>>>ウサギの乳腺腫瘍とは?
ウサギでの乳腺腫瘍は嚢胞(のうほう)性乳腺炎から進行して起きることが多いといわれています。こういった乳腺の嚢胞状の病変をつくる、炎症を伴う乳腺嚢胞は乳腺腫瘍のリスク因子となる可能性があります。
また、細菌感染を受けて炎症を起こしている乳腺腫瘍は乳腺炎が悪化して皮膚が自壊するなど、しばしば重症化した乳腺炎との区別が見た目では難しい場合があります。
>>>乳腺腫瘍の症状とは?
乳腺に腫大(腫れ)を伴うような塊状の腫瘤が見られます。腫瘍が大きくなってきたり、ウサギ自身が気にしてこすったりすることによって表面の皮膚が自壊してクレーター状の潰瘍(かいよう)をつくっていることがあります。
乳腺腫瘍が腺癌(がん)など、悪性腫瘍である場合には周囲の乳腺リンパ節や腋下リンパ節、肺などに転移を起こすことがあります。乳腺がんが肺に転移した場合、ウサギは胸郭(きょうかく、肺や心臓を入れている空間)が狭く、もともと呼吸にあまり余力がないため、呼吸状態が急速に悪化しがちです。
>>>乳腺腫瘍の診断は?
乳腺に何らかの腫瘤の塊や腫れがみられた場合には乳腺炎、乳腺嚢胞、乳腺腫瘍を区別するために針生検による細胞診が行われます。細胞診は診断の上でのあいまいさを含むため、腫瘍が疑われる場合には摘出を行った後の病理検査で最終的な診断を行います。
>>>乳腺腫瘍の治療は?
乳腺腫瘍の摘出は腫瘍本体だけではなくその周囲の正常な乳腺に対して最小にして充分なサージカルマージンを確保するよう行います。腋下リンパ節や乳腺リンパ節など周囲のリンパ節は疑わしい場合には摘出します。卵巣子宮摘出術(不妊手術)は可能であれば同時に実施したほうがいいと考えられます。
———————————————-
文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍