しっぽ

動物病院の”におい”

唐突ですが、自分がいる場所の”環境”の微妙な変化に気づくことはできますか?

実は自身の感覚が鋭いと自負する方からそうでない方も例外なく、実は人間の感覚というものは結構いい加減なものなのです。

しばらく同じ場所に居続けたり生活するような場合、自分の感覚がその環境に順応(じゅんのう)してしまい、例えば聴覚嗅覚であるとか、ややましなはずの視覚でさえそれが歪められて鈍ってしまう、そういうことです。

あまつさえ、人間は嗅覚をはじめとする感覚器官の感知能力においては哺乳類の中でも最下位を競っているのになんということでしょう。。。

とくに不快な刺激に対してこれは順応性というか”感覚のマヒ”というか、都合よく解釈するという人間の脳ミソの優れた働きの結果でもあるのですが、実際に起きている変化と自分の感覚のずれを起こします。

よく聞く、”茹でガエルの話”みたいなものです。

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前置きが長くなりましたが、テーマは動物病院の”臭い”と、これをどうやっつけるかということなのですが、もう少しだけ続きます。。。
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実は私、病院長ですが年に2回ほど、3-4日の長い休暇?をもらいます。
普段は連休はほぼなく、休むのは1日単位、出勤日は朝7時半からだいたい夜10時くらいまで病院に一日の半分以上は滞在しています。つまり、日ごろから職場の環境にどっぷりと浸かっております。

とある夏の朝からすでに”ムシムシ”と暑い日のことです。お盆休みを3日貰って、さあこれから心機一転、出勤だという場面です。

いつものようにまだ患者さんがいらしていない待合室の扉を開け、診察室の奥にあるいつもの居場所へと向かうのですが、もわっと表現できるような違和感、何だこの微妙なやつは?!と、ふと足が止まりました。

動物のもの?、いやいやウンチやオシッコの悪臭風味でもない、なんか古びた教室というか博物館のような臭いに、なにか混ざっているような微妙な臭い、がしてくるではありませんか。エアコンはすべて掃除したばかりだし、普段あまりない臭いだなぁと、考え始めるととても気になります。

ところが、何人かスタッフに聞いてみても???という反応でいつもと変わらないですよ、というものばかり。。。え、臭わないの?

待合室受付からまず診察室処置室入院室とうろうろしてみたのですが、動物の滞在時間と排泄物との接触が多い場所はこの順番に臭いが重り、微妙な変化を醸し出しています。まあ、決して悪臭ではないのですが微妙に気になる臭いです。

ところがどうでしょう、あれほど気になっていた臭いが30分もしないうちに、なぜかまったく何も気にならなくなってきてしまったではないですか。。。
おそらくこれが感覚の順応性というやつでしょうか。

これは、もしかしたらいつもこうなのでは?という疑念がふつふつと湧き上がります。

そして、こんなことを何度か経験して確信しました。やっぱり臭い!と。当院にどっぷりつかっている私やスタッフは分からないけれど、患者さんには分かるはず。。。
なんとかしなくては、と。
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そんなきっかけで、当院の「病院消臭計画」が発動したのが、今を去ること約8年前くらいのことですが、それが紆余曲折して現在に至ります。。。

その後、何年もかけては家庭用の空気清浄機から業務用のものまで、光速ストリーマナノイープラズマクラスターなど各社自慢の名だたる新技術は次々とお払い箱となっていきました。

さらに、オゾンがいいということで様々な家庭~業務用オゾン脱臭機、そして国内では違法なオゾンレベルを誇る中華製品、オゾン燻蒸機に至るまでいろいろな製品を使ってまいりました。

結果としてオゾン環境基準を危険レベルで上回らなければ効果が低いため、それなりの”高濃度”にする必要がありました。

すると、その酸化力ゆえに院内の壁や掲示物など、空気に触れるあらゆるものが一年足らずでボロボロになり、金属も錆びてしまいます。さらに、常時使用した場合、時折自らも息苦しくなるなど、何らかの健康問題を起こしそうな点で最終的には却下となりました。

その後、”次亜塩素酸”添加の加湿・噴霧装置が効果的だということでしたので数年使用しておりました。
確かに、次亜塩素酸の消臭効果は高く、冬場などは加湿器として兼用できましたので重宝いたしましたが、部屋の隅々まで入り込む噴霧器からの”モクモク”が内装や器具・機械などあらゆるモノの表面を塩素化合物の”塩”で粉を吹いたように真っ白にしてしまうなど、やはり使いにくいものでした。
さらに、”モクモク””を年がら年中吸い込み続けるのは、オゾンと同じような健康問題が懸念されましたので、やむを得ず使用を中止しました。。。

実は、消臭とか除菌をするという作用はオゾンにしても次亜塩素酸にしても、その能力の源は強力な酸化力なのです。
この酸化力はあらゆるものに作用して、分子レベルで見境なく”ぶっ壊す”、消臭作用はその結果なのです。怖いですねー。

つまり、使用方法を誤ると大事なものが痛んだり、健康問題を引き起こします。

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そして、今年初旬から使用しているのが、パナソニックの「次亜塩素酸 空間除菌脱臭機ジアイーノという製品です。おそらく、”ジア”エンソサンが”イーノ”という意味でしょう。製品の特長が分かりやすいのはいいことです。

まあ、ネーミングセンスはさておき、この空気清浄機も原理としては消臭除菌に強い作用を持つ次亜塩素酸を利用するものですが、室内にそれを無分別に放出するのではなく、機械の中だけで通ってきた空気を処理させる、というコンセプトです。
これにより、次亜塩素酸を人や動物が直接吸い込んだり、何かに付着して美観や安全性を損ねたりの弊害なく、その強力な脱臭効果をいかんなく発揮できる、とのことです。

当院には4つの診察室がありますが、このジアイーノを各部屋に一台というオーバースペックの状態で稼働させております。(下写真)

>パナソニック、ジアイーノのHPへ
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その結果はメーカーのネーミングの思惑通り、ジアイーノって結構イーノよ(笑)というのが半年使ってみての感想です。
使用の際に鼻を”ツンツン”するような塩素臭オゾン臭もなく、臭いだけが消失している感じです。もちろん、内装や器具機械への影響は皆無です。
おー、今消臭してるぞーという前向きな勢いはファンの回転が高くなる時以外はほとんど感じません。。。

自分自身の連休を何回か経て、”休み明けの臭い問題”も解決しているよう様です。以前ほど気にならなくなりました。

まだまだ、動物病院の臭いとの闘いはつづきます。。。to be continued…

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文責:あいむ動物病院西船橋
病院長 井田 龍

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