>>>ウサギの慢性腎不全について
「慢性腎不全」とは様々な原因や過程を経て腎臓に回復不能なダメージが期間をかけて積み重なった結果、腎臓の持つ重要な機能のうち「老廃物の排泄機能」、「水分調の節機能」、「塩類の調節機能」のいずれかもしくは複数の機能が低下するか失われた状態をいいます。
慢性腎不全は生まれつき腎臓が不充分な機能しかない形成不全から生じることもありますが、そのほとんどが長期にわたる腎炎などによる慢性腎臓病や老齢の結果生じます。
ウサギで長期にわたる腎疾患の原因として、腎結石、細菌感染をはじめとするさまざまな腎炎、尿路閉塞、腎毒性を持つ薬物や食品、腎臓を侵す腫瘍増殖などがあり、犬猫での慢性腎不全とも類似点があります。
ウサギに特徴的な問題としては、細菌性腎炎の起炎菌としてのパスツレラ菌(Pasteurella multocida)による感染や原虫のエンセファリトゾーン(Encephalitozoon cuniculi)による寄生虫病によって起こる肉芽腫性腎炎が挙げられます。その他、アミロイドーシスという代謝病の結果、腎臓にアミロイドという代謝でつくられたゴミが溜まった結果、腎不全が生じることもあります。
>>>ウサギの慢性腎不全の症状は?
食欲減退や消失で痩せてきたり、元気がなくなって全身状態が悪化している中高齢期のウサギや、飼い主さんが異常に気付かず、健康診断などで脱水や栄養不良等の健康問題を指摘から血液検査を受けて発見されることがほとんどです。
特有の症状はあまり見られませんが、腎不全に関わっている排尿障害や粘度の高い泥状尿を排泄する高カルシウム尿症などがみられることもあります。同時に胃腸運動の問題や栄養不良、脱水を起こしていることも多く、食事量の減少や硬いものを食べられないことによる過長歯などを伴うこともあります。
>>>ウサギの慢性腎不全の診断は?
なんらかの原因で全身状態が悪化しているウサギに対しては血液検査が行われるため、腎不全はこうした検査の際に予想される慢性病のひとつとしてみつかることがほとんどです。
腎臓から排泄される老廃物の代表的指標のBUN(尿素窒素)上昇で判断される高窒素血症やクレアチニンの上昇で診断を行われます。その他、高リン血症、高カルシウム血症がみられることもあります。
腎不全の診断と同時に塩類の指標となるナトリウム、カリウムなどの電解質や、慢性腎不全に伴って見られる腎性貧血の評価を行い、治療の計画を立てます。
ウサギでは犬猫で実施可能な早期の腎不全を診断する検査は難しいのが現状であり、さらに慢性腎不全の初期症状は捉えることが難しいため、発見は遅れがちになります。中高齢期では定期的な尿検査や血液検査を実施してその兆候をできるだけ早く捉えることが必要と思われます。
>>>ウサギの慢性腎不全の治療は?
ウサギでは腎不全の早期発見が難しく、慢性腎不全の診断の際にはかなり進行していることも多いため長期的な見通しはあまり楽観的なものではありません。治療は定期的な皮下輸液や食事の介助、胃腸運動の維持などの支持療法を行い、下痢など合併症が起きた場合の対症療法を適切に行います。
支持療法が奏功した場合には良好な安定期間が得られることがあります。慢性腎不全の治療は症状をできるだけ軽減して、生活の質が失われないように、この安定期間の維持を目標に行います。
慢性腎不全は基本的には通院ないしは在宅での治療となりますが、重症度が高く、ウサギのストレスの問題を回避できるのであれば入院治療がより望ましいこともあります。
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文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍