2022年も残すところあとわずかとなりました。
いつの間にやらあと2週間足らずでクリスマス本番ですね。
新型コロナウイルスによる外出自粛の影響の余韻はまだまだ残りつつも、街にはクリスマス一色な景色が戻りつつあるように思います。
ところで、日本での最初のクリスマスは、かの有名なフランシスコ・ザビエルが来日した時代、江戸時代が始まるちょっと前の西暦1550年くらいにまで遡るそうです。
この時代はというと、キリスト教徒がまだキリシタンなどと呼ばれていた大昔です。。。
もちろん現在の”商業的クリスマス”とは似ても似つかない純粋な宗教的習わしであったのでしょうが、それを無理やりつなげると、我が国における”クリスマスみたいな風習”には意外に長い歴史があるといことなんでしょうね。
現代の我々はというと、毎年毎年、同じような風景の中で同じようなメロディーを聴き、LEDやプロジェクションマッピングなどで年々パワーアップするイルミネーションで街のあちこちが彩られる中、あたふたと消費生活に翻弄されるわけですが。。。
まあ、イブの夜は年々賑やかさを増していますが、日本人による日本人のためのクリスマスの原風景みたいなものはここ数十年はあまり変わってはいないようです。。。
今年も、ああ年末だなー、大晦日に向けてあと少しで今年も終わるという感傷的なボルテージが一気に高まり始めるタイミングでもあります。
この辺りで本題に入りたいと思います。。。
動物病院には師走、特にクリスマスからお正月の年末年始にかけてのイベント最盛期にはやはり、いつもと違うパターンで患者さんがいらっしゃいます。
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特にクリスマス前後から大晦日、年明けにかけて頻繁に見るような、実にさまざまな原因による大小の胃腸のトラブルや問題を訴える患者さんが明らかに増えるのですが、今回はこの切り口で考えていきたいと思います。
「胃腸の問題」といってもその程度はいろいろです。軽い嘔吐、下痢などの軽いものから、直ちに内視鏡検査(胃カメラ)を要するような事例、骨や食材が異物となって生じる腸閉塞を筆頭とする急性腹症で開腹手術に至る重症例まで実に幅の広いものなのです。
こうした胃腸の問題を全部引っくるめた、最初の”嵐”が「クリスマスイブ」にやってきます。
我々、獣医療関係者にとっては、何やら不謹慎ではありますが、”サンタが街にやってくる♪”などという曲とともに病気や事故もやってくる、とでも言いましょうか。。。
では、クリスマスに起こりやすいこうしたトラブルの原因とは何でしょうか?
まず、この時期には動物達(人も)が普段食べないような、扱いなれない”贅沢な食べ物”が家庭内にどんどん持ち込まれること、それにつきます。
また、小さな子供達が学校から解放され、家庭内に戻ってくるということもそれに拍車をかけるかもしれません。
クリスマスには動物達には魅力的で、場合により危険な食品やその廃棄物が家庭に溢れかえります。アルコールも入って、ついついその場の盛り上がりやノリで、まあいいだろうとつい色々なものをあげてしまう機会も飛躍的に増えるでしょう。
いつもより盛りだくさんのテーブルからこぼれ落ちるご馳走、ゴミ箱に入ってもなおその魅力を失わない残り物、脇が甘く格好の標的となる子供達、酔いが回ったお父さん、など直ちに問題を生じるようなトラップがたくさん仕掛けられています。
イブの夜には、クリスマスチキンなどの骨類や肉のカタマリやクリームなどの高タンパク&高脂肪、大量の砂糖類など、いつもと違う一風変わった食材や調味料など、その原因には事欠きません。そもそもの食べ過ぎも相まって嘔吐、下痢、腹痛などの胃腸トラブルが数多く発生します。
また、生ケーキなどのデザートなどに含まれるチョコレートやナッツ類、アルコール類などによる中毒なども増えます。
まず、クリスマスチキンをはじめとする骨を含む残飯の盗食に細心の注意を払いましょう。
実は骨だけではなく、クリームがついたケーキの包装やろうそく、クリスマスプレゼントの犬用おやつやオーナメントもこの時期に消化管閉塞などの原因としてありがちな異物です。
事例として多い鳥骨はその大きさや形状から、慌てて食べた小型犬種で特に咽喉頭部(のど)や食道に詰まりやすく、食道閉塞などをはじめとする命に関わる急性の消化管閉塞を引き起こす可能性があります。
こうした場合、異物となった骨の除去のためにクリスマスイブの夜に緊急の内視鏡や手術を要する確率は相当高くなります。
過去の関連記事で食道閉塞に関して説明してありますのでご興味のある方は当院過去ブログをご覧ください。
>危険な食道閉塞に関して
また、食道を通り抜けるくらいには小さくなった鳥の骨などの異物をある程度含むものを一気に食べ過ぎると、胃運動の低下や胃液の不足によってこれらを充分処理できずに急性胃拡張を起こすことがあります。
さらに、そうした胃で処理しきれない食事の塊や骨などを含む胃内容物が時間の経過とともに下流の十二指腸以下の小腸閉塞を引き起こす可能性もあります。
最悪の場合、急性胃拡張の治療のために、緊急の麻酔下での胃洗浄や胃腸切開などの外科手術に追い込まれる可能性もありますし、手術に至らずとも急性膵炎や、入院が必要になるような重大な消化器疾患の合併症つながることもしばしばですので、くれぐれご注意を。
また、普段食べ慣れていない高脂肪、高タンパクの食材だけが問題を起こすだけではありません。通常の食材でも、食べ過ぎによって思いがけないような激しい急性胃腸炎や急性膵炎の原因となりますので、食事量が増えやすいこの時期には特に注意を払って頂きたいと思います。
次に犬猫に危険な食材として有名なチョコレートですが、クリスマスシーズンのチョコレート中毒(テオブロミン中毒)には実はバレンタインデーの時期と同様にしばしば遭遇します。
英国での調査研究ではチョコレート中毒の発生はクリスマスになんと平時の4倍も増えるという調査結果が出ています。
もともと12月には我が国でも欧米には及ばないようですが、チョコレートそのものの消費もバレンタインデーで大量消費される半分くらいまでには増えるということです。
加えて最近ではクリスマス用のケーキも生クリームたっぷりのいちごケーキ以外の選択肢も増えました。
製菓用チョコレートで作る愛情、カカオマスともにたっぷりの手作りチョコケーキはかなり危険ですし、市販品の贅沢に生チョコを大量に使用したものなども多く出回っていますので、ご家庭ではくれぐれもご注意ください。
少量だからと、ついついあげてしまったりしてしまいがちですが、実は小型犬では容易に中毒量〜致死量に達しやすく、命に関わる事例もしばしば生じます。特に最近多い体重が2キロ以下のチワワやトイ・プードルなど小型犬種で重い中毒症状を引き起こし、死亡率が高くなる傾向がありますので注意が必要です。
ちょこっと目を離した隙に大型犬でホールケーキをまるごと、小型犬でもビックリするくらいのことがありますのでご注意を。。。また、少数ですが猫での事例もあります。
チョコレート中毒に関しては過去の記事がありますので参考になさってください。
>チョコレート中毒とは?
ここまで長文を最後までお読みになっていただき、ありがとうございました。
皆様にとって楽しいクリスマスと幸せな新年が訪れますように!