>>>ウサギのツメダニ症について
ウサギツメダニ(Cheyletiella parasitovorax)の寄生によって生じます。このダニはウサギの表皮の角質層に寄生します。ウサギ同士の接触によって感染をしていきます。ウサギツメダニはウサギだけではなく、感染動物と接触する可能性のある人間にも感染して皮膚の発赤や掻痒(そうよう:痒み)を起こすことがあるため、人獣共通感染症として注意が必要です。
>>>ウサギのツメダニ症の症状は?
ウサギツメダニは健康なウサギではグルーミングによりある程度除去されるために症状がないか、軽いフケ程度のことが多くみられます。しかし、加齢による不活発化や肥満よるグルーミング不可範囲の拡大、歯科疾患による口の動きの制限などをはじめとする、何らかの理由でグルーミングの頻度が落ちた場合に発症しやすくなってきます。
ウサギツメダニの寄生がよくみられ、皮膚症状が多いのが肩甲骨に挟まれた頸背部です。余談ですがこの頸背部はもともとグルーミングの難しいエリアですから、ノミやダニのスポット剤の滴下部位として最適な場所でもあります。
症状が出ている場合には落屑(フケ)に加えて脱毛、皮膚の発赤、痂疲(カサブタ)を伴うさまざまな程度の掻痒(痒み)です。
>>>ウサギのツメダニ症の診断は?
ツメダニ症のウサギには落屑(フケ)が特徴的にみられます。このフケを採取して顕微鏡で観察して、ツメダニが見つかれば診断となります。下はウサギツメダニ症の頸背部の特徴的な皮膚病変の写真です。
>>>ウサギのツメダニ症の治療は?
ツメダニの駆虫にはセラメクチンの滴下剤やイベルメクチンの経口投与、皮下注射などを用いて複数回にわたる治療をいたします。補助的に病変部位を中心にシャンプーによる薬浴を行って痂疲(カサブタ)の除去などを行うことも症状の軽減のために効果的かもしれません。痒みが非常に強い場合には副腎皮質ステロイド剤を短期間使用する場合もあります。
同居のウサギがいればツメダニ症の治療中には接触を避けて生活します。セラメクチン滴下剤は投与も簡単ですから、同居のウサギにも感染の疑いがある場合には予防的なダニの駆虫を実施したほうが良いでしょう。
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文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍