診療コラム
 

動物愛護法について

動物愛護を規定している法律があるということ自体をご存知の方は多いと思います。
今回のテーマは動物愛護とそれを取り締まる法律についてちょっと掘り下げてみました。何とも堅いお話かもしれません。。。

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現在の我が国における犬猫等、飼育動物の動物愛護を規定する法律は「動物の愛護及び管理に関する法律」です。

この法律は「動物愛護法」や「動物愛護管理用法」もしくはやや古い呼び名の「動管法」など、この法律に関わる動物愛護、行政、ペット産業など、法律を見る立場によって異なる名称で呼ばれています。(当ブログでは動物愛護法とします)

そもそも、この法律の前身となった「動物の保護及び管理に関する法律」はその特徴として各種産業や行政に対しての規制を行うための「産業法」としての性質を持っており、現在の動物愛護法にもその特徴が色濃くみられます。

つまり、動物愛護法は初めから”動物愛護ファースト”の法律として生まれたものではありませんでした。

我が国における動物愛護法は、動物の管理や規制に重きを置く既存の法律に、時代が求める動物愛護の精神を加えつつ、順次改正を重ねてバージョンアップしてきた法律であるという歴史があります。

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動物愛護法は基本原則として、すべての人が「動物は命あるもの」であることを認識し、みだりに動物を虐待することのないようにするのみでなく、人間と動物が共に生きていける社会を目指し、動物の習性をよく知ったうえで適正に取り扱うことを求めています。

また、飼い主はその責任として、動物の種類や習性等に応じて、動物の健康と安全を確保するように努め、動物が人の生命等に害を加えたり、迷惑を及ぼさないこと。
みだりに繁殖することを防止するために不妊去勢手術等を行うこと。
動物による感染症について正しい知識を持ち感染症予防のために必要な注意を払うことなどを定めています。

さらに、動物が自分の所有であることを明らかにするための措置を講ずること、動物の所有情報を明らかにするためにマイクロチップなどの装着を推進しています。
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>動物愛護管理法の概要について

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冒頭にも書いた通り、動物愛護法は1973年に成立した「動物の保護及び管理に関する法律」を元にしていますが、当時はまだ現在のような動物愛護への意識の高まりや議論が成熟していない時代でもあったのでしょう。
法律の趣旨は動物愛護に重きをおいた国民意識の向上というよりも、むしろ、行政などが動物をどう管理し、扱うかという実務面に主眼が置かれていたようです。

昭和のバブル景気の第一次ペットブームを経て、時代の変化とともに飼育動物は愛玩動物(ペット)から伴侶動物コンパニオンアニマルと呼ばれるようになってきました。
これは飼育動物への向き合い方がより深く多様化して、人生における伴侶や家族、かけがえのない友人という位置づけで、人と共生する飼育動物のあり方が定着してきたという変化の表れといえるでしょう。

動物愛護の概念の変化による時代の要請を受け、さらに”国際的にも通用する法律”を目指して1991年に改正された法律が現在の「動物の愛護及び管理に関する法律」、すなわち動物愛護法なのです。

また、各地方自治体でもこの動物愛護法の成立を受けて「動物の愛護及び管理に関する条例」が制定されているのはご存知でしたでしょうか。
当院のある千葉県でも2016年に「千葉県動物の愛護及び管理に関する条例」が施行されており、各自治体レベルでの動物愛護に関する規定と罰則を設けています。

>千葉県動物の愛護及び管理に関する条例

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動物愛護法では第44条に「動物の所有者」は適正飼育と保護など、動物の適正な取り扱いに努めなければならないと規定されています。
また、愛護動物をみだりに殺し、傷つけたものは最高で2年以下の懲役、または200万円以下の罰金、様々なネグレクト等の愛護動物の保護、管理の放棄やその他虐待、遺棄に対しては100万円以下の罰金が科されることになっています。

また、我々獣医師に対しては第41条では、業務上、みだりに殺されたり傷つけられた、もしくは虐待を受けたと思われる動物を発見した時には都道府県知事やその他関係機関への通報を促しています。

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念願の動物愛護を前面に謡う法律は施行されました。法律を実効性のあるものとするためには、しかるべき行政の「関係機関」に執行を委ねなければ十分な効力を持たせることはできませんが、ところがこれが早々に問題となりました。

つまり、どこがこの法律を執行するのか?ということです。
法律が機能するためには法律にある通報すべき「その他関係機関」とはいったい”どこ”で、通報者が”どのように”手続きを踏めばよいのかという手順が明らかになっていなければなりません。

当然、わが国には「動物保護監督署」なんてものはありませんから、こうした法律違反を懲罰ないし逮捕権を持って取り締まることができる「署」は警察署だろうと容易に想像できるのですが、法案成立直後しばらくは警察との連携がうまくいっていたとはお世辞にも言えない状況だったようです。

警察以外ではどこでしょう?国、地方自治体に関わらず「〇〇所」という組織があまり期待できないのはご想像のとおりです。

法律はその執行の手順があいまいなままだといわゆる”ザル法”になってしまいますが、広い意味でも狭い意味でもわが国にはそのような法律があらゆる分野に見られます。
よく例に出される政治資金規正法売春防止法、パチンコなど賭博関係の無法状態など挙げればきりがありませんし、動物関係であれば狂犬病予防法がそうした法令に該当するかもしれません。

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2012年の動物愛護法改正では、こうした点も考慮してか、警察との連携がようやく盛り込まれました。
これに伴って法律の執行に関して警察庁から各道府県警察警視庁に通達が出されているようですが、それでも残念ながら実際には現場では事件や犯罪として扱われることもなく、文書にさえ残らないという問題が生じていました。

その後、再び2016年に動物の殺傷、虐待、遺棄などが考えられる場合の 警察の対応を求めるための指針「愛護動物の対応要領」が警察庁から各都道府県警察宛てに出ています。
警察の現場レベルでは動物愛護法違反は犯罪であるという認識がまだ薄いというのが現実ではあるのですが、警察の統計資料では動物虐待事犯の「検挙事件数」に関しては統計がある平成22年以降、確実に増え続けているようです。
平成29年(2017年)に68件という数字はまだまだ不十分なものかもしれませんが、今後のより適正な法の執行を期待できるデータであろうと思います。下記に「警察庁生活安全局」の統計資料を示します。

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愛護動物の対応要領」では、下記に該当するような事例があった場合に、警察がどのように対応するべきかが分かりやすいチャート形式になっています。動物虐待が疑われるような個々のケースにおいてその対応が警察官に十分に周知されていない場合、警察が執行すべき業務の基本事項として提示できるのではと思います。

警察庁から各都道府県宛てのお達しですから警察官に職権を行使していただく上で、ある程度の効力を期待できるのではないでしょうか。

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我が国はいわゆる「法治国家」です。
しかしながら、行政が直面するさまざまな問題や利害関係などへの”忖度”による不作為、ないし作為による法律の不適切な運用が残念ながら様々な分野でまかり通ってしまっているのが公然の事実ではないでしょうか。

こうした行政のヤル気、状況次第による法律の運用はその在り方として望ましいとは到底言えませんが、こうした状況の改善を当事者の行政任せにしても何の解決にもなりません。

一般市民の方々はもちろん、動物愛護法に通報の努力が明記されている我々獣医師などの関係者は特に無関心であってはならないと思います。それが直ちに物事に変化を与えるものではないにしても、こうした問題に対して関心を持って見守っていく、という姿勢を常に忘れてはならないでしょう。

動物愛護法で謡われている理念や決まり事、罰則が十分機能せず、ただ条文に書いてあるだけの「放置国家」ではあってはならないと思うのですが、皆様いかがお考えになるでしょうか?

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文責:あいむ動物病院西船橋
病院長 井田 龍

サルコペニアとは?

今回のテーマは動物医療におけるサルコペニアについてです。
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サルコペニア」という言葉を見聞きしたことがあるよと言う方は、実際、医療関係者以外では、おそらくかなり少ないものと思います。まだ、メディアなどでも取り上げられることはほとんどなく、あまり聞きなれない言葉でしょう。

実際、ホラー映画のタイトルのようなポジティブ感のない綴りも相まって、ほとんどの方が何やら”よからぬもの”を連想されるのではないかと思います。
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サルコペニア」とは、ギリシャ語で"sarx,sarcoサルコ"という"筋肉"を表す言葉と、"peniaペニア"という"欠乏、減る"を意味する言葉を組み合わせた、ギリシャ語由来の造語で1989年に人間の医療において提唱されました。
こうした言い回しは医学用語でよくみられる造語のルールで、例えば、”白血球が減る”の意味のLeuko-penia(白血球減少症)などと同じ様式です。

つまり、サルコペニアは直訳すると「筋肉減少症」のことです。

歳をとる、病気になる、偏った生活習慣などによって体重の減少をはじめとして、体の様々な機能が落ちて人体が衰弱に向かうということには誰しも納得ができるのではないでしょうか。
こうした身体機能の低下のうち、「筋肉の質」と「量の減少」に関して医学的な問題、つまり疾患として着目したものがサルコペニアの考え方なのです。
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もちろん、若い時はまだしも、歳をとれば誰しも当然、筋力も筋肉も落ちるわけだから、どこまでが正常でどこからが異常なのか、なんとなくモヤっとさせられるのが正直なところかもしれません。

では、サルコペニアと呼ばれる状態が正常な「老化現象」と異なる点はいったいどこにあるのでしょうか?

多くの方にとって「筋力の低下」や「筋肉量の減少」は自然な老化現象の一部であり、ほとんどが疾患として捉えるほどの問題ではありませんが、このサルコペニアは単なる「老化現象」にとどまりません。

サルコペニアの疾患としての考え方は、階段の上り下りなどごく当たり前の”日常生活に大きな支障を生じる、深刻な症状を伴う筋肉の減少”という、”運動を司る臓器”としての「機能不全」を特徴としています。つまり、体の最も大きな”臓器”の問題でもあるのです。

実際、筋肉は体の活動に欠かせない基礎代謝を担い、そのエネルギーとなる糖質代謝や体の老廃物となるアンモニアの処理を行なっていることが知られています。これは肝臓と同じ仕事をこなす、まさに臓器としての振る舞いです。

つまり。。。

サルコペニア ≒ 臓器不全
という図式が実質的に成り立つと考えることもできます。

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さて、ここで私たちの動物医療の現場ではどうでしょう。

動物医療においても患者動物の高齢化がものすごいスピードで進行しています。人と比べて寿命が長い猫でも20年前後ですから、単純計算で人間の5〜10倍のスピード感です。

このため、人と同じように「老化」や様々な「病気」の症状衰弱をきっかけに急速に筋肉量を減らし、人間の医療でのサルコペニアとそっくりな状態に陥っていると思われる動物達にはかなりの割合で遭遇します。

もちろん、その病気の”かたち”は人のものとは若干異なりますが、発生の仕組みは人の高齢者と根本的な原因に大差はなさそうです。

もちろん経験を積んだ獣医師は、サルコペニアとはいかなる現象であって、どのように悪化して何が起こるかということに関しては充分に理解しています。
それにも関わらず、動物医療では疾患としてのサルコペニアは用語そのものの認知度も含めて、まったく浸透していません。

動物医療では過度の筋肉減少が引き起こす現象がまだ疾患として定義されておらず、それ自体が大きな問題なんだという共通の認識はまだありません。
その理由は病気などで”筋肉が減る”ということが当たり前すぎて問題点として掴み所がない、つまり単純に灯台下暗しというところでしょうか。。。
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単にサルコペニアという現象面だけを見るならば、これは医学の長い歴史で常に患者の傍にあり続けた問題であり、1989年になって突如として”新たな脅威”が出現したわけではありません。
つまるところ、病気になれば体は痩せて、その機能を失うという誰でも知っている当たり前の現象でしかないのです。

実は、人間の医療でこのサルコペニアがクローズアップされてきた背景には、近年の”先進国”での高齢化による医療のあり方の変化が大きく影響を及ぼしています。

ざっくりすぎで怒られそうですが、昔から医学の発展とは人類を脅かす疫病、つまり感染症との戦いの歴史と言ってもいいくらいのものです。
近年では、感染症の原因となる様々な病原体の特定やその仕組みがどんどん明らかにされ、主に抗生物質の進化を中心とする治療薬の進歩により、その脅威は表面上は過去のものになりました。

そして、生活環境が格段に良くなった先進国では、その後にやってきた高齢化の進展による慢性疾患や”がん”などの病気医療の主戦場が移りました。
今でも世界的にも医療のあり方が高齢者をターゲットとして変化を遂げている真っ最中であり、特に我が国のように同時に少子と高齢化が進むような国家ではより顕著でしょう。

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実は、高齢者が医療の大勢を占めるようになったということと、サルコペニアの問題は切り離すことができません。

高齢者はそもそもの活動レベルが低い状態ですから、病気や怪我をしたり入院するなど生活環境の変化によってサルコペニアのリスクが格段に高まります。
つまり、それにまつわる問題は「医療コスト」だけではなく社会へ及ぼすコスト、高齢者という大きな集団が生み出す問題として連鎖して社会問題へと変化します。

実は、世の中では医学の問題というのは個々の患者の「病気」や「治療」という本質にして枝葉の問題だけに留まらず、むしろ政治や国の福祉、財政、経済の問題だったりと直結していますからこれは当然のことでしょう。

つまり、このサルコペニアという現象を医学的な課題として対処しないと、巡り巡って高齢者が中心となる医療がうまく回らないよという警鐘として、20世紀末でのこのサルコペニアの定義は先見性に富むものだったのではないでしょうか。

例えば、現在大きな問題となっている認知症骨粗しょう症も重症化する患者さんが社会的な問題となって初めて、これが重大な疾患であると世の中に広く認識されるようになっている、こうしたことと同じような構図でしょうか。

社会への影響を持たない”個”のみの動物医療での切り口と、高齢期医療の主体となる”膨大な人間集団”が起こす社会問題としての視点からのサルコペニアへの切り口は、そのスタートラインからして全く違うものであるのは当然でしょう。
患者さんの個々の問題の枠を超えてそれが社会の問題となり得るかどうか、こうした点からも動物医療のこの問題への無関心は、さもありなんという感じを受けます。
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ちょっと話が脇に逸れてしまいました。
次に人でのサルコペニア一次性(原発性)二次性という分類についてです。

一次性サルコペニアとは加齢性サルコペニア年齢以外に明らかな原因が考えられないものを指します。また、何らかの原因に連なって生じるとされる、二次性サルコペニアは下記の3つに分けられます。

●「活動量に関連するサルコペニア
 ・ベッド上安静、不活発な生活習慣
 ・体調不良、重力の負荷がない状態

●「疾患が関与するサルコペニア
 ・進行した心臓、肺、肝、腎などの臓器不全
 ・炎症性疾患、悪性腫瘍、内分泌疾患などの基礎疾患

●「栄養が関係するサルコペニア
 ・摂食不良、消化吸収不良、食欲不振など

実際にはサルコペニアとは単なる”加齢現象”のみではなく、その多くが問題となる要因が複雑に組み合わさって”二次的”に生じる傾向があるようです。

さらに、加えて体の細部のメカニズムまでを考慮すると、下記のようなたくさんの要因が、サルコペニア発症の候補としてあげられます。
ちょっと専門的で見難いところもありますが、サルコペニアというものがいかに多くの因子によって起きているのか、ということを分かって頂けるのではないかと思います。

・身体活動度の低下
・栄養(たんぱく質)不足
・筋たんぱく質の同化抵抗性
・骨格筋幹細胞の減少、活性化不全
・運動神経と支配下にある筋線維の減少
・神経と筋線維の接合不全
・酸化ストレス
・炎症の存在(TNF-α,インターロイキン6)
・ホルモンの影響(成長ホルモン,IGF-1,DHEA)
・インスリン抵抗性
・ミトコンドリア機能低下
・アポトーシス(細胞死)
・ビタミンD欠乏と上皮小体ホルモンの過剰
・筋肉への血流量低下
・骨格筋幹細胞の活性化因子の低下?

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サルコペニア治療予防法に関しては、人では「運動負荷」や「栄養学」の側面からのアプローチが多数なされており、これらを組み合わせることが効果的だということが分かっています。
しかしながら現在のところ、上記の表にあるようなサルコペニアのメカニズムをコントロールするような薬物による治療法は、まだ人の医療分野でも確立されておりません。

人の医療では歩けなくなる前にサルコペニアの進行を止めるため、歩行に必要な筋肉を鍛える必要があり、特に筋肉に負荷をかけながら行うレジスタンス(抵抗)運動が有効であるとされています。
ここでのレジスタンス運動とはいわゆる、”筋トレ”のイメージです。

動物には日常生活の中での自発的な”筋トレ”は困難ですので、いわゆる老犬介護整形外科疾患治療の一環として行われるようなリハビリの手順が有用と思われます。
また、入院環境での寝たまま、同じ姿勢での安静を極力避けるような、さまざまな配慮が必要となるのはいうまでもありません。
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栄養学」の面からは高齢や病気による食事量の低下を極力補うために、食事のカロリーコントロールをしっかり行って栄養の不足に注意して食事を絶やさないこと、特に筋肉を作り出す元となる、たんぱく質を豊富に含む食品の摂取を増やすことが効果的です。

「骨格筋量」「筋力」「身体機能」の維持は、高齢期に不足しがちなたんぱく質の摂取量に深く関係していることが知られています。

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ほとんどの犬や猫などの伴侶動物は年齢や活動量などによって栄養組成、カロリーなどが規格化されているペットフードという「加工食品」を常食としています。
本当にペットフードだけでいいのかとか、その”必要悪”な側面はここでは一旦置いておきます。。。

ところで、こうした現実は裏を返せば、”よい面”として食事の多様性がない分、人では難しい厳密な栄養管理カロリーコントロールがむしろ行いやすい環境にあるということでもあります。

実際に多くのメーカーが治療用ペットフードである、食事療法食の分野で「年齢」「疾患」「生活環境」「嗜好性」により適応した、より優れた製品の開発にしのぎを削っています。
このため、現在では食事療法食の製品の幅は広く、獣医師の治療方針に寄り添いつつ、さまざまな条件の患者動物に合うような食事療法食を選択することができます。

サルコペニアのように筋肉の減少を起こしている高齢動物に対して、食べることや排泄に問題がなければ、人の基準のように、まずは”高たんぱく・高カロリーであるという条件を満たす療法食が考慮されることが多いだろうと思います。

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(※)高たんぱく・高カロリー食の一例

ただし、腎臓病をはじめとする疾患の罹患率が高い高齢動物での高たんぱく食を選択するには前もって医学的な評価が必要ですし、まざまな理由で”高たんぱく食”が適用とならないケースも多発します。
特に消化吸収能力の落ちている高齢、もしくは潜在的に消化器疾患を持っている可能性がある動物への高たんぱく・高脂肪な食事は下痢嘔吐などの問題を生じやすい傾向があり、些細な食事の変更であっても充分な注意を払う必要があります。

(※)食事療法食の選択は治療行為の一環として治療と不可分な関係にあります。その選択にあたり、獣医師の知見や助言を前提に設計されている製品ですので、不適切な使用を防ぐために必ず動物病院でご相談ください。

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サルコペニアに対して食事以外からの栄養的なアプローチとして、「運動療法」と合わせて必須アミノ酸の補給が有効ではないかとされています。
これは加齢により、食事だけでは体内で充分なアミノ酸量を維持できないということが、サルコペニアの原因になっている可能性があるという研究結果によるものです。
筋肉で代謝されてエネルギーや筋肉の元となる、必須アミノ酸ロイシンまたはこれを含む分岐鎖アミノ酸製剤BCAA(イソロイシン・ロイシン・バリン製剤)の有用性が期待されています。
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※動物病院でのBCAA製剤(サプリメント)の一例
⇨ ヘパテクトプレミアム(Meiji Seikaファルマ)

その他にビタミンDEPAエイコサペンタエン酸)、DHAドコサヘキサエン酸)など抗炎症作用が期待される多価不飽和脂肪酸の一部にその効能の可能性がいわれていますが、まだはっきりしない点も多いようです。
また、ビタミンCビタミンEカロテン類ポリフェノール類、それに類する抗酸化物質などによる筋肉・神経細胞の保護効果は限定的ながら可能性があるかもしれません。

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動物医療の世界ではサルコペニアはその用語の普及も含めて、それが単独の疾患として、その予防や治療の可能性のある医学的な問題であるというほどの認知度がありません。
つまり、明らかに”今そこにある”サルコペニアという現象は、高齢期での様々なトラブルを抱えた患者さんの傍にありがちな風景のひとつとして見過ごされているに過ぎないのです。

動物医療においても、高齢期の食事量や運動量の不足など不適切な「生活習慣」をはじめとして、慢性腎臓病消化器疾患などの臓器不全がんなどによる体の消耗や、関節症変形性脊椎疾患などによる運動量の低下など、いろいろな要因が筋肉量の低下を伴う体重の著しい減少を引き起こします。

しばしば経験するところですが、高齢の患者さんでは特に筋肉量皮下脂肪を含めた”体重の維持そのもの”が「体調」を良好に保つ上で不可欠であり、それが結果的に治療成績を良くする、また病気は完治しないまでも最終的に”よい治療”になることを数多く経験いたします。

高齢期での何らかの治療行為に向き合う前提として、我々治療を行う側には常に現象を謙虚に受け止めるために、患者さん側にはより良い治療を受けるために、
こうしたサルコペニアと呼ばれる現象があるということ、またそれに向きあうための「無知の知」みたいなものへの気づきのきっかけとして、当コラムがお役に立つことができれば幸いです。

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文責:あいむ動物病院 西船橋
病院長 井田 龍

 

過去の当院のブログに食事量が落ちがちな老齢犬に食事をあげるための簡単な工夫に関しての記事があります。ご興味のある方はぜひご覧になってみてください。

>高齢犬の「ごはんの工夫」あれこれ

#猫バンバン

いつの間にかもう師走ですね。

今年の冬は多少過ごしやすいのでは?とは思いますが、それでも冬真っ盛りとなって参りました。

連日、寒さが続いて外に出るのもちょっと億劫になっている方も多いのではないでしょうか?

もちろん、屋外生活の猫たちにも、我々よりさらに過酷なかたちでその季節が訪れています。
この季節、屋外生活の猫はできるだけ暖かく安全そうな場所を探し回り、そうした場所に身を潜めていることでしょう。(下の写真は近所の駐車場の常連さん達です。)

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ところで、ドライバーの皆さん、車に乗ろうとドアノブに手をかけた途端に車の下から猫が慌てて飛び出してくるのはよく目にする光景だと思います。突然ですからびっくりしますよね。
車体の陰は猫の外敵から身を隠しやすい場所であり、特に冬季には車の余熱が残る場所は寒さしのぎの避難先にもなっていることはご存知の方も多いでしょう。

”エンジンがかかれば、猫は逃げちゃうでしょ?”

もしかしたら、多くの方は漫然とそう思っているのではないでしょうか?

まさか、エンジンルームに猫が入っているなんてことが想像できず、エンジンをかけている方がほとんどなはずです。毎日、膨大な数にのぼる「まさか」のうちの幾つかが悲劇を生み、その都度ひとつの命が危機に見舞われています。

獣医師であればすべてといっていい程、こうした悲劇の猫たちの姿を多かれ少なかれ必ず忘れ得ない記憶として残しているものです。

エンジンルームの隙間でタイミングベルトなどに巻き込まれて動物病院に運ばれてくる猫の状況は一般の方にはまさに正視に耐えない状態であることも数多く経験します。
生後、まだ数か月程度の子猫の被害が目立つのですが、仔猫は体が小さいため狭い隙間に入りこみやすいということと、まだ経験が少なく車の危険性を学習できずに逃げ遅れるなどの理由からではないでしょうか。

統計などありませんが、病院に連れて来られることもなく、もしくはその場で犠牲となっている猫はかなりの数に上ることは間違いありません。
動物病院にいらっしゃる自動車修理関係の飼い主さん達からは、猫がエンジンに巻き込まれて持ち込まれる車両は多いという話を実際に何度も聞いたことがあります。

ー>「JAF、クルマ何でも質問箱、トラブル」

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社会の片隅に埋もれてしまっているこのような実態に対して、我が国を代表するグローバルメーカーの日産自動車が光を当て続けています。
この日産自動車が推進するCSR(企業の社会的責任)事業の一環?だろうと思うのですが、私たちの生活に身近な猫の悲劇を防ぐために継続的な啓発活動を行っていることを皆様はご存知でしょうか。
毎年、冬季に日産自動車のホームページやSNSなどでそのような啓発を見かけた方もそれなりにいらっしゃると思います。

「猫バンバン」という標語は、車のエンジン始動の前にボンネットを”バンバン”して猫をエンジンルームから追い出す行為を指します。広い意味では車体の下やタイヤハウスなどの物陰に潜んでいる猫に”危ないぞ”というサインを送って、猫を危険から遠ざけましょうという意味合いも含むものと思います。

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実際にはボンネットなど車体をバンバンしたり、ドアの開閉を繰り返したような場合には猫が恐怖を感じてさらに奥へと逃げ込んでしまうという指摘もあるのは確かです。
最終的ににボンネット開けてエンジンルームまでしっかりと確認する必要もあるのかもしれませんし、それでも見つからない場合さえあるようです。
エンジンルームなんて滅多に見ないといというユーザーも多い中、そうした可能性の問題まで対策を求めると「猫バンバン」自体のハードルがとても高いものになってしまいますからそれは考えものです。

完璧を期すのはなかなか難しいものですが、少なくともこうした事実や最低限取るべき行動を多くのドライバーがシェアすれば、全てではないものの痛ましい事故が多少は減る方向には向かうのではないでしょうか。

不充分かもしれないけれど、とにかくやってみましょうということはとても大事なことです。

ー>「猫バンバン」とは?(Wikipedia)
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企業が収益と一見無関係にみえる事業を行うことを単なるイメージ戦略のひとつといえばそれまでですが、大小の社会への貢献を表明するために多くの企業がそういった事業を行うご時世です。
社会貢献を行う企業から消費者へのメッセージは誰もが受け入れらえれ、わかりやすく印象に残るものでなければならないでしょう。

そういった意味で「猫バンバン」という目を引く猫のアイコンとワンフレーズによる、インターネットを賢く利用した啓発活動を選んだ日産自動車の着眼点には素晴らしいものがあると思います。
多額の費用をかけずとも、痛ましい猫の死への世間の認知度を上げるという社会貢献も果たしつつあるでしょうし、自社のイメージアップにもそれなりに成功したのではないでしょうか。

さらに今後の展開として「猫バンバン」という呼びかけだけに留まらず、車のあり方に関わるような何かより実効性のある対策があれば文句なしの出来栄えとなるでしょう。
残念ながら車側のコストアップにつながるような対策のハードルはけた違いに高いと言わざるを得ませんが、それはその時点で動物愛護の視点の問題ではなくなるということでしょうから致し方ありません。

「猫の侵入による外的要因による故障」が車の品質問題だという認識が消費者、それも世界的に起こらない限りはコスト競争に血眼になっている製造業にその選択をさせるのは難しいのは確かなことでしょう。
まあ、購入の際にディーラーオプション品として、猫の侵入を防ぐような装置などがあれば、「猫バンバンプロジェクト」と合わせて日本国内ではそれなりの需要はあるかもしれませんが。。。

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この「#猫バンバンプロジェクト」に好意を感じるような潜在顧客層は普段から猫に何らかの愛情や関心を感じているか、それが昂じて猫を飼っているという社会全体から見ると多いとはいえ限られた人々と言えるでしょう。

猫好き脳のフィルターを通して見ると、そんなことないのでは?と感じるかもしれませんが、実際には猫の飼育世帯率はわが国では昨今の「ネコノミクス」などという造語の話題性にも関わらず世界的に見ても低いわずか9.9%でしかありません。
(2016年、一般社団ペットフード協会調査による)

一方で、さまざまなレベルの「猫嫌い」は猫好きな層に対して無視できないほどの割合で存在していると思われます。そうした無関心以下の層に対してはこのプロジェクトは訴求力はおろか、場合によって嫌悪感さえ生じかねません。

また、さらにこの話題は猫好きに対しても、かわいらしい猫のキャラクターに隠れて表立っては表現されないものの、車という自社が製造しているプロダクトが引き起こす可能性のある猫の死などの凄惨性の強いネガティブなイメージを伴っています。

強調しすぎれば、なんでも他責の世の中(特に企業には)ですから、藪蛇的にあらぬ方向から話が自社製品の問題に及んだり、なぜ対応をユーザー任せにするのか?などという責任の一端を負わされかねない、なんてこともあるかもしれません。

とりわけ猫にシンパシーのない層にとっては迷惑な猫によって大事な車の価値が損なわれたり、事後処理や故障への金銭的、精神的負担を生じる可能性のある問題でもあるわけですから。。。

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このプロジェクトが、その受け手によるマイナス面を持っているのかどうかは実際には分かりません。
いずれにせよ日産自動車が事故に巻き込まれる猫に自社プロダクトが関係する可能性がある、という微妙なリスクをとりつつこうした活動を継続的に行うということは意義深いものがあると思います。

万人受けを狙うばかりに「木を植える」ような優等生的な活動が人や資金の投入に見合わずイメージ戦略としていまひとつであったり、差別化できずに金太郎飴的に埋もれてしまったりとイメージづくりとはなかなか大変なものでしょうが、「猫バンバン」がターゲット層に与える印象はそうしたものとは対照的です。
日産自動車の判断はココと決めた層には非常に分かりやすく強い印象を残すことができるという点でイメージ戦略とはこうあるべき、といういいお手本といえるのかもしれません。

今後の展開としてあるかどうかわかりませんが、もし、こうした取り組みがメーカー1社にとどまらず業界全体に、さらに異業種などをと巻き込んで起これば「我々、猫が好きでたまらない層」に留まらず、ちょっとだけですが世の中が明るくなるような気がいたします。。。

今年も「#猫バンバン」プロジェクトは継続されているようですので、微力ながら応援させていただきたいと思っております。

何やら余談が長くなってしまいましたが、さて、皆様いかがお感じになるでしょうか?
ご興味のある方はぜひ下のリンクをぜひ訪れてみてください。

ー>「のるまえに猫バンバン」
  (日産自動車のサイトへリンクします)

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文責:あいむ動物病院西船橋
病院長 井田 龍

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