涙嚢炎(るいのうえん)

>>>ウサギの涙嚢炎とは?

涙嚢とは内眼角(眼頭)の上下に開口する涙点~涙小管に通ずる涙道の一部です。涙点から涙小管を通り、涙嚢に達します。涙嚢は目から流入してくるを貯めて下流の鼻涙管に押し流すポンプの役割をしています。

涙嚢炎は上流の涙小管や下流の鼻腔に通じる鼻涙管から侵入する細菌感染の波及によって生じる炎症によって引き起こされることが多いといわれています。鼻涙管炎症細菌感染上顎臼歯歯根部鼻涙管への干渉や歯根膿瘍による圧迫炎症の波及などによる鼻涙管狭窄閉塞から生じる他、呼吸器感染症鼻腔からの波及も考えられます。

涙嚢炎の起炎菌にはパスツレラ(Pasteurella multocida)黄色ブドウ球菌などの感染が考えられていますが、これらはウサギの鼻涙管での正常細菌でもあるため原因となっている細菌の特定は難しいと考えられます。

 

>>>ウサギの涙嚢炎の症状とは?

白色調~半透明の粘液性~粘液膿性眼脂(目やに)が目の周囲に付着します。下眼瞼付近を圧迫すると白色調の漿液~粘液膿性の液体が涙点から排泄されます。炎症性ないし、この粘液性眼脂によって上流の涙小管や下流の鼻涙管が閉塞するた涙が涙点から鼻腔に通じることなく溢れてしまう流涙症を伴うこともしばしばです。

涙嚢炎には涙液排泄のための環境が悪化するため、涙嚢炎と相互に波及し合う結膜炎角膜炎を併発している場合が多くみられます。

 

>>>ウサギの涙嚢炎の診断は?

流涙症などを伴い、抗生物質内服点眼薬による治療であまりよくならない持続的な目やにがみられる場合には涙嚢炎の疑いがあります。(下写真黄、色丸の中)
特徴的な粘液膿性の「目やに」や下眼瞼付近の炎症皮下腫れを伴い、圧迫によって白色調の粘液膿性の液体の排泄があるとか、試験的に鼻涙管洗浄を行って涙嚢に溜まった膿性物質が排泄されれば涙嚢炎と診断することができます。

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>>>ウサギの涙嚢炎の治療は?

抗生物質の選択を行うために、可能であれば膿性物質から細菌培養を行い、起炎菌を特定して抗生物質薬剤感受性試験を行います。

定期的な鼻涙管洗浄を繰り返し行い、感受性試験などから抗生物質の点眼と内服を組み合わせた治療を行いますが、治療には長期間かかったり、再発を繰り返すケースもしばしば見られます。

再発防止や予防には併発する結膜炎鼻涙管閉塞呼吸器疾患、歯科疾患などのコントロールや、眼を清潔に保ち涙液の排泄環境を清潔にするということが重要でしょう。

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文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍

 

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