>>>犬の子宮腫瘍について
メス犬の生殖器系の腫瘍の多くは外陰部や膣にできる良性腫瘍やポリープであり、子宮由来の腫瘍はあまり多くはありません。この理由は不妊手術によって子宮摘出されているメスが多いということの表れと考えられます。子宮の腫瘍で最も多いのは人間の子宮筋腫に該当する平滑筋腫でおおよそ9割弱で、さらにその悪性のかたちの平滑筋肉腫が1割程度でほとんどで子宮癌は稀です。
>>>犬の子宮腫瘍の症状は?
子宮の腫瘍は極端に大きくなったもの以外にはあまり症状が出ることはありません。管状の子宮内腔を閉塞するようなかたちであれば膣からのさまざまなかたちの分泌物がみられたり、合併症として子宮蓄膿症や子宮水腫がみられることがあります。
下の写真は不妊手術(卵巣子宮摘出術)で偶然見つかった子宮の良性のポリープですが、黄色矢印の部分で子宮の内腔をふさぐように成長して子宮水腫を起こしていました。
子宮腫瘍はお腹の中で極端に大きくなり、占拠性の腫瘤を形成して他臓器を圧迫して排尿や排便の異常などを生じる可能性があります。また、外見上は腹部膨満による外見上の変化や呼吸の変化がみられるかもしれません。
>>>子宮腫瘍の診断は?
不妊手術(卵巣子宮摘出術)を行っていない雌犬の場合、腹腔内に何らかの腫瘤が見つかった場合、それが子宮や卵巣などの生殖器から発生した腫瘍である可能性を考えなければなりません。子宮腫瘍をはじめとする生殖器腫瘍は乳腺腫瘍や子宮蓄膿症、子宮水腫などの併発疾患が多くみられるため、これらを持つ犬では同時に生殖器腫瘍の可能性を考える必要があります。
一般的に腹腔内の腫瘤が触診された場合、腹部レントゲン検査や超音波検査を行ってより詳しい診断を行います。超音波検査は腫瘤の大きさや臓器との癒着を含む位置関係やその発生した臓器の特定と手術適応や予想される問題などを明らかにすることができます。
>>>子宮腫瘍の治療は?
子宮腫瘍のほとんどが通常は何ら症状もないため、その多くは子宮蓄膿症の手術時や乳腺腫瘍などの手術に付随して行われる卵巣子宮摘出術に際して偶然に発見されるものです。こうした腫瘤は卵巣子宮摘出と同時に除去されるため治癒することがほとんどです。
下写真が高齢犬での不妊手術で偶発的に見つかった約3cm程の子宮腫瘍の例です。腫瘍は卵巣子宮摘出術で完全摘出されました。
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文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍