新年あけましておめでとうございます。
旧年中はたくさんの飼い主様と地域の皆様に支えられ、動物医療を通じて多くの動物達とのかかわりを持たせていただくことができました。
今年の子年、十二支の最初に数えられる年で新しい運気のサイクルの始まりです。成長に向かってその種が膨らみ始める年として、未来への大いなる可能性を感じさせてくれます。
当院は来月で設立12年目を迎えます。
本年度も常に初心を忘れずに地域に必要とされる動物病院であるように、気を引き締めてスタッフ一同努力を重ねてまいりたいと思います。
写真のスタッフは元旦出勤の獣医師一名、看護職二名です。お正月返上でがんばってくれています。
当院は「年中無休」を謡っておりますが、元旦と1月2日の一般外来は大変申し訳ございませんが、原則休診とさせていただいております。
しかし、わずか年2日の休診であっても、そこには継続して治療が必要な患者さんや入院中の患者さん、時には救急でいらっしゃる患者さんや緊急に手術が必要な患者さんが少なからずいらっしゃいます。
病院を開けない日、つまり外来を行わない日にも動物病院を機能させるために、こうした患者さんの受け入れや管理を行う必要があります。
多くの方には、”病院機能”と言われてもいまいちピンとこないかもしれません。
ちょっと話がそれますが、人間の医療では診療所(クリニック)から大規模な病院に至るまで、患者さんの病気の種類や程度により適切な医療機関にふるい分ける仕組みを取っています。
つまり、診療所は外来診療を中心に行い、対応ができない場合にはより専門性が高い大きな医療機関へという具合です。こうした仕組みを病診連携などと言います。
動物病院はそのほとんどが”街のお医者さん”と同じ診療所やクリニックの規模ですが、入院や手術、救急まで担う地域の病院としての機能を大なり小なり併せ持っています。
また、全科診療のため内科、外科などの診療科を問わずすべての科の患者さんを引き受けています。そういった意味でも小さい病院と言えるかもしれません。
言うなれば「病院機能の維持」とは、動物病院が世の中になんのために存在するのかという問いかけに対し、仕組みとしての人間の医療のような病診連携を持たない獣医師が共有する不文律みたいなものかもしれません。
これは医療サービスとしての利便性の追求とは一線を画するものであると思います。
当院では、設立以来こうした行動原則に則った運営を経営目標に常に置いておりますが、今後も維持し続けて参りたいと考えております。
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ところで、昨今の動物医療に携わる人材確保の難しさと、”働き方改革”をはじめとする法体系の変化により、今まで自他ともに当然視されていた”動物病院のありかた”の基本理念が法的、経済的な側面から揺らいでおり、年余にわたりかたちづくられてきた仕組みの維持が次第に難しくなってきています。
”働き方改革”は人間の医療でも、医師は労働者か否かという驚くべきスタートラインから問題提起されて昨年大きな論争を引き起こしましたが、結局は”建前”と”現実”の乖離が激しく、複雑な利害関係も影響して結論が出せませんでした。
その結果、一般には認められない長時間残業を医師に課してもかまわないという真逆の決定を下し、あろうことか当面は労働基準法の適応としないという”超法規的”な選択をすることでその決定を先延ばしにしています。
末端に法に基づく取り締まりを行う労働基準監督署を持つ本社の厚生労働省ですが、なんとも恐るべし自己矛盾です。
もちろん、医療機関ではない”一民間サービス業”とされる、動物医療を担う獣医師にはそのような特例はあろうはずもありません。獣医師は労働者であることは疑いの余地はありませんが、動物医療でも本質的には人間の医療を矮小化したレベルでの問題を抱えています。
実は獣医師には医師でも近年問題となっている応召義務という、依頼された診療を自ら断わることができないという義務がありますが、我々の場合には働き方改革での上限残業の扱いに関して、そんな義務などまるで存在しないがごとくの扱いです。。。
つまり、分かりやすい極論として、目の前で危機に瀕している患者さんに対峙した獣医師が残業になるから、タイムカードを切ったからと追い返すことができますか?という類いの問題です。
それはもはや法律論云々ではなく、倫理的には自明の理でありましょう。応召義務と照らしても説明のつかない矛盾が生じます。
法的な問題を回避するため、多くの動物病院では優先度の高い経営課題として、受付時間の短縮や休診日を増やすなど、労働時間の短縮により規制回避を行うこと自体を目的として、人件費増加と収入減少を天秤にかけて経済的な側面から経営判断せざるを得ないという現実があります。
しかし、こうした内向きの理屈では、”病院機能の維持”という視点や、上記のような法律と倫理面の矛盾をいかに最小化するかという視点が欠落してしまっているように感じます。
当院ではその答えとして「病院機能を維持する」という原則を守るために、現状の仕組みを人員増により維持して、法的規制の回避を目指すという経営判断に至りました。
その結果、規模や収益が変わらない中で同規模の動物病院よりも過大な人件費を抱えるという動物病院経営の上での危険な域に踏み込みつつあるのが気がかりではありますが。。。
まあとにかく、何とか働き方改革の元での「病院機能の維持」には一応の先鞭をつけることができました。経営面、スタッフの運用面での不安要素は大きいですが、あとは前進あるのみです。
年頭のご挨拶のつもりが、元旦に働くスタッフを見ているうちに少々脱線してしまいました。乱筆乱文にて失礼いたしました。。。
文章中、2枚の写真のお正月アレンジメントは当院の患者様から頂いたものです。この場を借りてスタッフ一同、御礼申し上げます。。。
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あいむ動物病院西船橋
病院長 井田 龍