそうです。

ビオトープ2.JPG

ウーパールーパーは大食漢で大量の糞をするために、とても水を汚しやすい生き物です。さらに、この3匹はアルビノで視力が弱く、食べこぼした食べ物をなかなか見つけられないので食べ残しのなんと多いこと。。。

このため、こんなウーパーが3匹もいるような過密飼育の60センチ、15cm程度の浅い水槽の場合には、水の交換を頻繁にやらなければウーパー達が健康的に生活できる状態を維持することは通常はできないはずです。

余談ですが、よくウーパールーパーが瓶など小さな容器で売られているのを見ますが、そのような飼い方はお勧めできませんし、そんな環境でも飼えるなどという売り文句で勧めることは彼らにとって罪深いことなのです。

一般的には飼育には少なくとも一匹当たり3~40センチ程度の水槽のスペースと頻繁な水替えが必要とされています。

そんな理由で、頻繁な水の入れ替え予定していたのですが、驚いたことに普通の水槽では頻繁に必要な水替えの手間があまりかかりません。だいたい1ヶ月に1〜2回ちょっとで水を交換してあげればいいようです。
少なく見積もっても通常の4分の1くらいの頻度でした。。。

この理由はどうやら、”植物の根っこの環境”にあるようです。
つまり、根っこが天然フィルターの役割を果たしてすごい勢いで水をキレイにしてくれているようです。
ウーパーから肥料をもらう観葉植物の成長もやたらと早く、ちょくちょく剪定しないと葉っぱでスペースがすぐにいっぱいになってしまいます。

もし、レタスやら葉物野菜を植えていたらかなりな”収穫”があったであろうことは想像に難くないでしょう。。。
お互い持ちつ持たれつ、微生物植物動物への関係とか相互の影響力の大きさに改めて感心させられます。。。

下の写真は、あんまり見えないけれど”なんか食事が来そうだ!”というお得意のおねだりポーズです。(笑)

ビオトープ3.JPG

ご来院の際には、このキモカワな姿をぜひ見てあげてください。。。

ちなみに名前は大きい順に「ウーちゃん」、「パー」ちゃん、「ルー」ちゃんに決まりそうですが、未だに性別は不明です。

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文責:あいむ動物病院西船橋 
   病院長 井田 龍 

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