しっぽ

「ごはん」の工夫あれこれ

こんにちは。介護ブログ担当の小泉です。前回のコラムからだいぶあいてしまいました。。。

今回はワンちゃんの介護の問題のひとつ、「ごはん」を食べないけどどうしよう?、というテーマを取り上げてみました。誰でも実行しやすい簡単なポイントと注意点をまとめてみました。
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今回は高齢犬介護の現場での「ごはん」の工夫のあれこれについてお話ししようと思います。
と言いましても、栄養バランスがどうの、とか手作り食の極意とか、小難しい話ではありません。 いつものご飯を食べてくれないときにできる、ちょっとした工夫、ティップスをお話しようと思います。

よく、ワンちゃん、ネコちゃんが、いつものご飯を食べなくなると、 「うちの子グルメなの。」 「舌が肥えちゃって。」 と思いがちですが。。。

ところで、ワンちゃんが味を認識する舌の表面にたくさんある味蕾細胞は、人間に比べ、とても少ないそうです。 なんと、人間は約9000個、ワンちゃんは約1700個、ネコちゃんに至っては約500個ということです。

これが何を意味するかというと、ワンちゃんにとって重要なのは人間ほど味につい良い興味をそそられるということではないということなのです。ワンちゃんのグルメと人間のグルメはその世界観?がまったく異なります。
ワンちゃんは、匂い>食感>味>見た目の順でそのごはんがおいしいものなのかを吟味していると言われています。
つまり、工夫するポイントは味はもちろんですが
それ以上に「いかに匂いを強くし、好きな食感にしてあげるか」です。

以下にポイントをまとめましたのでご覧ください。。。

〇まず温める
ご飯を38~40度くらいに温めると、香りが増して嗅覚が刺激され、食いつきが良くなることがあります。  電子レンジで10〜20秒くらい温めるだけなので、とても簡単です。  ただし、必ずご飯を与える前に指を入れて熱すぎないかチェックしてください。  ※ドライフードのままレンジで温めると、かなり熱くなる危険があり、温度のチェックもしづらいのでおすすめしません。  ※下の写真はふやかしたドライフードです。

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〇器を変えてみる
器の材質によっても違いが出るようで、 プラスチック→ステンレス→ガラス→陶器 の順で最もご飯の香りに影響を与えないと言われています。(つまり陶器で食べるのが一番おいしい) ステンレスはさびにくいですし、割れる心配もなく、とても使いやすい材質ですが、わずかな金属が水に溶け出しますので金属臭がフードにうつるようです。

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〇ふやかしてみる
ドライフードであれば、ぬるま湯を足して、少し柔らかくしてあげたり、ミキサーで粉砕し、水分を足すとウェット缶のようになります。 このやり方なら、多めに水分も取れますので、中々水を飲まなくて困っている子にはおすすめです。 作り方を後で詳しくご説明します。

〇手であげてみる
ワンちゃんは飼い主さんの手が大好きです。 また、器だとフードがつるつるスベってうまく食べられないことがありますが、手ならうまく運ぶことができます。 たまに、間違えて(?)手の皮をかじられることがありますので、そんな時はスプーンなどを使うと良いです(^-^) スプーンは、シリコンスプーンが使いやすくてお勧めです。 強く噛んでしまっても口腔内を痛めません。 育児グッズや介護グッズの場所に売っています。

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〇口を広げて、顎関節をストレッチしてみる
老犬になると関節がかたくなってきて、自然に開口できなくなってきます。体のその他の関節と一緒ですね。 無理のない範囲で、少し顎関節を広げてストレッチしてあげると良いです。

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お顔のマッサージもおすすめです。

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〇トッピングをしてみる
アレルギーなどの心配がなければ、トッピングをしてみてください。 ササミを入れたり、その煮汁を入れたり。 好きなおやつを細かく砕いて振りかけても良いです。 もちろん、ウェット缶を混ぜるのが一番楽ですが、最初から多く混ぜるとお腹を壊す可能性がありますので、少しずつにしてください。

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〇まず、一口だけ口の中に入れてみる
少量を口の上顎に塗りつけて、まず一口食べてもらう。 これがきっかけになって食欲が出てくることがあります。 人でも、胃が少し気持ち悪い時に、スープを一口飲んでみたら意外に食が進んだという経験もおありではないでしょうか。体に問題がある場合 には一口食べて、それだけで吐いてしまうこともあります。 これはやはり異常な可能性がありますので、動物病院に行って頂いた方が良いと思います。

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〇水分の補給を心掛けてみる
身体が脱水していると、それだけで全身状態が悪くなり、食欲減退につながることがあります。 一日に必要な水分量は、食べる量にもよりますが体重1キロに対して40〜60ccが必要量だと言われています。 意外と飲んでいるように見えてもほとんどの老犬さんは実は必要水分量が摂取できていないのではないでしょうか? 必要な水の量は必要カロリー数と同じくらい大事な目安です。常に必要水分量が摂れているかを気にかけてみてください。

〇「気持ち悪い」可能性を考えてみる
少しポイントがずれますが、これも大事なことです。 例えば慢性腎不全の場合は胃が常にムカムカしている場合があります。 胃酸を抑える薬、吐き気を止める薬など、適切な薬を処方してもらう必要があります。

〇「痛みがある」可能性を考える
またずれますが、これも老犬さんには多いです。 「痛み」は老犬さんにとってかなり身近な問題になります。 腰の痛み、関節の痛み、歯の痛みなど全身の可能性があります。 慢性的な痛みは、相当なストレスです。 どんな工夫をしても全く食べない場合、どこかに痛みがある可能性を視野に入れてみてください。

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ところで、「ごはんを食べない」ということに関連してですが、食事が減るとそれに伴って水を飲む量も減ってきてしまいます。脱水については上の注意事項で書いた通りですが、食べものの栄養を利用して排泄するためにも水は必ず一定量は必要ですから、食事量だけを維持すればいいというわけではないんです。。

そこで、必要な水の量はざっくりと計算するとだいたい1カロリーあたり1ccという計算になるようです。なかなか水を飲まないというワンちゃんのために水分をよく摂れるご飯を紹介します。

今、私達の施設に18歳のラブラドールレトリバーの子がいますが、 彼には一日1500cc弱の水分が必要ですが、寝たきりなため、中々難しいです。 そこで、160グラムのドライフードをミキサーで粉々にし、500ccの水分を含ませて食べさせています。 この方法で朝夕の食事だけで1000ccの水分が摂取できます。

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なんだかめんどくさそう・・・と思ってしまうかもしれませんが、 毎日やってみると意外に慣れるものです。 ドライフードを粉砕することで、身体への吸収率もUPします。 このご飯で18歳の寝たきりの子や、15歳の柴犬ちゃんが、着々と体重が増えていくのを見るとうれしくなります。彼らの食欲があるおかげもありますが、シニアの子の体重を増やすのは何か一つでも工夫をしないとなかなか難しいものです。

シリンジで給餌する方法ももちろんやることはありますが、出来る限り、自分で口を開けて、食べ物を舌で運ぶ動作をさせるようにしています。 「自分で食べているんだ!」という自信を持たせてあげることも大切な気がします。

今回も長くなってしまいました。。。 最後までよんで頂いてどうもありがとうございました。このブログでごはんにお困りになっている飼い主さんの参考になれば嬉しいです。

それではまた次回。。。

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小泉ひさの

トリマー、動物看護師

 

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