シニア犬のための床材

こんにちは。いつもコラムをご覧いただきありがとうございます。 当コラム担当の 動物看護師の小泉です

前回は「介護に必要な床材」というテーマ、寝たきりの子の床材を床ずれ防止の視点でお話をさせていただきました。
今回はそのパート2です。シニア犬たちの日常生活の場における床材とその周辺環境に着目いたしました。
今回は、足腰が弱ってきたシニアワンコたちが安全に生活できるための床材etc.をご紹介いたします。

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実は、シニア犬の床材選びというものは個々のワンちゃんの生活習慣運動能力などによりさまざまな対応方法があります。つまり、我が屋のワンコの状態に合わせて、その都度ケースバイケース、工夫する努力が必要になります。

〇シニア期に向けて

老いるということは今まで普通にできていたことが、条件を整えなければできなくなったり、同じような行動がリスクを生むようになってくることです。
だからと言って今までの生活環境を大きく変えるのは高齢犬にとって大きなストレスとなると思いますし、実際それは飼い主さんにとっても難しいのではないでしょうか。今までの環境から危険な場所、パターンを見つけ出してひとつづつリスクを少なくしていく努力をしていけばいいと思います。

高齢期になるとワンちゃんには認知能力の衰えに加えて、「筋肉量の低下」や変形性関節症などによる「痛み」や「関節の動きの制限」などから様々なかたちで運動能力の低下がみられるようになってまいります。

関節に負担のかかる生活は年を重ねるごとに少しずつ改善していきましょう。若い時と同様にツルツル滑る床で走り回ったり、階段の昇り降りで滑ったり、高い段差を無理にジャンプしたり、いつまでも気持ちは若いころのままですが。。。

体が動きにくくなっても、ワンちゃんの性格や習慣はなかなか変えられません。
飼い主さんが帰宅したのが嬉しくて、一気に階段を駆け下りて落下したり、ソファから大ジャンプをしたり、さまざまな折に腰や関節を不意に痛めてしまう。

例えば、段差を飛び降りてしまう癖のあるワンちゃんにはソファ等の段差を埋めて滑って落ちないような器具(ドッグステップスロープ)を自作されるとよいかもしれません。

お忙しい方には市販されているものもありますのでそれを利用するのもいいでしょう。たくさんの種類があります。
⇒ おすすめのドッグステップ10選
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また、既存の屋内階段もシニア犬にとっては意外に危険な段差となり得ます。滑り止めマット(左下写真)を敷いたり、ベビーストップベビーフェンス(右下写真)を流用して、危険な場所にワンコが入らないようにしたり、階段からの落下によるケガを防いであげましょう。

シニア犬必要な床材A.jpg babystop.png

〇足裏のお手入れ

ここで、床材の話題からは脱線してしまいますが、肉球が覆われるほど足の裏の毛がボーボーに伸びていてたり、伸び放題の長い爪は床での転倒の危険性が高まるばかりではなく、関節運動にも悪影響を与えて痛みを悪化させたり、疾患そのものを進行させてしまう可能性さえあります。
まずはとにかく、目先の危険防止のためにこまめにケアをしてあげてください。

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〇その抱き方は大丈夫?

また、ワンちゃんの抱っこの仕方によっても関節筋肉靱帯(じんたい)を痛めてしまうことがあります。特に小型犬ではワンコの前方から両脇に手を入れたり、両腕を掴んで全身を抱き上げている姿をよく見かけます。もしかしたらお心当たりある方も多いのではないかと思います。
この持ち上げ方は年齢を問わず問題が大きいのですが、特に右写真の方法は危険です。筋肉の衰えた高齢犬ではなおさらに肩関節背骨の大きな負担がかかってしまいます。

抱っこするときは、声をかけながら。。。特に高齢期では肩と腰を複数の支点で体重を文させて、しっかり包み込むような安定させた抱き方を意識してみてください。ワンちゃんにも安心感を与えられるはずです。

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〇シニア期での足腰の衰え

ワンちゃんは、前足と後ろ足の体重比重が7:3のため、後ろ足の筋力から衰えていくといわれています。また、人間と同じように高齢化に伴い背骨の「柔軟性」がなくなってしまい、お腹側に腰が前のめりに曲がってしまい、後ろ足の動く範囲が狭くなるのもその原因です。

後肢の衰えを見るポイントとして、後ろ足の歩幅が狭くなったり、アスファルトの上などを歩いた時に後ろ足を引きずって歩いていたりします。(ズッズッと爪を擦る音が聞こえます。)男の子の場合は足をあげておしっこをしなくなることもあります。

後肢が衰えてくると床の上で滑って転倒したり、階段から転げ落ちてしまったりするリスクが格段に上がりますので、お留守番時はケージ内をお勧めします。

ケージ内の床材は、滑りにくい素材が望ましいです。ジョイントマットや、ヨガマットなど活用される方も多いですが、必ず四隅をしっかり止め、床材が簡単に動かないよう、柔らかい素材ではたるまないようにしてください。

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下写真のような「たるみ」で転んでしまったり、後ろ足に毛布が絡まるワンちゃんが非常に多くみられます。
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また、かわいそうかもしれませんが、側で見ていてあげられない場合は、ベッドを置くのもお勧めしない場合があります。
ベッドに段差があるだけで転倒し、隙間でもがいてしまう可能性があります。

〇ひたすら歩いてしまう

認知症などで、徘徊するようにひたすら歩き続けるワンちゃんがいます。
この行動は本当に飼い主さんを悩ませますし、解決策もその子に合わせて手探り状態です。
ワンコが満足するまで、部屋内やお外を歩かせてあげたり、サプリやお薬を使って落ち着かせてあげたり。。。
ただ、徘徊するワンコに多いのが、歩きたいけど、自分では起き上がれなくて、手足をバタバタさせて傷や床ずれを作ってしまうことです。
このときにすべりにくい素材の床材を使っていると摩擦力も強いので一気に傷ができてしまい、短時間で褥瘡(じょくそう、「床ずれ」のこと)となってしまいます。
ですので、この場合の床材は滑りにくい素材よりも、生地が柔らかいものを優先しています。この時も四隅をしっかり固定して、たるまないようにしてください。

わんちゃんに夜にぐっすり寝てもらうために、昼間見てあげられるときは思いっきり歩かせたい。また、ある程度放っておけて安心なのが、ビニールプールを使う方法です。
この方法ではワンコがどんどん歩いてしまって狭いところにはまり込んで身動きができなくなることを防ぎ、歩き疲れたら必ずプールのどこかで寝ることができるために危険な場所に立ち入ることがないという利点があります。

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ビニールプールなら、中身は空気ですから頭などぶつけても痛くありません。もしかしたら、お子さんの使っていたお古が屋根裏に眠っていたりするでしょうし、最近では意外に安価で購入できます。
先日3COINSのお店に行きましたら、直径90cmのビニールプールがなんと、500円で売っていました。小型犬なら充分に対応できる大きさですよね。

こういった床材の工夫は、私達のような老犬介護に携わる者が考え出すというより、飼い主様が日々、試行錯誤したものを教えていただいて、実践し、改善点があれば直していって。。。というプロセスで出来上がったアイデアがほとんどです。

その情報共有もネットなどを利用すればさほど難しくない時代になりました。
高齢犬との楽しい生活に向けてぜひぜひ、皆さまもお知恵を出し合っていただければ幸いです。。。

ではまた。

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トリマー、動物看護師 小泉ひさの

AIM ANIMAL HOSPITAL NISHIFUNABASHI
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