>>>ウサギの乳腺炎について?
偽妊娠や授乳中のウサギにみられる乳腺に生じる炎症です。過剰な乳汁分泌の影響や衛生環境が悪い、床材が不適切であったり、乳腺や乳頭の外傷などを原因として、連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、パスツレラなどのさまざまな種類の細菌が乳腺内に侵入して感染することによってより引き起こされます。
>>>ウサギの乳腺炎の症状とは?
乳腺に硬結(シコリ)、熱感、腫脹(腫れ)、紅斑(皮膚の赤み)などが観察されます。多くの乳腺炎は乳腺に限定的なものですが、乳腺炎が拡大して重症化してくるに従って痛みや不快感など、さまざまな症状が現れます。元気や食欲の低下がみられたり、重度になると沈鬱(ちんうつ)や発熱、食欲消失、嗜眠(しみん:衰弱などで常に寝たような状態になること)に至る可能性があります。
また、乳腺炎の原因となっている細菌が血液によって運ばれて全身への感染症を生じた場合には敗血症(はいけつしょう、感染への抵抗が失われること)を起こして死に至る可能性さえあります。
>>>ウサギの乳腺炎の診断は?
身体検査で乳腺炎を疑ったら、乳房の圧迫などで乳腺から出てくる乳汁を含む滲出液を採取して顕微鏡検査を行って診断いたします。乳汁がでなければ注射針で乳腺組織を吸引して細胞診を行って診断することができます。
採取された乳汁に対してはできるだけ細菌培養を行って細菌の特定と細菌感受性検査を実施して、効果が予想される抗生物質の選択を行った方がよいでしょう。
>>>ウサギの乳腺炎の治療は?
乳腺炎の原因となる細菌に対して、効果の見込める抗菌スペクトラムの広い(幅広い細菌に対して効果を持つ)抗生物質を選択して全身投与を行います。
脱水や衰弱を等の全身状態の悪化を防ぐために輸液を行い、食事量の低下を補ったり、ウサギにおいて重要な胃腸運動の低下を防ぐために、食事の介助や強制給餌を積極的に行います。また、乳腺の痛みが予想される場合には鎮痛薬を使用するなど、ウサギの全身状態を悪化させないように支持療法を組み合わせて治療いたします。
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文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍