「猫用入院室」に新たに3室のケージを導入し、現在、稼働中の6室に加えて9室に増床いたしました。
入院ケージは入院時の治療はもちろん、数時間単位の長時間にわたる治療や観察、会計・調剤の待ち時間のための短期の預かり等に使用されます。
今回、導入致しましたのは動物病院の入院設備として信頼度が高いステンレス製(SUS-304)のケージです。(東京メニックス性デラックスケージ)
入院ケージは堅牢に作られているために、実はかなりの重量物です。
依頼品は標準品より幅が広いサイズオーダー品ですので、搬入の際にはドアを外したり内装に傷がつかないよう、壁や床を養生(保護)しながら一時間以上かけて作業が行われました。
6月後半のいい天気での作業でしたので、下の写真のように業者さんも汗だくの作業です。
写真では一見、笑っているように見えますが。。。
実は、重いケージを三段目まで積み上げて各々の四隅の”チリ””をキッチリ合わせつつ、壁との垂直となるように調節しつつ、さらに水平を保つために格闘中の場面です。
暑い中、大変お疲れさまでございました。
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よく知られている通り「ステンレス」は丈夫で水に強く錆びにくいため、とても耐久性が高い素材です。また、水拭きや水洗いで汚れが落としやすく、日常の清掃などのメンテナンスがやり易いという素材です。
このような特徴を持つことからステンレスは、建築用、自動車部品などの工業用、医療用の設備、器具機材、プロ向け厨房用品や一般向け家庭用品にいたるまで世の中で幅広く用いられています。
余談ですが、ステンレスにはその求められる使用目的、強度やコストなどの条件を達成するために原料の鉄にクロムなどその他の金属を混ぜたり、加工時の熱処理などの製法によって、例えばSUS-304,430,410……..などと型番表記された、たくさんのファミリーがいます。
ちょっと日本ステンレス協会のHPを覗いてみると、その数なんと約70種類もありました。びっくりです。
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ステンレスは動物病院の使用環境においても素晴らしい特長を持つ反面、ケージ素材としては壁も床も冷たい金属ですから、そのまま動物を入れてしまうと快適性や排泄物による衛生面で問題が生じます。
このため、当院では床に厚めの低反発マットレスを敷いた上にバスタオルとペットシーツの3層構造にしてステンレスケージの欠点をなくしてさらに快適性を上げる努力をしています。
またステンレス製ケージには内部の音が金属面で幾重にも反響して室内やその周囲に響き渡りやすい、という問題です。
つまり入院ケージは慣例的に、入院”犬”舎と呼ばれてきたということから容易に想像できるように、犬を”係留”するという目的のための利便性やメンテナンス性を長年発揮してきた製品なのです。このため、”ワンワン吠える”音や、”ドタドタ暴れる”振動が増幅して周囲に響いてしまうというのが欠点でした。
今回購入した製品はこうした防音性能にも構造上の配慮が行き届いています。
それはステンレスの壁が厚く音が反響しにくいこと、ケージを囲むステンレス壁の間を吸音処理してありますので、かなり防音性能に優れている点です。
もちろん猫はワンワン大声では吠えませんが、そういった防音性能の改善は外からの深い音を遮断し、ケージ内の静粛性がより増して猫ちゃんがより快適がになることにつながってくるでしょう。
(東京メニックス社のHPより引用:http://www.t-menix.com/)
上の写真のようにステンレスケージは猫の入院設備としても一般的です。現在は軽い樹脂製であるとか、耐久性のあるポリカーボネート製などが出てはいるものの、やはり何年にもわたる耐久性やメンテナンスのしやすさ、見た目のしっかり感もあり、ステンレス製が多く使われています。
猫に対する配慮としては下の写真のように犬用よりもケージの格子の幅を狭くしてあったり、特に取っ手の付近のピッチを狭くして内側からのいたずらや、取っ手を操作して開けてしまうなどの事故を未然に防ぐ仕組みが考慮されています。
上下左右に移動できるような通路を設置することができます。
下写真は「上下通路」です。
猫はより広いパーソナルスペースと隠れる場所を必要とします。
犬のように環境に対して我慢することも得意ではありません。とても繊細でストレスに弱く、そういった特徴が状態の悪化を見逃してしまったり、治療を難しくさせてしまう原因となってしまうリスクを高めてしまう、そういう動物です。
当院ではより適切な医療のために、猫へのストレスの少ない入院環境をはじめとする治療環境の構築に向けて、努力を続けていきたいと考えております。
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文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍