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腎結石(尿管結石)

>>>犬の腎結石(尿管結石)とは?———————————————-

まず、尿路結石とは?
尿路結石のひとつ、尿路の一番上流に位置する腎臓腎盂、じんう)でつくられる尿路結石のことです。尿には体に余分なカルシウムリンマグネシウム等の塩類などのほか、体に不要な代謝産物などの老廃物が溶け込んでおり、尿はそれを運搬して排泄させる役割を持っています。

この尿中に溶け込んだ様々な物質がなんらかの理由で、水に溶けない状態になって「尿路に溜まった石のようなもの」が尿路結石です。犬でみられる腎結石尿管結石のほとんどはシュウ酸カルシウムから成る結石です。

尿路結石はその問題を起こす部位に応じて、腎結石尿管結石膀胱結石尿道結石と呼び方が変化します。尿路結石が引き起こす最大の問題は尿路閉塞です。これは上流でつくられた結石が下流の狭くなった尿路閉塞を生じるもので、腎結石尿管結石となり尿管閉塞を生じます。また、膀胱結石尿道結石となり尿道閉塞を生じるといった具合です。
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下の二枚の写真は6歳のウエル・シュコーギーでみられた両側性の巨大な腎結石レントゲン写真です。「おにぎりのような三角形」のような2つの大きな塊が腎結石、腎結石腎盂(つくられた尿が溜まる場所)をほぼ占拠して腎臓を内側から強く圧迫していました。
写真は静脈性尿路造影のもので、腎臓から膀胱に白い筋状にみえる尿管と白い卵型に見える膀胱も一緒に造影されて写っています。この腎結石は将来的な腎機能不全のリスクが高いため、両側とも手術により摘出いたしました。ここまで結石が大きく育つのは稀なことですので、腎結石の極端な例としてご覧ください。

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>>>腎結石(尿管結石)の症状とは?———————————————-

腎結石そのものには初期にはあまり症状を伴わないのが一般的です。原因のよく分からない血尿を繰り返すなど、尿異常腎結石診断するきっかけになることもありますが、無症状健康診断腎臓病検査の過程でレントゲン検査超音波検査で偶然発見されます。
腎結石のなかには尿管に落ち込んで尿管結石となり、様々なパターンで尿管閉塞を生じて急性腎不全をはじめとする命に関わるレベルの緊急疾患を引き起こすことがあります。

尿管結石尿管を完全に閉塞した場合には激しい腹部痛を起こる可能性がありますが、犬ではこういった痛みの把握は難しいこともしばしばです。元気食欲がないだけであまり症状がないように見えることも多いものです。腎結石は両側に同時にできることもあり、それらが同時期に相前後して尿管閉塞を生じる可能性もあり、この場合には突然の無尿乏尿に伴って腎不全による尿毒症などが発症する可能性があります。

 

>>>腎結石(尿管結石)の診断は?———————————————-

レントゲン検査によって結石の大きさや形、個数、おおよその位置関係を確認することができます。さらに超音波検査によって、結石の正確な位置や周辺の腎盂尿管内での尿路拡張閉塞の有無を確認できます。超音波検査尿管拡張がみられたり、閉塞が疑われる場合には、静脈性尿路造影が行われることがあります。この検査静脈から造影剤注射して、臓に集まって、尿管から膀胱へと流れる造影剤の流れの有無やその変化を確認するレントゲン検査です。

レントゲン検査により腎臓尿管結石が見つかった場合、さらに超音波検査によって結石の正確な位置関係とそれが周囲に及ぼす影響を評価します。下の2枚の写真は超音波検査の画像です。尿は左から右写真方向に「黒い管」として見える腎盂~尿管の中を流れます。

 

>>>腎結石(尿管結石)の治療は?———————————————-

小さな結石に対しては定期的な尿検査超音波検査などで経過を観察しますが、血尿尿路感染症腎炎、腎機能障害を疑う異常があればそれに応じた治療を行います。

腎結石は大きくなると、腎臓を内側から圧迫して腎機能に悪影響を与えますので、腎切開によって摘出が必要なこともありますが、そのような大きな結石の発生はあまり多くはありません。腎結石が引き起こす問題の多くは、数ミリ~1センチ未満の大きさになった腎結石尿管に移動し生じる、急性から慢性経過をとる様々なパターンの尿管閉塞です。

尿道結石尿道という体の外に出る管での問題ですから、体外から結石除去を試みることができます。ところが尿管閉塞はお腹の中ですから手術以外の方法で結石に到達することができません。内科的に結石尿管から膀胱へ落とすためには利尿薬などを組み合わせた点滴療法自然排泄を図りますが、単独では決して確実な方法ではありません。

 

>>>腎結石(尿管結石)の予防は?———————————————-

膀胱尿道などの下部尿路疾患に生じるシュウ酸カルシウム結石対策のための療法食に切り替えるのはあまり効果がないとされています。利尿作用を期待してさまざまな種類の利尿薬漢方猪苓湯(ちょれいとう)などを使用して尿量を増加させて水分摂取を促す場合もありますが、サプリメントなども含めて腎結石には確実な薬物による予防方法は残念ながらありません。

 

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文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍

 

 

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