診療コラム
年末年始はご注意を!
2022年も残すところあとわずかとなりました。
いつの間にやらあと2週間足らずでクリスマス本番ですね。
新型コロナウイルスによる外出自粛の影響の余韻はまだまだ残りつつも、街にはクリスマス一色な景色が戻りつつあるように思います。
ところで、日本での最初のクリスマスは、かの有名なフランシスコ・ザビエルが来日した時代、江戸時代が始まるちょっと前の西暦1550年くらいにまで遡るそうです。
この時代はというと、キリスト教徒がまだキリシタンなどと呼ばれていた大昔です。。。
もちろん現在の”商業的クリスマス”とは似ても似つかない純粋な宗教的習わしであったのでしょうが、それを無理やりつなげると、我が国における”クリスマスみたいな風習”には意外に長い歴史があるといことなんでしょうね。
現代の我々はというと、毎年毎年、同じような風景の中で同じようなメロディーを聴き、LEDやプロジェクションマッピングなどで年々パワーアップするイルミネーションで街のあちこちが彩られる中、あたふたと消費生活に翻弄されるわけですが。。。
まあ、イブの夜は年々賑やかさを増していますが、日本人による日本人のためのクリスマスの原風景みたいなものはここ数十年はあまり変わってはいないようです。。。
今年も、ああ年末だなー、大晦日に向けてあと少しで今年も終わるという感傷的なボルテージが一気に高まり始めるタイミングでもあります。
この辺りで本題に入りたいと思います。。。
動物病院には師走、特にクリスマスからお正月の年末年始にかけてのイベント最盛期にはやはり、いつもと違うパターンで患者さんがいらっしゃいます。
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特にクリスマス前後から大晦日、年明けにかけて頻繁に見るような、実にさまざまな原因による大小の胃腸のトラブルや問題を訴える患者さんが明らかに増えるのですが、今回はこの切り口で考えていきたいと思います。
「胃腸の問題」といってもその程度はいろいろです。軽い嘔吐、下痢などの軽いものから、直ちに内視鏡検査(胃カメラ)を要するような事例、骨や食材が異物となって生じる腸閉塞を筆頭とする急性腹症で開腹手術に至る重症例まで実に幅の広いものなのです。
こうした胃腸の問題を全部引っくるめた、最初の”嵐”が「クリスマスイブ」にやってきます。
我々、獣医療関係者にとっては、何やら不謹慎ではありますが、”サンタが街にやってくる♪”などという曲とともに病気や事故もやってくる、とでも言いましょうか。。。
では、クリスマスに起こりやすいこうしたトラブルの原因とは何でしょうか?
まず、この時期には動物達(人も)が普段食べないような、扱いなれない”贅沢な食べ物”が家庭内にどんどん持ち込まれること、それにつきます。
また、小さな子供達が学校から解放され、家庭内に戻ってくるということもそれに拍車をかけるかもしれません。
クリスマスには動物達には魅力的で、場合により危険な食品やその廃棄物が家庭に溢れかえります。アルコールも入って、ついついその場の盛り上がりやノリで、まあいいだろうとつい色々なものをあげてしまう機会も飛躍的に増えるでしょう。
いつもより盛りだくさんのテーブルからこぼれ落ちるご馳走、ゴミ箱に入ってもなおその魅力を失わない残り物、脇が甘く格好の標的となる子供達、酔いが回ったお父さん、など直ちに問題を生じるようなトラップがたくさん仕掛けられています。
イブの夜には、クリスマスチキンなどの骨類や肉のカタマリやクリームなどの高タンパク&高脂肪、大量の砂糖類など、いつもと違う一風変わった食材や調味料など、その原因には事欠きません。そもそもの食べ過ぎも相まって嘔吐、下痢、腹痛などの胃腸トラブルが数多く発生します。
また、生ケーキなどのデザートなどに含まれるチョコレートやナッツ類、アルコール類などによる中毒なども増えます。
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まず、クリスマスチキンをはじめとする骨を含む残飯の盗食に細心の注意を払いましょう。
実は骨だけではなく、クリームがついたケーキの包装やろうそく、クリスマスプレゼントの犬用おやつやオーナメントもこの時期に消化管閉塞などの原因としてありがちな異物です。
事例として多い鳥骨はその大きさや形状から、慌てて食べた小型犬種で特に咽喉頭部(のど)や食道に詰まりやすく、食道閉塞などをはじめとする命に関わる急性の消化管閉塞を引き起こす可能性があります。
こうした場合、異物となった骨の除去のためにクリスマスイブの夜に緊急の内視鏡や手術を要する確率は相当高くなります。
過去の関連記事で食道閉塞に関して説明してありますのでご興味のある方は当院過去ブログをご覧ください。
>危険な食道閉塞に関して
また、食道を通り抜けるくらいには小さくなった鳥の骨などの異物をある程度含むものを一気に食べ過ぎると、胃運動の低下や胃液の不足によってこれらを充分処理できずに急性胃拡張を起こすことがあります。
さらに、そうした胃で処理しきれない食事の塊や骨などを含む胃内容物が時間の経過とともに下流の十二指腸以下の小腸閉塞を引き起こす可能性もあります。
最悪の場合、急性胃拡張の治療のために、緊急の麻酔下での胃洗浄や胃腸切開などの外科手術に追い込まれる可能性もありますし、手術に至らずとも急性膵炎や、入院が必要になるような重大な消化器疾患の合併症つながることもしばしばですので、くれぐれご注意を。
また、普段食べ慣れていない高脂肪、高タンパクの食材だけが問題を起こすだけではありません。通常の食材でも、食べ過ぎによって思いがけないような激しい急性胃腸炎や急性膵炎の原因となりますので、食事量が増えやすいこの時期には特に注意を払って頂きたいと思います。
次に犬猫に危険な食材として有名なチョコレートですが、クリスマスシーズンのチョコレート中毒(テオブロミン中毒)には実はバレンタインデーの時期と同様にしばしば遭遇します。
英国での調査研究ではチョコレート中毒の発生はクリスマスになんと平時の4倍も増えるという調査結果が出ています。
もともと12月には我が国でも欧米には及ばないようですが、チョコレートそのものの消費もバレンタインデーで大量消費される半分くらいまでには増えるということです。
加えて最近ではクリスマス用のケーキも生クリームたっぷりのいちごケーキ以外の選択肢も増えました。
製菓用チョコレートで作る愛情、カカオマスともにたっぷりの手作りチョコケーキはかなり危険ですし、市販品の贅沢に生チョコを大量に使用したものなども多く出回っていますので、ご家庭ではくれぐれもご注意ください。
少量だからと、ついついあげてしまったりしてしまいがちですが、実は小型犬では容易に中毒量〜致死量に達しやすく、命に関わる事例もしばしば生じます。特に最近多い体重が2キロ以下のチワワやトイ・プードルなど小型犬種で重い中毒症状を引き起こし、死亡率が高くなる傾向がありますので注意が必要です。
ちょこっと目を離した隙に大型犬でホールケーキをまるごと、小型犬でもビックリするくらいのことがありますのでご注意を。。。また、少数ですが猫での事例もあります。
チョコレート中毒に関しては過去の記事がありますので参考になさってください。
>チョコレート中毒とは?
ここまで長文を最後までお読みになっていただき、ありがとうございました。
皆様にとって楽しいクリスマスと幸せな新年が訪れますように!
ペットと新型コロナウイルス
※はじめに。。。
当コラムの文章は「動物医療」から見た新型コロナウイルスの位置づけと現状に関して、医療の専門家と異なる獣医師の立場で、私見を交えて医学と獣医学の視点から横断的に書いたものです。
また、この文章は令和2年2月下旬の時点で得られた情報を元にしており、その後のアップデートはされておりません。
ご覧になる方は上記の点をご留意の上でお読みください。
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令和2年の始まりと共に、中国武漢発の「新型コロナウイルス」による新興感染症(武漢肺炎)の日本への蔓延に関して連日のようにメディアで取り沙汰され始めて1ヶ月少々が経過しました。
連日、メディアからもたらされる情報に多くの方が不安を抱いていらっしゃるであろうと思います。
この1月までは「武漢肺炎」と呼ばれていた感染症は2020年2月にWHO(世界保健機関)の決定により急性呼吸器疾患、
COVID-19(COronaVIrus Disease 2019)という公式名称を与えられました。ほぼ時を同じくして、その後、我が国への水際対策が功を奏さずに大方の予想通り国内への蔓延が始まることになります。
現在、メディアや公的機関では国内ではこの公式名称は用いず、「新型肺炎」であるとか「新型コロナウイルス感染症」と呼ぶようになっています。
この新型肺炎の原因とされる新型コロナウイルスですが、その感染経路や潜伏期間といった感染症の基本情報のレベルにおいても確たるものがないまま様々な情報が錯綜しており、時間を経ても、なお全貌を見せない脅威に対する不安が日々増幅され続けています。
現在、異常に長い潜伏期間や無症状で感染を拡散するスプレッダーの存在など、既に知られた季節性インフルエンザなどのウイルス感染症とも明らかに異なるこの感染症の特徴から、波及する問題が国内外、各方面に波及して大きな社会・経済問題にフェーズが移行し、より複雑な状況になりつつあります。
そうした不安心理の現れか、マスクに始まりついに”トイレットペーパー”が棚からなくなるという、我々日本人がいつか見た光景を再び経験することとなりました。
当初から、こうした危機に対してその責を持つはずの政治や行政の情報発信の姿勢やリーダーシップの問題は、幾度も繰り返されてきた我が国の危機管理能力の甘さを図らずも露呈しているかのようです。
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混乱状況の下で、特に犬猫をはじめとする飼育動物とその飼い主(人間)の間で、この新型コロナウイルスがどのようにふるまうのか?
この問題は動物と暮らしている方には非常に気になる点ですが、まだそこまで社会的にも医学的にも注意が向いていないことから、あまり問題視はされておりませんでした。
人間社会が混乱した状況ですから、社会的に優先順位が高くない飼育動物においてはその代表格の犬や猫でさえ、この感染症の理解するべき実態とは何なのか、まだ分からないというレベルなのでしょう。
このような情報不足の状況や、深刻度がそうさせるのか想像できませんが、震源地の中国では感染の可能性を恐れるあまりに犬猫などの遺棄や殺害が相次いでいる、という悲しいニュースがいくつか入ってきています。
感染症の蔓延という緊急事態による社会的な混乱に際して、身近な動物たちをどのように扱うのか?
こうした問いに対して極論で考え、行動しなければならないほど、彼の国では切迫した事情があるのでしょう。。。社会体制や文化、国民性が大きく違うとはいえ、我が国でも明日は我が身となり得る問題を孕んでいます。
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折しも2/28にネット情報により、香港で新型コロナウイルスに感染した飼い主の飼育している”犬のウイルス検査”をしたところ、”弱い陽性反応”が検出されたというニュースが犬の感染例のおそらく第一報として入ってきました。
その後、1週間弱でNHKなど大手メディアで報道され始めていますので、そろそろ耳にされる方も増えてくるのではないかと思います。
ニュース内容は下記リンクを参照してください。
>NHK NEWS WEB
国内での報道では、どういった検査で無症状の犬が新型コロナウイルス感染症と判断したのか、検査方法など詳細が不明なこと、ただウイルスが付着していただけという反対意見もあるようですので、これらの点に関してさらに続報を待ちたいと思います。
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ここで、まず世間での誤解も多いこの「コロナウイルス」とは一体何者なのか?ということから整理していきたいと思います。
今回の騒動によって軽い咳払いは勿論のこと、日常会話はもちろん診察室でも、コロナウイルスなどと口に出そうものなら、新型コロナウイルスか?!、いったいどういうことなんだなどと眉をひそめられるような雰囲気がすっかり定着してしまった感があります。
その理由はコロナウイルス、イコール新型コロナウイルスという世間の誤った認識が定着しつつあることです。この辺りはワイドショーなど、不安を煽るメディアの影響などもあるのでしょう。
実際にはコロナウイルス自体は、新たに発見された”恐怖”のウイルスというわけではありません。
国立感染症研究所のHPに解説がありますのでご興味のある方はご覧ください。
>コロナウイルスとは
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コロナウイルスはもともと自然界にありふれたウイルスであり、人類だけではなく野生動物や家畜、飼育動物などあらゆる動物種に分布し、太古から様々な感染症の原因となっています。
人間に感染するコロナウイルスは、既にに人類に蔓延している誰しも経験のある風邪の原因ウイルスとして4タイプが知られています。
風邪の原因の一割ちょっとがコロナウイルスによるものであり、その多くは軽症の上気道炎を引き起こします。大人になるまでにコロナウイルスにかかったことのない人などおそらく存在しないくらいのありふれた感染症のひとつです。
一方で、2002年~の「中国広東省」発の重症急性呼吸器症候群(SARS、サーズ)や2014年~中東発の中東呼吸器症候群(MERS、マーズ)の原因となり、世界的に大問題となった2タイプの”危険な”コロナウイルスが知られています。
今回問題になっている「中国武漢発」のコロナウイルスは、人間に感染する7種類目、近年、人類社会に侵入してきた「新型コロナウイルス」としては3種類目のウイルスになりました。
これら3種類の動物由来の新型コロナウィルスは、いずれも肺を強く侵して重篤な肺炎を起こす特徴があることから、もともと人間に感染して風邪を起こす「旧コロナウイルス」よりも重症度や致死率が高くなっています。
こうした病原性の強いコロナウイルスは家畜や野生動物などを介して人類に伝搬されてきたものです。
2002年にコウモリからもたらされたSARSも、2014年のラクダ由来のMERSも、今回と同様に人類が接触したことのないために免疫を持たない、動物由来の新型コロナウイルスとして流行を起こしました。
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人類史上、今回の新たなコロナウイルス感染症を含めて次々と繰り返されてきた動物由来の感染症、例えばエボラ出血熱や日本脳炎、古くはペストや狂犬病などに代表される感染症を人獣共通感染症、または動物由来感染症と呼びます。
この人獣共通感染症はWHOで把握されているだけでもなんと200種類以上にも上ります。
動物由来感染症に関して、厚生労働省の分かりやすい解説がありますので、ご興味のある方は下記をご覧になってみてください。
>動物由来感染症ハンドブック
余談ですが、近年問題になっている「生物テロ兵器」として炭疽菌、ペスト菌、野兎病菌、ウイルス性出血熱のウイルス等の病原体のいずれもが、こうした人獣共通感染症に由来するものだそうです。
今回の新型コロナウイルスが中国武漢の研究施設から漏れたものだという、拭えない疑惑はこうした背景と、実際にコロナウイルスに関する”さまざまな”研究が行われていたということに端を発しています。
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コロナウイルスは人類以外にも牛、豚などの家畜やコウモリをはじめとする多種多様な野生動物に広く分布しています。
もちろん動物医療の対象となるようななじみ深い飼育動物の犬や猫、フェレットなどにもそれぞれの種に固有な多くの種類のコロナウイルスが存在します。
このうち、動物医療では猫で全身感染を起こすコロナウイルスとして致死率の極めて高い猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)が特に有名です。
このウイルスは猫に無症状で常在したり、腸炎の原因となる猫コロナウイルス(FCoV)が遺伝子変異により病原性の極めて強い猫感染性腹膜炎ウイルスに変化したものと考えられています。
犬にも腸炎の原因となる犬コロナウイルス(CCoV)がいくつか知られています。このウイルスにより引き起こされる腸炎は病原性はそれほど高くはないものの、糞便に大量に排泄されたウイルスが経口感染により容易に他の犬に拡散します。
繁殖施設などの飼育密度の高い環境で流行を起こすため、犬の混合ワクチンの一部には犬コロナウイルスに対するワクチンを含む製品があります。
さらに犬には、少ないながら呼吸器感染を起こす犬呼吸器コロナウイルス(CRoV)や全身に致死性の感染症を起こす変異株の存在も知られています。
フェレットでのコロナウイルス感染症は2種類知られており、それぞれ流行性カタル性腸炎(ECE)と呼ばれる腸疾患と、近年明らかとなったフェレット全身コロナウイルス(FRSCV)関連疾患が知られています。
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犬猫などの伴侶動物のコロナウイルスによる感染症は身の回りに広く分布しており、そこには同じように無症状でウイルスを保有する健康な動物も含まれています。
実際にこうしたコロナウイルスが人間に感染症を及ぼした例は知られていません。
また遺伝子変異を起こして生じる猫伝染性腹膜炎ウイルスなどにおいて、その致死率が9割以上に上る重篤な感染症もありますが、そうした変異ウイルスおいても同様です。
結論として、一般的には”既知”のコロナウイルスでは他の動物種へ病原性を及ぼさないという種特異性が高く、イヌとヒト、ネコとヒトのような”種の壁”を越えて人間や他の動物に感染することは殆どないとされています。
もちろん、今回の新型コロナウイルスは以前の新型コロナウイルス(SARS、サーズ)同様に野生のコウモリ由来の可能性が言われており、少なくとも人間との”種の壁”を越えた前歴からも、さらに犬や猫との”壁”を越えてしまう可能性を否定することはできません。
先ごろ、香港発の報道であったようにヒトから犬の間の感染を疑う事例により、要注意であるという状況にはなりました。
もちろん、直ちにそれが人間社会に新たな脅威になるかどうかは現時点ではまだ分かりません。
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実は毎年人間社会で大きな流行を起こすインフルエンザにおいては、犬や猫とその飼い主との感染をおこしたという報告がいくつもあがっています。
さらに2009年のパンデミック(世界的な大流行)を起こして多数の死者を出した新型インフルエンザにおいても犬への感染例の報告があり、現在の新型コロナウイルスにおける危惧と同じ様な状態が引き起こされています。
しかしながら、こうした感染は極めて限られた範囲で起こっており、結果的には過去、現在においても大きな問題にはなりませんでした。
また、我々獣医師にとって身近な問題として、人間の季節性インフルエンザでは”種の壁”を超えてしまう、ヒト→フェレットの感染が身近にあります。
インフルエンザの時期には動物病院にも飼い主さんから感染を受けたと思われるフェレットが時折訪れますが、今のところ問題は生じていないというのが実際のところです。
もちろん、限られた範囲でヒトとフェレットのインフルエンザ感染がごく普通にあるからといって、飼育動物とのイレギュラーなウイルスのやりとりを問題視しないということではありません。
むしろ危険側から考えると本来あってはならないことが意外に起こっている、ということをお伝えするためです。
飼育動物からのイレギュラーなウイルス感染は”論文の上だけ”で起きていることではない、ということもまた事実です。
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人類は絶えず新たなウイルスを含む病原体の挑戦を太古の昔から受け続け、多くの犠牲を払いつつも生き延びてきました。もちろん、この先も人類とウイルスの戦いは避けようがありません。
結論としては抽象的で、だからどうなんだ?とお叱りを受けるかもしれません。
今回の新型コロナウイルスの脅威に際して、現代社会の弊害ともいえる、情報過多によるる”インフォデミック”を指摘する意見もあります。※
感染症による実害をさらに悪化させることを避けるために、極端な楽観論でも悲観論でもなく、各々が情報を整理して事実をひとつひとつ積み上げ、冷静さを失わずに正しく恐れるという姿勢が大事であろうかと思います。
※インフォデミックとは感染症の世界的な蔓延の意味のパンデミックをもじった造語で、さまざまな”情報”が世の中に蔓延して起こる悪影響のことです。
このコラムがご覧の皆さまの情報の糧として、どの程度の役割を果たせるでしょうか。
今後もしばらく続くであろう新型コロナウイルス感染症を”正しく恐れる”ための基礎知識として、何らかの気づきのきっかけとして、多少なりともお役に立てれば幸いです。
WSAVA(World Small Animal Veterinary. Association)、世界小動物獣医師会という世界的な獣医師のグループがあります。
この組織がこのコラムの執筆時点で、2020年3月7日更新の指針を発表しています。日本語訳ページのリンクは以下のとおりですので、ぜひご覧になってみてください。
また、2月11日時点での「新型コロナウイルスと伴侶動物についてのガイドライン」を発表しており、獣医療関係者が下記の通り説明をするよう求めています。
◯十分に衛生状態を保てる限りは飼っている伴侶動物と一緒にいること
◯ 猫は屋内にとどめておくこと
◯もし家族や友人で入院している者がいる場合は動物を預けに出すこと
◯ 不安がある場合は速やかに獣医師に相談すること
なお、上記に関する日本語訳ページのリンクは以下のとおりです。
ご参考になさってください。
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文責:あいむ動物病院西船橋
病院長 井田 龍
チョコレート中毒
2月14日、今年もバレンタインデーがやってきました。。。
例年通り、心のこもったものからそうでないものまで、悲喜こもごものチョコレート贈呈式が全国で繰り広げられることと思われます。
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この時期に家庭内で多発する犬(まれに猫)の中毒として「チョコレート中毒」はあまりに有名です。
”犬の飼い方”的な書籍やSNSなどネット情報でも、注意すべき中毒として筆頭に取り上げられていますので、多くの方はよくご存知ではないでしょうか。
チョコレート中毒はチョコレートやココア、それらが含まれた”加工食品”にさまざまな割合で含まれる「テオブロミン」の過剰摂取により起こります。
このテオブロミンは、皆様がよくご存じのカフェインと似た物質で、植物由来の化学物質(ファイトケミカル)として、モルヒネやコカインなどの麻薬と近縁の関係にあり、脳や呼吸器、心臓、筋肉に対して強い「興奮作用」を持っています。
テオブロミンはチョコレート、その原料のカカオマス(カカオ豆)に多く含まれます。また、昔の”コカ・コーラ”エキスの原料として知られるアフリカ原産の”コーラ”という植物の実や、”強壮剤”として有名なガラナの実、茶葉にも含まれています。
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ところで、このテオブロミンですが、なぜ人間は大丈夫なのに犬は中毒を起こしやすいのでしょうか?
それは、犬ではテオブロミンの分解と排泄にとても時間がかかるため、容易に体の許容量を超えて蓄積してしまうためです。
チョコレート中毒の表れ方は様々です。
下痢、嘔吐、発熱、興奮、頻脈、不整脈、多尿、ふらつき、パンティング(息が荒くなる)、腹痛、けいれんなど多岐にわたる症状を示します。
摂取量が多い場合にはさらに昏睡状態から死に至ることもあります。
チョコレート中毒は誤食後の6~12時間程度で中毒症状が現れます。
犬は人間よりもテオブロミンの代謝・排泄に時間がかかるため、チョコレートを食べてから24時間程度は中毒が起こる危険性があります。つまり、食べてしばらくして何もないからといって安心は出来ないのです。
では、チョコレートはどのくらい食べると危険なのでしょう?
テオブロミンの中毒量にはそれぞれ個体差があります。
その致死量は体重1Kg当たり
犬では100~200mg、猫では80~150mgであるといわれています。
20mg/kg程度から興奮などの軽度な異常がみられ、60mg/kgで痙攣などの強い症状が起きる可能性があります。
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意外に思われるかもしれませんが、大型犬は小型犬よりもチョコレート中毒の発生リスクが見かけ上少なくなることはご存じでしょうか。
一般家庭のテーブルの上にミルクチョコレートが10枚も20枚も置いてあることは通常ないのがその理由です。つまり、大量に食べる必要があるためです。
一方で、小型犬や小型化が著しいトイ種のような2キログラム以下の超小型犬種では特に中毒の発生リスクが高くなります。これは、大型犬とは逆の理由です。
体重が少ない方が中毒量に至るテオブロミンを一気に摂取してしまう機会が多くなります。
つまり、動物を取り巻く生活環境の影響により、チョコレート中毒は犬の体格が小さいほど、より致死率が高くなる傾向があるのです。
また、チョコレートに含まれるテオブロミン含有量は製品には詳しく記載されていないこと、さらにチョコレートの種類によっても大きな差があるということが、誤食の場合の不安を煽る結果となります。
チョコレートを含む加工菓子ではメーカーの相談窓口に問い合わせても、カカオマスの量も不明または即答できないということがほとんどであり、公的サービスの「中毒110番」でも同様です。(※)
つまり、消費者レベルでの危険性の判定が難しく、飼い主さん自らがその判断を迫られます。
(※)「中毒110番」は人間用のサービスであり、飼育動物に関しては本来は対象外です。
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もし、誤食してしまった場合のざっくりとした目安ですが、チョコレート類の1グラムに含まれているテオブロミンは下記の通りです。
・製菓用チョコレート :15mg前後
・ココアパウダー :5-20mg
・ダークチョコレート :5mg前後
・ミルクチョコレート :2mg前後
・ホワイトチョコレート:<0.05mg
よくあるミルクチョコレートの板チョコで換算すると、1枚で約55gとしてメーカーによっても異なりますが、だいたい110~120mgのテオブロミンが含まれます。
つまり、体重5kgの犬ではミルクチョコレート5枚ほどで致死量レベルに達するということになります。
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チョコレートを誤食したという訴えで来院する患者さんの多くは、摂取量が少なかったり、もともとカカオ含有量の少ないチョコレートや菓子類の誤食であったり、結果的にはテオブロミンの中毒量にまで至らならないケースが多いものです。
例えば、ミルクチョコレートや”チョコレート風味”の加工菓子類はカカオ含有量がもともと少ないため、ある程度食べても治療の必要性ないものものがほとんどです。
一方で、カカオ含有量の極めて多いダークチョコレート、「製菓用のチョコレート」やそれをふんだんに使用したホームメイドのチョコレートケーキなどの誤食には特に注意が必要です。
また当然ですが、カカオ含有量の少ない製品でも”大量”に食べてしまった場合も同様です。
チョコレート中毒を起こすテオブロミンの過剰摂取に対しては有効な”解毒薬”はありません。つまり、体に吸収される前に除去しなければならないため、中毒を回避する処置には時間制限があります。
まだチョコレートを含む食事内容がまだ充分に胃内にあると考えられる、数時間以内の段階で除去することができるならば、摂取量によらず経過は良好です。
もし、中毒量に近いチョコレートを食べてしまったと思われる場合には、あまり時間をおかずに早急に動物病院にご相談ください。
それでは、楽しいバレンタインデーを。。。ワンコのいるご家庭ではくれぐれもご注意ください。