皮膚組織球腫

>>>犬の皮膚組織球腫とは?

犬の皮膚にできる組織球腫はその特徴から非常に特殊な腫瘍として知られています。その理由は犬の組織球腫と同じような特徴を持つ腫瘍が人間をはじめとする他の動物では存在しないためです。

組織球腫は、さまざまな腫瘍ができやすい高齢犬よりも平均3歳半前後の若齢犬での発生がはるかに多いという点おいても他の腫瘍とは異なります。また、雄での発生がより多く、雑種よりも純血種で多いという傾向もみられます。

皮膚組織球腫の原因とその特徴的な振る舞いにはウィルスをはじめとする何らかの感染が関与しているという予想もあるようですが、ウィルスやその他にも考えられる病原体は特定されておらず、感染の可能性も含めてその発生原因は不明なままです。

 

>>>皮膚組織球腫の特徴は?

皮膚組織球腫は表面が艶やかな無毛で時に潰瘍を伴う、きれいな赤色ドーム状病変を形成します。頭部や四肢、胸部の皮膚でそのほとんどは単独に発生して急速に直径1~2cm程度まで成長しますが、時には4cm近くなることもあります。

この極めて速い成長と細胞診での顕微鏡検査でみられる悪性所見から悪性腫瘍を強く疑わせる様相を呈しますが、多くは自然退縮する傾向がある良性腫瘍です。
下の写真は前肢の肉球の脇に発生した直径おおよそ1.5cmの皮膚組織球腫のものです。この腫瘤組織球腫であるという外見的な特徴をよく表した写真といえるでしょう。

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>>>皮膚組織球腫の診断は?

その多くは若齢での発生であり、そういった患者さんの年齢的な特徴や経過、その独特な腫瘍の形状から皮膚組織球腫を予想することができます。針生検による細胞診を行うことができれば特徴的な類円形細胞顕微鏡で確認して、診察室で組織球腫と診断されることが多いと思われます。
下の写真の例では数日以内に写真のような腫瘤を形成しました。急速に大きくなる経過というのもこの皮膚組織球腫の大きな特徴です。

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>>>皮膚組織球腫の治療は?

自然退縮することが期待できるという特異な性質を持つ腫瘍のため、組織球腫であるという診断後に数週間程度の経過観察をすることが多いものと考えられます。この腫瘍はワンちゃんに特別に不快感を与えるものではないとされていますが、頭部や脚先など外部と接触の多い場所にできやすいため、舐めたりかじるなどの自己損傷を起こすことがあります。

皮膚組織球腫は急速に大きくなり、目や、鼻、耳周囲など頭部の美観に関わる部位にできやすいということと、退縮するまで意外に時間を要してしまうこともあるため、ケースバイケースで外科的摘出します。こういった手術ではサージカルマージン(腫瘍組織と正常組織との間隔)をあまりとらない切除治癒させることができ、通常は再発することがありません。

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文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍

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