診療コラム
「ノギ」恐るべし異物
今回のテーマは動物を襲う植物(ノギ)に関してのものです。植物が動物を襲うって!??もちろん、SFの中でのように食虫植物のようなものが襲ってくるようなものでは決してありません。。。
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ところで、"ノギ" って何でしょうか?
芒(ノギ、「ぼう」とも)は、コメ、ムギなどイネ科の植物の小穂を構成する鱗片(穎)の先端にある棘状の突起のこと (Wikipediaより)
「ノギ」を生やす植物は空き地にいっぱい。幼い頃に草むらで転げまわった後などにパンツの中でチクチクした記憶がよみがえる方も多い?のではないでしょうか。もちろん、ここではワンちゃんの散歩後に毛にくっついてなかなか取れない、アレの方が一般的なイメージかもしれませんが。。。
とにかく服や被毛に引っかかると、取れにくいものです。そんな理由もあるのでしょうが、イネ科の植物はその優れた種子の運搬能力により空き地や荒れ地でその繁栄を謳歌しています。
ところでこのノギですが。。。人にとっては生活する上での単に「迷惑な存在」に過ぎませんが、犬にとっては安全なはずの生活に突然現れる重大な脅威、いわば天敵となり得ます。
以下、ノギが原因となった3つの事例、プラス番外編1つをご紹介したいと思います。
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パート1、「こんなところから、ノギ?!」(足先、皮膚編)です。
上の写真は「よく理由がわからないけど、両前足の指の間から血がでてきて、とても気にしているんです。」 ということでいらした患者さんです。
確かに、指のマタの部分から出血していて、とても気にして舐めていることが容易に想像できる状態です。実は指間のこういった病変は比較的よく見られる皮膚の異常です。(以下の写真は少々刺激があるかもしれません。)
”ハイ、これは舐めすぎによる指の間の皮膚炎ですね。だいぶ膿んで腫れてますから抗生物質と消炎剤を出しておきますので、絶対に舐めないようにして一週間くらいしたら、またいらしてください”という治療パターンに見事に当てはまります。
一週間後。。。「あまりよく治りませんけど。。。」ということで、再び患者さんが来院しました。
内心は”ナニ?ナオラナイ?ぺろぺろと舐めてたんじゃないんですかい?”とあらぬ疑いをワンちゃんにかけてしまいがちなシチュエーションなのですが、よく見てみると。
ぜんぜん、治ってない。しかも、両足の指の間の皮膚に穴が開いてる!
ん?何か出てきたぞ。(下写真)
うぁあ、ノギ!?(しかも両側から!!!)
上の写真が両足の指の間の皮膚から同時に摘出されたノギです。
ちょっとわかりにくいので推論を交えた解説をします。
ワンちゃんが草むらを走り回った際に、偶然にも両足の第3-4指間で同時にノギを踏み抜いてしまったようです。刺入した足裏の皮膚は数日で治ってしまいそのまま内部にノギが残されました。
こういった場合、体がすぐに処理できない異物は一旦体の内部に埋め込まれる形で周りを炎症組織が囲みます。これを肉芽腫といいますが、こういった場合、小さなものでは体内でゆっくり処理されて吸収、ないし隔離されます。
しかし、今回のこのノギはワンちゃんの処理能力には大き過ぎました。皮膚にはこのような大きな異物を分解処理する仕組みがありません。その後しばらくしてノギの周りが化膿、組織が壊死を起こして、刺さった場所の反対側から左右同時にノギが飛び出てきたという珍しい形で病気が見つかりました。
もちろん、ノギを取り出した後、1週間程度で酷かった皮膚病がスッキリと治ったのはいうまでもありません。
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「こんなところにノギ!?」。。。パート2(眼球編)です。
「散歩の時に眼に何か刺さって、取れません!」とあわてた飼い主さんがわんちゃんを連れて来院しました。診察してみると、結膜に何やら刺さっているようです。一見したところ虫のようにも見えるのですが、ものすごく痛いらしく、嫌がって頭をぶんぶん振るため、なかなか確認することができません。
点眼麻酔で目の痛みを抑えた後、よくよく見てみると。。。
なんと「ノギ」の根元が結膜に見事に刺さっています。洗浄したり、引っ張ってみましたが、取れません。どうやら根本が釣針のように引っかかっているようです。(写真、矢印)
こういった場合、力任せに無理やり引っ張ってしまうと強い痛みや出血を起こす可能性がありますし、場合によっては「ノギ」の一部を結膜の中に残してしまうリスクがあります。
そこで、飼い主さんと相談して、鎮痛・鎮静剤で痛みとコワイのを抑えつつ、ウトウトしているうちに結膜を小さく切開して取り出すこととしました。
無事に取れた「ノギ」が下の写真です。
さて、無事に原因となるものを取り去ったものの、わんちゃんはまだ目をしぱしぱとさせています。角膜に問題を起こしている可能性がありましたので、検査してみるとノギ”の"穂”による角膜の大きな傷、角膜潰瘍が見つかりました。角膜潰瘍とは角膜の何層かがごっそりクレーター状に剥げ落ちるもので1週間くらい痛みが続きます。
結局、このわんちゃんはノギによる後遺症で2週間ほどの治療を要しました。
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「こんなところにもノギ!?。。。」パート3(耳道編)です。
「散歩で草ムラで遊んだ後に急に様子がおかしくなった。」という、わんちゃんが慌てた飼い主さんとともに来院いたしました。
さて、診察室では。。。わんちゃんは頭をブンブンと振って、かなり辛そうです。時折、後ろ脚で声をあげながら片方の耳を描こうというしぐさをしています。
これは明らかに耳に何か入ったかな?という状況ですが、ワンちゃんも興奮して、とても耳の奥まで見せてくれる状況ではありません。迂闊に顔を近づければ大ケガです。
相当辛かったことでしょう。ワンちゃんの耳介は後ろ足で激しく掻いたせいで、腫れあがって出血しています。このままではどうしようもありません。これは困った。。。
飼い主さんにはこのままでは、検査も治療もできない旨をお伝えし、緊急で麻酔下の内視鏡検査と処置を行うことになりました。
しばらくして麻酔でおとなしくなったワンちゃんの耳道の入り口(垂直耳道)が観察できるようになりましたが、そこには何もありません。さらにその奥、水平耳道までスコープを進めてみると。。。
上の写真では右上に鼓膜、10時から4時方向に何か見えます。どうやらノギのようですね。画面では見えませんが奥の方で何やら引っかかっています。
ノギにはたくさんの突起が杭のように生えています。このため、耳道のような狭い空間ではあちこちに引っかかり非常に取りにくいことがあります。
ようやく引っ張り出すことができました!上の写真が摘出されたノギの写真です。
幸いなことにノギによる耳道や鼓膜の損傷もなく、無事に麻酔から覚めたワンちゃんは先ほどまでの苦痛はどこへやら。ときどき耳をパタパタさせていますが、何が起こったの???という顔をしています。とりあえず一件落着です。
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以上のまとめです。。。
「ノギ」は体の中に取り込まれてしまう異物としての振る舞いが問題となるのですが、特にそれが目や耳など、敏感な部位に侵入した場合、直接の刺激や二次的な損傷による強い痛みなどの不快感が激しくなりがちです。
比較的遭遇しやすい場所は皮膚、目、耳道、鼻腔、気管など上気道ですが、もちろん、外界と接する体表や粘膜全ての場所でその可能性があります。
さらに、飼い主さんが異常に気付かない場合や症状があっても外から観察できない部位であったり、ノギが突き刺さったまま、体本来の仕組みで除去されない場合は。。。発見が遅れて重症化したり、慢性化して難治性となることも多いものです。
このようにたかがノギですが、それが引き起こす問題は時に複雑多岐に渡り、診断はもちろん、治療する上でも獣医師泣かせで厄介なシロモノなのです。
飼い主の皆様方。草むらや公園など植物の多い場所でのお散歩は転げ回ったり、茂みに顔を突っ込んだり、ワンちゃんにとって何よりも代えがたい喜びのひとつではないでしょうか。これはそんなワンコと一緒に散歩する飼い主さんにとっても同様ですよね。
ワンちゃんのお散歩の楽しみを奪うことはできません。。。ですが、このノギの危険性についてご記憶いただいて、緑多い場所でのお散歩の際にはくれぐれもご注意ください。
長くなりましたが、最後に以下、番外編(パート4)のご紹介でこのコラムを終えたいと思います。
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「こんなところにもノギ?!かな?」。。。パート4(番外編)
「植え込みに顔を突っ込んだ後にキャンキャンと叫んで、目が開かない。」という訴えのワンちゃんが散歩を一緒にしていたお父さんに付き添われて緊急で来院いたしました。
一見して、ものすごく痛いらしく、鳴き叫んで診察室内ではちょっと手がつけられない状態です。片目を完全に閉じており、瞼はピクピクと痙攣(眼瞼痙攣)しています。目がかなり刺激されているようで、大量の涙が周囲の毛を濡らしています。
これは非常に強い目の痛みを予想させるもので、やはりちょっとそのままでは眼の中の観察が出来そうにありません。そこで、多分に漏れず、鎮静剤を用いて、ちょっとウトウトしてもらってから詳細な観察をいたしました。
まず、静かに寝ているワンちゃんの目を開いてみましたが、なんと何も見当たりません。さてと、これはには困りました。症状からは何か異物が入っているとしか思えないのですが。。。
ところで、犬には下眼瞼の内側、目頭の部分に瞬膜(第三眼瞼)という膜状の構造があります。眼球と瞬膜に挟まれた狭い空間には深い懐があります。この場所に異物が入っていることも多いので、生理食塩水で洗い出してみることにしました。生理食塩液を注入すると、下の写真のように何か、虫のようなものが飛び出てきました。。。うわ、なんだこれはという感じです。
ピンセットで引っ張ってみると、驚いたことにどこにそんなものが入ってたのか一本の虫のような繊維がツルツルと出るわ出るわ、患者さんには申し訳ありませんが、さながらマジックショーのよう。
採取された繊維状のものの長さはなんと7.6cmもありました。よくこんな長いものが瞬膜の(眼頭の奥の方)に折りたたまれていたものですね。驚きました。
後ほど、このヒモ状のものをよくよく見てみると、なんと、”ノギの穂”が全部取れた後の”茎”のようです。ノギという武器を失ったにもかかわらず、隙あらばワンコを攻撃する執念のようなものさえ感じますね。。。
まさに、ワンコの天敵、「ノギ恐るべし」です。
飼い主の皆様方、草ムラでのお散歩はくれぐれもご注意ください。。。
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文責:あいむ動物病院西船橋 病院長 井田 龍
口が痛い猫~肉芽腫
肉芽腫(にくげしゅ)という医学用語はそもそもあまり一般になじみのない用語だと思います。
獣医にとっては日常診療でなじみ深い用語ですので、ついつい間髪入れずに使ってしまうのですが、飼い主さんにこの皮膚病は肉芽腫ですね、と言ってもいまいちピンと来ていないだろうなということはよく経験するところです。
さらに、細かいことではありますが、猫では本来の病気の分類(炎症の分類)としての「肉芽腫」と獣医さんが診察室で行う病気の分類としての「肉芽腫(症候群)」という呼び名が混在して、いったいどういった種類の病気なのか少々わかりにくい状態になっているということもあります。
猫における臨床分類として、よく動物病院の診療で遭遇する「好酸球性肉芽腫(症候群)」と呼ばれるグループはおもに皮膚病の一種として診断されるものが有名です。ネット検索では、病気としての「肉芽腫」はほとんどがこの好酸球性肉芽腫(症候群)として検索されるのではないでしょうか。
この好酸球性肉芽腫(症候群)は白血球の一種、アレルギー反応に関与する好酸球によって特徴的な病変をおもに皮膚に形成しますが、それが唇や舌などでも発生することがあります。今回はこの病気の話題とはちょっと離れた話題です。
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前置きが長くなってしまいました。。。一般的には肉芽腫をつくる様々な病気は、その原因によらず治療がうまくいかない難治性となりやすい炎症を引き起こします。とくに猫は原因の特定できない肉芽腫性病変が生じやすいという特徴を持っています。
では、この「肉芽腫」とはなんなのでしょうか?肉芽腫とは炎症で形づくられる病変の分類のひとつであり、分かりやすくいうと炎症の原因となっている「異物やアレルゲン、病原体などの原因」を肉芽腫という「肉芽組織」という防壁によって、何らかの刺激や異物を隔離して封じ込めるような反応を起こしている病変のことです。
今回のコラムではこのうち、特に口の中にカタマリ状のものを生じる肉芽腫に関して実例を交えながらご説明したいと思います。ネット情報でよく目にする好酸球が引き起こす好酸球性肉芽腫(症候群)とは若干異なる病気に関しての話題です。ちょっとわかりにくい文章で申し訳ございません。。。
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【ケース1】 「好酸球性肉芽腫」が原因であった口の痛み
「最近ヨダレが増えネバネバしてきて口が臭いし、食欲が落ちてきました。。。」、という高齢猫が来院しました。「口が痛いネコ」と聞くと、獣医としてはまず考えるのはヘルペスウィルス、カリシウィルス、口の中の細菌の二次感染や、その他原因による口内炎とか歯周病に伴う歯肉炎など、まずその辺りが頭に浮かびます。
嫌がる猫ちゃんの口をなんとか開けてみて中を覗くと。。。奥歯のまた奥、人間だったら親シラズのあたりが脹れて真っ赤でとても痛そうです。
「これは口内炎ですね。まず、抗生物質と痛み止めで様子を見ますので、一週間後にいらしてください。」とその日は終了しました。
1週間後、「なんかあまりよくならないんですけど。。。」ということでもう一度来院がありました。一般的な治療に抵抗するネコのひどい口内炎に対してはしばしば、プレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイド系の消炎薬が使用されます。その例に漏れず、さらなる食欲低下や衰弱を防ぎ、症状の軽減を目的として”ステロイド”による治療を実施しました。
2週間後、「だいぶ食欲も出てきたけどまだ痛そうです」ということですが。どうなってるかな?と患部を見てみるとまだかなり脹れており、ステロイド治療にもだいぶ抵抗性を示しています。
その後、食欲が落ちたら治療、良くなってまた再発を延々と繰り返して2か月程度が経ちました。
飼い主さん曰く、「なんか口の中にデキモノが見えるんですけど。」、よく見てみると脹れていた部分がキノコのように盛り上がってきています。もう少し内科治療を長く、強くしてみましょう。ということになりました。
その後もこのカタマリは次第に大きくなり、口内炎の方も治ったり再発したりとあまり変化がありません。むしろ全体としては悪化しているようにさえ見えます。さてと困りました。もしかしたら腫瘍かもしれない。。。
そのうちに、大きくなったカタマリを気にしてさぞ痛いのか、口の中を引っ掻いたり、奥歯で噛んでしまいしばしば出血する事態に。飼い主さんと相談の上、この腫瘤を全身麻酔下で切除することになりました。
写真は手術時のものです。左下写真が側面、右下が正面からのものです。ちょっと刺激的な写真かもしれませんので注意してご覧ください。
下の写真が切除後です。腫瘤は歯茎と臼歯を巻き込んでいたため臼歯ごと摘出いたしました。
こういった腫瘤の場合には病理検査に出すのですが、結果が返ってくるまでとても気になるものです。病理医から帰ってきた結果は、「好酸球性肉芽腫」、腫瘍ではありませんでした。
冒頭で触れた、猫でよく見られる好酸球性肉芽腫(症候群)は、何らかのアレルギーなどによる好酸球が引き起こす炎症です。猫では慢性再発性の皮膚病として、または唇粘膜や口腔内に起こりますが、口の中では無痛性潰瘍と呼ばれる、粘膜や唇に潰瘍(かいよう)病変を形成することが多く、このように腫瘤を形成することはあまりありません。
好酸球性の肉芽腫のなかには非常に難治性のものが存在します。
これはよく見られる好酸球性肉芽腫(症候群)とはやや異なる病気として生じるものであろうと考えられます。こういったものは消化管内に発生することがあったり血液中に好酸球が大量に見られたりすることもあり、好酸球性肉芽腫の腫瘤を形成するようなものでは生活の質を極端に下げたり、時には生命に影響を及ぼすものまであります。
経験上では回盲部(小腸、盲腸、大腸にまたがるエリア)に同じような腫瘤性の病変が生じて腸閉塞を起こし、緊急手術になるような「好酸球性肉芽腫」もありました。こうした好酸球が絡む肉芽腫は好酸球性肉芽腫症候群を一部に含む形で存在し、猫では多種多様な病気を引き起こします。
当院のコラムに、さらに別なかたちの特殊な好酸球性の肉芽腫の一種をつくる「消化管好酸球性硬化性繊維増殖症」と呼ばれる猫の病気の紹介がありますので、ご興味のある方は是非ご覧になってください。
>>>猫のGEFS(消化管好酸球性硬化性繊維増殖症)について
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【ケース2】 「化膿性肉芽腫」が原因であった口の痛み
上記と同じような経過の肉芽腫の例を以下にお示しいたします。こちらも高齢猫でのケースで食欲低下や、口の痛みを伴いながら徐々に大きくなってきた左口角の腫瘤です。同様に抗生物質とステロイド系、非ステロイド系の消炎薬のいずれの治療にも非常に抵抗性で、薬による治療では解決ができなかった例です。
内科療法では解決できませんでしたので、外科的に摘出して病理検査を実施いたしました。病理検査の結果は「化膿性肉芽腫」でした。
この化膿性肉芽腫は損傷を受けた組織が治癒する過程で生じた組織などで形づくられたカタマリで、組織的には損傷と修復の繰り返しによる何らかの刺激により生じたと思われる病変でした。
実はこの猫ちゃんは日頃から歯ぎしりが多く、口角の粘膜を噛んでしまうという癖がありました。この肉芽腫はこういった「繰り返す強い外傷性の刺激」が原因となっているのでしょう。
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【ケース3】 「線状肉芽腫」が原因であった口の痛み
「口が痛そうで、ヨダレがとまらない。食事も満足にとれない」という中高齢猫です。一見して口内炎や歯周病はもちろん、腫瘤などのカタマリをつくるような、よくみられる「かたち」の病変ではありません。
一般的なステロイド系抗炎症や抗生物質、鎮痛薬など一般的な薬物による内科的治療では薬を内服している間はある程度よいのですが、中断するとすぐに再発します。病変が広がっていくような様子はないものの、薬物にはこの病変を縮小させる効果はないようです。
写真は左下が横から、右が正面像です。舌の左側に「硬い組織」が付着しています。右の写真ではその病変が喉へ向かって広がっているのが見えるでしょうか?正常な粘膜がこの硬い組織によって置き換わってしまっているように見えます。
治療方針を立てるために麻酔下で病変部分の一部を切り取る生検を行いました。この病変は舌から喉に広がって粘膜を置き換えてしまっており、摘出することも困難でした。病理検査の結果は「線状肉芽腫」、原因の分からない治療の難しい口の中の肉芽腫のひとつです。
こういった外科的な摘出ができない肉芽腫は薬物による内科治療に頼らざるを得ません。プレドニゾロン、デキサメタゾンなどの副腎皮質ステロイド製剤やシクロスポリンなどの免疫抑制剤、鎮痛薬や、二次感染を防ぐための抗生物質などを用いますが、薬による病気のコントロールが非常に難しい例も多くみられます。
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まとめ。。。
猫の口に痛みを起こす原因として、口内炎や歯肉炎、歯周病などのよくみられるものから、今回ご紹介したようなやや珍しいものに至るまで様々な病気が発生します。
「食事や水の容器の前に立ちすくむ」、「食後に口を気にしたり」、「食事量が減る」とともに「口臭がひどくなったり」、「ヨダレが増えてきたリ」、「歯ぎしりをする」など、口の痛みの症状はどういった理由であれ、共通にみられる症状がみられます。。
猫は、ご存知の通り痛みや不快感を日常生活の表面に出しにくい動物です。飼い主さんの目に症状が明らかになった時には病状がかなり進んでしまっていることも多いもので、特に採食に影響する病気では、初診の時点でかなり痩せて脱水して体力が奪われてしまっていることもしばしばです。
月並みなアドバイスで恐縮ですが、早期発見のために、少しでもおかしいなと思った時には動物病院へご相談されることをお勧めいたします。
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文責:あいむ動物病院西船橋
井田 龍
年末年始はご注意を2020
メリークリスマス!2020年もあとわずかとなりました。。。
さて、今日はクリスマスイブ本番。。。外出自粛の影響はありますが、どこへ出かけても街はクリスマス一色、真っ只中です。
ところで、日本での最初のクリスマスは、かの有名なフランシスコ・ザビエルが来日した時代、江戸時代が始まるちょっと前の西暦1550年くらいにまで遡るそうです。
この時代はというと、キリスト教徒がまだキリシタンなどと呼ばれていた大昔です。。。
もちろん現在の”商業的クリスマス”とは似ても似つかない純粋な宗教的習わしであったのでしょうが、それを無理やりつなげると、我が国における”クリスマスみたいな風習”には意外に長い歴史があるといことなんでしょうね。
現代の我々はというと、毎年毎年、同じような風景の中で同じようなメロディーを聴き、LEDやプロジェクションマッピングなどで年々パワーアップするイルミネーションで街のあちこちが彩られる中、あたふたと消費生活に翻弄されるわけですが。。。
まあ、イブの夜は年々賑やかさを増していますが、日本人による日本人のためのクリスマスの原風景みたいなものはここ数十年はあまり変わってはいないようです。。。
今年も、ああ年末だなー、大晦日に向けてあと少しで今年も終わるという感傷的なボルテージが一気に高まるタイミングでもあります。
そろそろ本題に入りますが、動物病院的にはこのクリスマスから年末にかけての時期というのはやはり、いつもと違うパターンで患者さんがいらっしゃいます。
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クリスマス前後から大晦日、年明けにかけて、実にさまざまな原因による大小の胃腸のトラブルや問題を訴える患者さんが明らかに増えるのですが、今回はこの切り口で、考えていきたいと思います。
「胃腸の問題」といってもその程度はいろいろです。軽い嘔吐、下痢などの軽いものから、直ちに内視鏡検査(胃カメラ)を要するような事例、骨や食材が異物となって生じる腸閉塞を筆頭とする急性腹症で開腹手術に至る重症例まで実に幅の広いものなのです。
こうした胃腸の問題を全部引っくるめた、最初の”嵐”が「クリスマスイブ」にやってきます。
我々、獣医療関係者にとっては、何やら不謹慎ではありますが、”サンタが街にやってくる♪”などという曲とともに病気や事故もやってくる、とでも言いましょうか。。。
では、クリスマスに起こりやすいこうしたトラブルの原因とは何でしょうか?
まず、この時期には動物達(人も)が普段食べないような、扱いなれない”贅沢な食べ物”が家庭内にどんどん持ち込まれること、それにつきます。
また、小さな子供達が学校から解放され、家庭内に戻ってくるということもそれに拍車をかけるかもしれません。
クリスマスには動物達には魅力的で、場合により危険な食品やその廃棄物が家庭に溢れかえります。アルコールも入って、ついついその場の盛り上がりやノリで、まあいいだろうとつい色々なものをあげてしまう機会も飛躍的に増えるでしょう。
いつもより盛りだくさんのテーブルからこぼれ落ちるご馳走、ゴミ箱に入ってもなおその魅力を失わない残り物、脇が甘く格好の標的となる子供達、酔いが回ったお父さん、など直ちに問題を生じるようなトラップがたくさん仕掛けられています。
イブの夜には、クリスマスチキンなどの骨類や肉のカタマリやクリームなどの高タンパク&高脂肪、大量の砂糖類など、いつもと違う一風変わった食材や調味料など、その原因には事欠きません。そもそもの食べ過ぎも相まって嘔吐、下痢、腹痛などの胃腸トラブルが数多く発生します。
また、生ケーキなどのデザートなどに含まれるチョコレートやナッツ類、アルコール類などによる中毒なども増えます。
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まず、クリスマスチキンをはじめとする骨を含む残飯の盗食に細心の注意を払いましょう。
実は骨だけではなく、クリームがついたケーキの包装やろうそく、クリスマスプレゼントの犬用おやつやオーナメントもこの時期に消化管閉塞などの原因としてありがちな異物です。
事例として多い鳥骨はその大きさや形状から、慌てて食べた小型犬種で特に咽喉頭部(のど)や食道に詰まりやすく、食道閉塞などをはじめとする命に関わる急性の消化管閉塞を引き起こす可能性があります。
こうした場合、異物となった骨の除去のためにクリスマスイブの夜に緊急の内視鏡や手術を要する確率は相当高くなります。
過去の関連記事で食道閉塞に関して説明してありますのでご興味のある方は当院過去ブログをご覧ください。
>危険な食道閉塞に関して
また、食道を通り抜けるくらいには小さくなった鳥の骨などの異物をある程度含むものを一気に食べ過ぎると、胃運動の低下や胃液の不足によってこれらを充分処理できずに急性胃拡張を起こすことがあります。
さらに、そうした胃で処理しきれない食事の塊や骨などを含む胃内容物が時間の経過とともに下流の十二指腸以下の小腸閉塞を引き起こす可能性もあります。
最悪の場合、急性胃拡張の治療のために、緊急の麻酔下での胃洗浄や胃腸切開などの外科手術に追い込まれる可能性もありますし、手術に至らずとも急性膵炎や、入院が必要になるような重大な消化器疾患の合併症つながることもしばしばですので、くれぐれご注意を。
また、普段食べ慣れていない高脂肪、高タンパクの食材だけが問題を起こすだけではありません。通常の食材でも、食べ過ぎによって思いがけないような激しい急性胃腸炎や急性膵炎の原因となりますので、食事量が増えやすいこの時期には特に注意を払って頂きたいと思います。
次に犬猫に危険な食材として有名なチョコレートですが、クリスマスシーズンのチョコレート中毒(テオブロミン中毒)には実はバレンタインデーの時期と同様にしばしば遭遇します。
英国での調査研究ではチョコレート中毒の発生はクリスマスになんと平時の4倍も増えるという調査結果が出ています。
もともと12月には我が国でも欧米には及ばないようですが、チョコレートそのものの消費もバレンタインデーで大量消費される半分くらいまでには増えるということです。
加えて最近ではクリスマス用のケーキも生クリームたっぷりのいちごケーキ以外の選択肢も増えました。
製菓用チョコレートで作る愛情、カカオマスともにたっぷりの手作りチョコケーキはかなり危険ですし、市販品の贅沢に生チョコを大量に使用したものなども多く出回っていますので、ご家庭ではくれぐれもご注意ください。
少量だからと、ついついあげてしまったりしてしまいがちですが、実は小型犬では容易に中毒量〜致死量に達しやすく、命に関わる事例もしばしば生じます。特に最近多い体重が2キロ以下のチワワやトイ・プードルなど小型犬種で重い中毒症状を引き起こし、死亡率が高くなる傾向がありますので注意が必要です。
ちょこっと目を離した隙に大型犬でホールケーキをまるごと、小型犬でもビックリするくらいのことがありますのでご注意を。。。また、少数ですが猫での事例もあります。
チョコレート中毒に関しては過去の記事がありますので参考になさってください。
>チョコレート中毒とは?
ここまで長文を最後までお読みになっていただき、ありがとうございました。
皆様にとって楽しいクリスマスイブと幸せな新年が訪れますように!